アイガー北壁/Nordwand
前人未到のアルプスの難所・アイガー北壁の初登頂に挑む若き2人のクライマーたちの壮絶な運命を描き出した実話ベースの山岳ドラマだ。出演は『スピード・レーサー』のベンノ・フュルマンと『グッバイ、レーニン!』のフロリアン・ルーカス、『バーダー・マインホフ 理想の果てに』のヨハンナ・ヴォカレクドイツの人気俳優。監督は本作が長編二作目となるフィリップ・シュテルツェル。 >>公式サイト |
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何と凄まじい映像の迫力なのか。まさしくスクリーンから伝わってくるのは、極限状態で懸命にもがく人間そのものでした。様々な山岳映画がありますが、本作に匹敵する映像は昨年公開された『剱岳 点の記』ぐらいではないでしょうか。ただし実際にあった悲惨な事故をベースにした物語ですから、主人公の2人の死は最初から解っています。その分観ている側の心に掛かる負荷は大きのではないか、そんな風にも感じました。最初に書いてしまいますが、この作品に感動はないです。最後にはただただ呆然と、力尽きてザイルに宙吊りになっているトニー・クルツを見つめるだけ…。
さて、1936年の夏。ナチスドイツが国威発揚のためにアイガー北壁の初登頂をしたものに金メダルの授与を約束するところから話は始まります。トニー・クルツ(ベンノ・フユルマン)は冷静でクレバーな司令塔、アンディ・ヒンターシュトイサー(フロリアン・ルーカス)は攻撃的なアタッカー、この2人はドイツ国内でも実力派のクライマーで、紆余曲折はあったものの彼らもアイガー北壁に挑戦することにするのでした。そしてそんな2人を取材するのが幼馴染で今はベルリンの新聞社に勤めるルイーゼ・フェルトナー(ヨハンナ・ヴォカレク)です。
観ていて一番感じたのは、これほどの山を制覇するのには細かい積み重ね、例えて言うのであれば複雑なチャート図の無数にある選択を出来るだけ正確に答えなければいけないのだろうということ。その意味では登頂開始から折に触れて「Yes?No?」と問われるような場面が何度か出てきます。一番最初の選択は、事前に途中まで登りキープしてあった荷物の袋が破れアイゼンが無くなっていたことでした。山の神は2人に「それでも登るか?」と問いかけているのです。2人の選択は「Yes」でした。もちろんこの一度の回答がミスだったとしても、正解への道筋へ戻ることは可能です。
ところが、普段ならばその神の声に素直に耳を傾けていたであろう司令塔のトニーですら、同時に登頂を開始したオーストリア隊への対抗意識、即ちそれは初登頂をしたい、そして金メダルを得たいという欲に負けていたと思うのです。結果、彼らは数々の問いに対して誤った回答をし続けることになります。もちろんそれはオーストリア隊の2人にも言えることでした。彼らのうちの1人は落石で頭を怪我したにも拘らず登頂を続けます。そして後に自分の名前、ヒンターシュトイサー・トラバースと呼ばれることになるトラバースでアンディがザイルを回収してしまったことで、もはや正解へ戻る道筋は絶たれたのでした…。
もちろん欲望が成功の力となることはありますが、私はトニーが最初に北壁への挑戦をしないと決めた時に「何番目に登るかは問題じゃない。」と言った言葉が忘れられないのです。山の神は無欲に自分に挑んでくるものにのみ微笑みかけるのかもしれません。さて、映像的にはここからが凄まじい!吹雪の中、登頂を断念し、怪我で動けない一人をフォローしつつの下山。この半端じゃない吹雪は実際に山の撮影のほかに、北壁と同様の超低温にした冷凍庫の中で撮影したのだそうです。雪にまみれて凍る眉毛、凍傷で真っ黒に変色した手や顔。
実際にビバークしているところから一歩踏み出せば断崖絶壁ですが、彼らの命もまさしく極限の断崖絶壁にあるのは明白です。登頂中、たびたび彼らとアイガー麓のホテル内の様子とが切り返されるのですが、おかげでより一層彼らの置かれた極限状態が強調されるのでした。とにかくこれがフィクションである映画の映像なのかと思うほどの迫真の映像で、それこそホテル内の映像が挟まっていなかったらドキュメンタリーかと思ってしまうほどなのです。結局トニーを除く3人は雪崩に巻き込まれ、アンディはトニーを救うために自らザイルを切断します。
既にザイルもなくなりその場から動けなくなったトニーの立っているのは、山の途中の坑山口から僅か200mのところでした。お互いの声も聞こえる中、吹雪のためにたったそれだけの距離を助けに行けない…。トニーの命の炎が消えていく様子が誰の目にも明らかでそれはもちろん私たちとても同じこと。「何とかならないのかよ!」悲痛な心の叫びを発せずには居られませんでした。最後の力を振り絞り、下から渡されたザイルで降りてきたトニー。励ますルイーゼとの距離は僅か5mほど。しかしそれは永遠に届かない5mだったのでした――。
個人的おススメ度
4.0
今日の一言:何が嫌いって山登りほど嫌いなものは無い。
総合評価:77点

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受信: 2010年3月18日 (木) 17時49分
