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2010年3月16日 (火)

隣の家の少女

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実話を基にしたジャック・ケチャムの小説を映画化。人の心の闇を深く抉り出して描いた衝撃の問題作だ。主演は『僕たちのアナ・バナナ』のブライス・オーファース。共演にブランチ・ベイカー、ダニエル・マンチ。監督は本作が長編2作目のグレゴリー・M・ウィルソン。純粋無垢な少女が受ける凄惨な虐待、そしてそれに対してあまりに無力な少年の様子がリアルに描かれている。
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茫然自失…正しく衝撃の問題作だ!

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また凄い作品に出会ってしまいました。これは凄い。人間の心の闇の奥深くを抉り出して描いた様子は『チェイサー』に匹敵し、余りに無力な己に茫然自失とさせられるのは『縞模様のパジャマの少年』に匹敵します。もともとシアターN渋谷で公開される作品とあって、カルトなホラー映画、そう丁度『マーターズ』のような作品かと想像していたのですがあにはからんや。本作はありきたりなホラー映画とは一線を画します、というよりもホラー映画というジャンルに入れてよいのか。かのスティーヴン・キングが絶賛しただけのことはあります。自分自身の中に潜む残虐性すらも再確認させられる、正しく衝撃的としか言いようが無い作品でした。

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物語は一枚の絵を前にした男の姿から始まります。彼の名はデヴィッド(ダニエル・マンチ)。子供の頃に負った恐らく永遠に癒える事は無いであろう心の傷、その原因となった事件を回想するのが本作です。それは1958年の夏の日のことでした――。とある川辺でデヴィッドは一人の少女と出会います。それが両親を事故で失い隣の家に越してきたメグ(ブライス・オーファース)でした。あった瞬間から2人の間には小さな恋心が芽生えます。がしかし、この恋心ゆえにデヴィッドは後々己の無力感に苛まれることになるとはこの時解るはずもありません。ある日デヴィッドはメグが隣の家の主・ルース(ブランチ・ベイカー)に辛く当たられていることを知ります。

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もっとも、身寄りの無い親戚の子供が引取られ、その家の母親が自分の子供を大切にし、引取られた子供たちを邪魔者扱いするという話は古今東西そう珍しいことではありません。しかし観ていて明らかにおかしいのが母親ルースとその子供の関係なのです。それは母と子供というよりは、圧倒的な強権を持ったボスとその部下といった様相。デヴィッドはルースを「ギャングみたいでカッコいい。」などと言っていますが正にそんな感じなのです。そしてその異様な雰囲気はメグが地下室に幽閉されるようになるとより鮮明になってくるのでした。少年たちはゲーム感覚でメグの両手を縄で縛り天井から吊るします。そしてそれを感情の篭らない目で観ているルース…。

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更に彼らは、目隠しされて吊るされたメグの服を脱がせ全裸にし、ナイフで脅し始める始末。明らかに異様な状態にデヴィッドは戸惑いながらも、息子たちの行為を止めることが出来ません。しかし、この時私の中には少年たちの気持ちが解る自分がいました。思春期の少年たちにとって少女の体を見たい触りたいという気持ち、それはかつて自分も通ってきた道であり、そう考えると、私自身も望んでこの虐待に参加していたかのように思えました。もちろんこれは性差もあるでしょう。その意味では男としての残虐性の発露ともいれるのかもしれません。しかしながらルースは女性。そして彼女の中に潜む残虐性はそんな甘っちょろいものではないことがこの後明らかになります。

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傷跡にタバコの火を押し付けるなどというのは序の口。腹部に焼いたヘアピンで文字を書き……いやもう止めておきます。これ以上は書くのもおぞましい。今この時点でもメグの悲鳴が頭の中に響き渡り、心に重くのしかかってきます…。どうしてあそこまで鬼畜の所業ができるのか。人はその内面に善と悪の両方を内包しているのではなかったのか。どうみても地下室でメグを虐待している彼らは絶対悪でしかありえません。そんな彼らを前にしてデヴィッドは己の無力さに葛藤します。それはとりもなおさず観ている私たちの焦燥感を募らせることになるのでした。何故なら私たちの希望はデヴィッドに託すより他はないのですから。しかし残念ながらその希望が叶った時には全てが遅すぎました。

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鑑賞後に涙など出ようもなく、ただただ呆然…。少年たちがメグに行った虐待は、母親ルースの教育が悪かったからであるとか、女性の体への興味からといった理由付けができます。しかしルース自身の憎悪に説明がつかないこと、そして、何よりおよそ虐待などには縁がないと思っていた自分自身が、虐待されるメグを視姦するかのごとくスクリーンに見入っていたこと、それこそが本作の恐ろしい点で、もしそれそれをもってホラーと呼べるのであれば本作は超一級のホラー映画なのかもしれません。ただはっきりいえる事は、観ないほうが良いです。その方が幸せだと思うから。

個人的おススメ度1.05.0
今日の一言:子役の子達に影響がないといいですが…
総合評価:52点(92点)

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