ソウ/SAW
2004年に公開されたサスペンススリラー。低予算ながらも興行収入1億ドルを突破するなど大ヒットした。監督のジェームズ・ワンは長編デビュー作ながらも本作で一躍メジャー監督になり、現在(2010年3月)までにシリーズ6作が制作された人気シリーズだ。とある一室で徐々に追い込まれていく2人の男たち。何故?犯人は?謎が謎を呼ぶ展開に目が釘付けだ。 |
生半可な推測を許さない傑作スリラー |
あらすじへ
←みなさんの応援クリックに感謝デス

グロ系ホラーが大の苦手で何となく敬遠していた本作。しかし多くの方からのご推薦もあり、久しぶりのDVD鑑賞のタイトルにチョイス。で結果。全然グロくない。っていうか、何と言う秀逸なサスペンススリラーなんでしょう!今まで観ていなかった事を後悔すると共に、自分の中でシリーズ全作を観ることが決定したのでした。正直言って出演している俳優は誰一人知らないですし、その演技も確かに迫真ではありますが、図抜けて素晴らしいというほどでもありません。何と言ってもこの作品が出世作となったジェームズ・ワン監督の演出と練りに練られた脚本に引き込まれました。


大体初っ端から何ですかこれ?いきなり闇。浴槽の中で目覚めたアダム(リー・ワネル)は混乱して騒ぎ、それをなだめるDr.ゴードン(ケイリー・エルウィズ)が電灯を点けると部屋の真ん中にはいきなり死体。そしてこのシチューションが全ての始まりであり終わりでもあるなんてことはその時気がつく由もありません。一体何なの?と思うとゴードンとアダムのポケットにはマイクロカセットが。死体が持っているマイクロカセットレコーダーで再生してみると、6時間以内にゴードンがアダムを殺さなければ、彼の妻子を殺しそして2人とも死ぬというメッセージが聞こえてきます。


既にここまでで全て犯人の敷いたレールどおりに物事が動いているという気持ち悪さと気持ち良さ。次から次へと謎は出てくるものの、一向に見えてこない犯人ジグソウの目的と、彼らを取巻く状況が観ている私たちの緊張感を嫌が応にも高めます。実に上手いと思うのが、まず絶望ありきではないところ。ジグソウの犯行で何人かが陰惨な死を遂げているものの、彼の投げかけた謎を解いた女性はちゃんといて、彼女は生きているのです。つまりそれはこのアダムとゴードンも謎さえ解けば助かるのだということを意味します。もっとも件の彼女は生きていることが良かったのか疑問に感じるほどの心の傷を負わされるのですが…。


かくして狭い室内で次々と見つかっていくヒントやアイテム。何かが見つかる度にそれは自由への希望となる蜘蛛の糸な訳ですが、垂らされた糸は毎回切れてしまうのでした。これには観ているほうも堪らないです。糸が切れるたびに精神的に追い詰められていく2人。ゴードンは愛する妻と娘の殺害予告を受けているだけに、その精神の崩壊具合は半端じゃありません。物語開始当初は混乱して取り乱すアダムを冷静になだめるゴードンという立ち位置だったのが、いつの間にか逆転していくところも興味深かったりします。さて、ここまで書いてきたように、本作は監禁された室内と捕われているゴードンの妻子という空間的横軸がメインの話。


ただ本作を秀作たらしめているもう一つの要素、それがタップ刑事(ダニー・グローヴァー)たちがジグソウを逮捕寸前まで追い詰める様子を描き出した時間的縦軸なのでした。彼らがあの時もしジグソウを射殺していたら、こんな事件は起こらなかったのに…。“射殺していたら?”そう、あたかも現在進行形のように描かれるこのシークエンス、見ているほうは当然彼ら刑事に一縷の希望を託しますが、それが全て過去に起こったことだと判明した時のこの徒労感…。しかしそれだけでは終わりません。そのタップ刑事の存在は同時に、現在進行形のアダムとゴードンの希望にもなってくるというこの絶妙さ。


同じ人間が同時に片一方で希望を断ちながら、片一方で希望を持たせるというこの見事な脚本はもはや天才的といえます。無情にも6時間が過ぎ、いよいよ追い込まれ人格崩壊寸前のゴードン。彼の下した衝撃的な決断は余りにショックだけれども、画面から目が離せません。ジグソウは苦しむ被害者を必ず間近で見物していたことが警察の調べでわかっていました。即ち本作を観ている私たちの目線はジグソウの目線ということ。いや、全てを見渡せる分ジグソウ以上なのかもしれない…そんな風に思い始めたラスト。やられました。これはやられたとしか言いようがありません。ジグソウ恐るべし…。
>>ソウ2/SAW2
>>ソウ3/SAW3
>>ソウ4/SAW4
>>ソウ6/SAW6
>>ソウ ザ・ファイナル 3D/SAW 3D
個人的おススメ度4.5
今日の一言:やっべぇハマッタ…
総合評価:84点
| 固定リンク
最近のコメント