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原題:NORDWAND監督・脚本:フィリップ・シュテルツェル出演:ベンノ・フュルマン、フロリアン・ルーカス、ヨハンナ・ヴォカレク、ウルリッヒ・トゥクール、ジーモン・シュヴァルツ、ゲオルク・フリードリヒ試写会場 : よみうりホール映画『アイガー北壁』公式HPはこち...... [続きを読む]
受信: 2010年3月18日 (木) 21時03分
» アイガー北壁 (試写会) [風に吹かれて]
なぜ登る公式サイト http://www.hokuheki.com3月20日公開公式ツイッター http://twitter.com/eiger_hokuhekiベルリンオリンピック開催直前の1936 [続きを読む]
受信: 2010年3月19日 (金) 20時01分
» アイガー北壁 [象のロケット]
1936年、ドイツ・ナチス政権は、アルプスの名峰アイガー北壁を初めて征服した者にベルリン五輪で金メダルを授与することを決定する。 山岳猟兵のトニー・クルツとアンディ・ヒンターシュトイサーは、除隊して北壁に挑戦することを決意。 2人の幼なじみでベルリン新聞社のアシスタントをしているルイーゼは、上司と共に取材に向かっていた…。 実話に基づく山岳物語。... [続きを読む]
受信: 2010年3月19日 (金) 23時51分
» ドイツ映画祭2008...「ノース・フェイス アイガー北壁」 [ヨーロッパ映画を観よう!]
「Nordwand」2008 ドイツ/スイス/オーストリア
アルプス、アイガー北壁舞台の山岳映画。
登山家トーニに「プリンセス・アンド・ウォリアー/2000」「美しき家、わたしのイタリア/2003」「戦場のアリア/2006」のベンノ・フュルマン。
同じくアンディに「ワン・ディ・イン・ヨーロッパ/2005」のフロリアン・ルーカス。
写真家ルイーゼにヨハンナ・ヴォカレク。
編集長ヘンリーに「善き人のためのソナタ/2006」のウルリッヒ・トゥクール。
オーストリア人登山家ヴィリーとエデ... [続きを読む]
受信: 2010年3月20日 (土) 01時27分
» アイガー北壁 [佐藤秀の徒然幻視録]
公式サイト。原題:NORDWAND、英題:North Face。フィリップ・シュテルツェル監督、ベンノ・フュルマン、ヨハンナ・ヴォカレク、フロリアン・ルーカス、ウルリッヒ・トゥクール、ジーモン・シュヴァルツ。よく考えたら新聞社カメラマンのルイーゼ(ヨハンナ・ヴォカレク)が恋人...... [続きを読む]
受信: 2010年3月24日 (水) 22時09分
» 「アイガー北壁」 [みんなシネマいいのに!]
昔、知人を山の遭難で亡くした。 死体は見つかっていない。 おそらく、今も永遠に [続きを読む]
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ベルリン五輪開幕直前の1936年夏、ナチス政権は国威発揚のためドイツ人による前人未到の難所アイガー北壁初登頂を強く望んでいた。ドイツの若き登山家トニーとアンディ、そしてオーストリアの2名が大いなる期待を背負って北壁に挑む。彼らは順調に登っていくが、落石による... [続きを読む]
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» アイガー北壁 / Nordwand [勝手に映画評]
事実に基づく映画です。
1936年夏。ドイツは既にナチス施政下で、ベルリンオリンピック直前の時期。ドイツの優位性を示すため、ナチスはドイツ人によるアイガー北壁の初登頂を望んでいた。これは、それに際して発生した、登山家達の悲劇。ドイツ=オーストリア=スイス合作。全編、ドイツ語です。ネタバレ有りです。
結構衝撃でした。どの辺りが衝撃で有ったかと言うと、その結末。この手の映画って、過酷な運命に晒されながらも、最後は上手く行きましたって言う感じの話が多いのですが、そうでは有りません。いやぁ、特にトニーの... [続きを読む]
受信: 2010年3月27日 (土) 18時16分
» アイガー北壁 [ケントのたそがれ劇場]
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受信: 2010年3月27日 (土) 19時40分
» アイガー北壁/ベンノ・フユルマン、ヨハンナ・ヴォカレク [カノンな日々]
山岳映画というだけで観てみたくなったのですが、それだけではちょっと不安なので一応下調べしてみると、アルプス登攀史上最大の悲劇と言われる実話に基づいて描かれた作品だそうです。1936年のナチス政権下で国家の威信を背負って前人未到のアルプス名峰アイガー北壁に挑ん....... [続きを読む]
受信: 2010年3月28日 (日) 22時13分
» 「アイガー北壁」 [てんびんthe LIFE]
「アイガー北壁」試写会 よみうりホールで観賞
上映前に日本人で初めてアイガー北壁登頂に成功したという方と、TV朝日の女子アナとのトークショーがありました。
