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2010年3月 4日 (木)

人の砂漠

Photo ノンフィクション作家・沢木耕太郎による同名ルポルタージュを、東京藝術大学映像研究科の学生が全4篇からなるオムニバス形式で映画化。それぞれの主演は「屑の世界」が石橋蓮司、「鏡の調書」が夏木マリ、「おばあさんが死んだ」が室井滋、そして「棄てられた女たちのユートピア」が小池栄子。共演にも忍成修吾、MEGUMIといった若手が出演している。
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俳優がこれからの若手監督を育てる。

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完全オムニバス形式の作品は久しぶりです。『ラッシュライフ』を制作した東京藝術大学が今度は沢木耕太郎のルポルタージュを映画化。『ラッシュライフ』もそうですが、オムニバス形式はそれが良いというより、そうすることで複数の監督に制作させられるからでしょうか。当然ながらこれから紹介する4作品の4監督も商業映画はデビュー作。観ていて俳優の個性や演技に救われている部分が多々ありました。というわけで、オムニバス4作品それぞれに触れてみたいと思います。

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「屑の世界」
監督:後閑広 主演:石橋蓮司

石橋蓮司演じる山義秀は屑屋のオヤジ。区議会で立ち退きが決まってしまい勧告を受けるのだけれど、彼の頭の中にあるのは自分のことより、自分のところに屑を持ち込んでくるホームレスたちのことでした。しかし何故に屑屋が立ち退きを迫られなければならないのかはいま一つ良く解りません。要は汚くて不潔なゴミ捨て場が近所にあるのは嫌だという至極身勝手な思いなんでしょう。オヤジはここが無くなってもホームレスたちがお金に困らないようにいつもより多くのお金を払おうとします。

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しかし、ここが無くなってしまうのは嫌だと断られる始末。多くと言っても500円が1000円にとかその程度なんですが…。周囲の人々にとっては、集まってくるゴミもホームレスも両方“屑”に見えていたに違いありません。哀しい差別意識ではあるけれど、そういう人々に冷たいのが現実なのだと物語は言っているようです。閉鎖された屑屋が立ち入り禁止の黄色いテープでグルグル巻きにされている風景は、狭隘な考えに縛られた周囲の人々の象徴にも映りました。

04

「鏡の調書」
監督:ヤングポール 主演:夏木マリ

夏木マリ演じる笠原きよらは天才詐欺師。一見するといいとこのご婦人なれど、次々と町の人から金を騙し取っていました。この編、夏木マリの怪演が素晴らしいです。笠原きよらは詐欺の手口が見事なのではありません。その手口を本物であると信じ込ませてしまう彼女の話術、あるいは多少疑問に思っても有無を言わさない強烈な存在感が見事なのでした。彼女は「騙されるほうが悪いのさっ。」と言わんばかりなのですが、客観的に観ていると引っかかったほうは自ら網に掛かっていっているかのようです。

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騙される町の人はみな必ず何がしかの弱みを彼女に見せていました。しかし、のどかな田舎町では人は皆善なるものであり、そこに付け込む人間がいるなどとは思っていないのです。これは即ち古きよき日本に持ち込まれた経済中心の現代日本という図式が成り立つかのように感じられました。一点だけ。ロケハン不足なのか、きよらを追いかけて町中を走り回る住人たちのシーンで、背景の繋がりに無理があるように思います。明らかに場所が違ってみえました。

07

「おばあさんが死んだ」
監督:栗本慎介 主演:室井滋

室井滋演じる野口郁はゴミ屋敷に住む老女。この編はちょっとしたミステリー。生活保護を頑なに拒否する彼女がある日倒れ、病院に運ばれます。彼女が大切に手にしていた一冊のノートから、彼女の過酷な半生が明らかになっていくのでした。ただ、確かに過酷ではありますが、どうもこの野口郁という女性がかなり変。実際にどういう人物だったのかは正確に解るわけはありませんが、少なくともスクリーンから受けるイメージは“自分と息子以外には興味が無い人間”でした。

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それにしても室井滋もまた相変わらずの怪演。このオムニバスでは夏木マリと並んで強烈な存在感に気圧されます。しかも物語序盤で何気なく映し出される野口郁が部屋で横になっているワンカット、これが謎解きに当たって嫌な予感を抱かせ、話が進むにつれその予感は確信に変わり、真相が判明した時には「ああ、やっぱり…」と思いながらもかなりショッキング…。観客を否応なしに巻き込む話の流れはなかなか秀逸なものがありました。ストーリー的には4作品中で一番おススメです。

10

「棄てられた女たちのユートピア」
監督:長谷部大輔 主演:小池栄子

小池栄子演じる篠原いちこは元売春婦。とある教会に集まる女性は皆家族や男に棄てられた女たち。全員もと売春婦ですが、その過酷な人生は少なからず彼女たちの心に消えない傷跡を残していました。平たく言えば精神を病んでいるんですね。そんななか、一見まともそうに見えるいちこは警官に無理やり連れて行かれた実家で「娘は死にました。」とまで言われてしまいます。心のよりどころが見つからない彼女は常に不安定。だから回りの女性が異常に見えて仕方が無い…。

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人は誰でも一人では生きていけない。そんなことは誰しも解っていることだけれど、でも同時に人は自分は他の誰とも違うと信じます。でも得てしてそれは間違っているもの。施設の女性が事故で無くなり、その遺骨の引取りを彼女の娘が拒絶する様子を見て、いちこは自分が特別ではないことに気づきます。そんないちこを心から応援する仲間たち…。いちこの再生を予感させる終わり方には、4作品中最も希望を垣間見ることが出来ました。

私は東京藝術大学のこの試みは良いことだと思っています。プロがプロたる基本的な要素は、そこにお金が発生すること。お金が発生するということは、それだけの責任も発生するということ。いくら勉強をしようとも、自主制作映画は所詮素人の趣味でしかないです。社会に対して責任もって表現していくことは、ゆくゆく彼らがプロになった時に有益なことは間違いないですから。

個人的おススメ度3.0
今日の一言:俳優の力の大きさを感じさせられます
総合評価:60点

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受信: 2010年3月 4日 (木) 23時03分

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