手のひらの幸せ
歌手の布施明が創作した童話をベースに映画化。幼い頃に身寄りを無くし施設に引き取られた兄弟の過去を回想しつつ、成長してなお堅く繋がる絆を描いたヒューマンドラマだ。主演は『GSワンダーランド』の浅利陽介と『地下室』の河合龍之介。共演に村田雄浩、西田敏行、仲間由紀恵、永島敏行ら豪華な俳優陣が顔を並べる。監督は名カメラマンにして、本作がデビュー作の加藤雄大。 |
文部科学省選定のうす~い話 |
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思いのほか有名な俳優が多数出演しているのが気になっていましたが、ようやく鑑賞してきました。上映開始と共にドーンと映し出される「文部科学省選定」の文字がちょっと気になりましたが……案の定とても模範的かつ綺麗にまとめられた作品でした。あ、悪い意味でです。平たく言うと、つまらない。わざわざ1800円払って道徳の教科書に出てくるような話を映画に求めたくないというのが正直なところです。それこそ文部科学省が買い上げて全国の小学校に配布したらどうでしょう。もっとも、それが果たして現実的な意味での教育に繋がるかははなはだ疑問ではありますが。


元々は歌手布施明の創作童話『この手のひらほどの倖せ』をベースにした作品。故に、このあまりにも美しく進んでゆく物語に文句をつけてもせん無きことですが、それにしても上滑りした薄っぺらい物語。幼い頃に母を無くし父は出稼ぎに出て失踪、祖父に育てられたた健一(河合龍之介)と龍二(浅利陽介)は、その祖父の死とともに施設に入れられます。抜け出して家に帰ろうとする途中で本条静男(西田敏行)と出会い親切にしてもらう…。この子供のころの回想を、大工見習いとして働く健一と大学受験を控えた龍二という現在の二人との繋がりを軸として見せていくというストーリーでした。


とにかく出てくる人出てくる人全てが超善人。あ、一人だけ、兄・健一に恋心を寄せる近藤優子(菜葉菜)の養母はすごく意地悪でしたが。ただ本来の世の中はもっと厳しく過酷なものであるはず。性善説も良いけれど、上っ面だけの理想論を語られてもそれは空虚でしかないと思うのです。人間の感情の奥底にある、人間臭い欲望や怒りや憎しみ、それは決して悪ではないし、むしろ自然な思いではないかと。大人であれ子供であれ、そういう負の部分も含めて描くから、ピュアな部分がより引き立つのであって、それがないままに話が進んでも、今の世の中的には実に嘘っぽい話なのです。


確かに純粋無垢なまま子供が成長していくことは、本来望ましい事なのかもしれませんが、実際にはそうはならないから人間は面白い訳で。例えば自分たちを置いて出て行った父親、彼が何故家族を捨てなければならなかったのか、きつい飯場の仕事のなかで何を思いながら生き、そして死んでいったのか、そういう部分に健一たちが想いを馳せる必要はあると思います。馬鹿の一つ覚えの如く「父ちゃんは俺たちを捨ててない!」と、正に子供のような想いを持ち続けるのも結構ですが、厳しい現実を受け入れることで人間は学んで行くのですから。


その辺りの描写は、健一と彼の大工の先輩・森田聡(水元秀二郎)との絡みの中でうやむやになり、いつの間にか父親は死んでいて、健一もそれを受け入れてしまう…、この流れはどうにもすっきりしません。『手のひらの幸せ』の直接的な意味は、子供時代の本条との出会いが全てであり、その過去と現在の彼らを結ぶのが、本条の娘でした。物語の終盤で明かされるこの事実は、本作で唯一といってもいい感動を誘うシークエンスだったと思います。
個人的おススメ度2.0
今日の一言:これじゃ心に響かない。
総合評価:45点
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