話声が心地よく眠ってしまい、気がついた時には上映が始まっていました。
そんなわけで前半見逃していたんですが…。
VFXも今は実写と見分けがつかないほど上手に美しくつかわれているので、まるで自分も吹雪の中で取り残されているような臨場感があって、映画としては見ごたえ充分。
ドキュメンタリーのような感覚さえあります。
山を登って下りてく... [続きを読む]
受信: 2010年4月10日 (土) 19時16分
» アイガー北壁 [『映画評価”お前、僕に釣られてみる?”』七海見理オフィシャルブログ Powered by Ameba]
生きて、還る──
ナチス政権下、
若き登山家が挑んだ
前代未踏の絶壁──
アルプス登攀史上、
最大の事件と呼ばれた
衝撃の実話。
ベルリン・オリンピック直前の1963年夏。ナチス政権下、前代未踏だった「ヨーロ... [続きを読む]
受信: 2010年4月17日 (土) 01時36分
» アイガー北壁(2008) NORDWAND [銅版画制作の日々]
生きて、還るーーー
久々のドイツ映画は、壮大なスケール作品でした。自然を相手にどこまで闘えるのかしら?なんて思ったけど。。。やっぱり自然ほど怖いものはない、と改めてまた痛感しましたよ(汗)伝説の登山家トニー・クルツの死闘は、こんなに凄かったんだと衝撃を受けましたわ。その昔、登山をやっていました。とはいっても岩壁と万年雪の山への登山経験はありません。クライミングも少し体験したことがあります(笑)それも一日の挑戦でリタイアしたもので。。。。お恥ずかしい話です。あ!そうそう冬山の経験もちょこ... [続きを読む]
受信: 2010年4月17日 (土) 11時29分
» ■『アイガー北壁』■ [〜青いそよ風が吹く街角〜]
2008年:ドイツ=オーストリア=スイス合作映画、フィリップ・シュテルツェル監督&脚本、ベンノ・フュルマン、フロリアン・ルーカス、ヨハンナ・ヴォカレク、ウルリッヒ・トゥクール、ジーモン・シュヴァルツ、ゲオルク・フリードリヒ出演。... [続きを読む]
受信: 2010年4月18日 (日) 20時49分
» アイガー北壁 [映画的・絵画的・音楽的]
『アイガー北壁』を、ヒューマントラストシネマ有楽町で見てきました。単なる山岳映画ではないということを耳にしたので映画館に行ってみた次第です。
(1)この映画は、第2次世界大戦直前に、アイガー北壁を登頂しようと試みた男たちの物語です。
とりわけ、登頂の最中の迫真的な映像は、山岳映画として素晴らしい出来栄えだと思いました。
比較するとしたら昨年大きな話題を呼んだ『劔岳 点の記』でしょう。
その映画では、陸軍測量部と民間人パーティとが初登頂を競いましたし、本作品では、ドイツ隊とオーストリア隊とが... [続きを読む]
受信: 2010年4月29日 (木) 06時02分
» アイガー北壁 [迷宮映画館]
なぜに映画を撮るために、ここまですごいことをしてしまうのだ!! [続きを読む]
受信: 2010年6月30日 (水) 12時36分
» アイガー北壁 [ゴリラも寄り道]
アイガー北壁 [DVD](2010/09/21)ベンノ・フュルマン ほか商品詳細を見る<<ストーリー>>ベルリン・オリンピック開幕直前の1936年夏。ナチス政府は... [続きを読む]
受信: 2010年9月21日 (火) 15時27分
» ペルシャ北壁 [Akira's VOICE]
「アイガー北壁」
「プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂」 [続きを読む]
受信: 2010年10月 7日 (木) 10時38分
» アイガー北壁 / 76点 / NORDWAND [ゆるーく映画好きなんす!]
なんと呆気ないもんなんやろう・・・
『 アイガー北壁 / 76点 / NORDWAND 』 2008年 ドイツ/オーストリア/スイス 127分
監督:
フィリップ・シュテルツェル
製作:
ボリス・シェーンフェルダー
ダニー・クラウス
ルドルフ・ザ... [続きを読む]
受信: 2010年11月27日 (土) 19時28分
» 喪中映画評「アイガー北壁」 [プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]]
☆☆☆(6点/10点満点中)
2008年ドイツ=オーストリア=スイス映画
ネタバレあり [続きを読む]
受信: 2011年5月11日 (水) 17時21分
» 『アイガー北壁』('11初鑑賞75・WOWOW) [みはいる・BのB]
☆☆☆☆★ (10段階評価で 9)
5月29日(日) WOWOWのHV放送を録画で鑑賞。 [続きを読む]
受信: 2011年6月 1日 (水) 20時08分
» 映画「アイガー北壁 」そこに山があるからって簡単には言えない [soramove]
「アイガー北壁 」★★★☆WOWOW鑑賞
ベンノ・フュルマン、ヨハンナ・ヴォカレク、
フロリアン・ルーカス、ウルリッヒ・トゥクール出演
フィリップ・シュテルツェル監督
127分、2010年3月20日公開,
2008,ドイツ、オーストリア、スイス,ティ・ジョイ
(原作:原題:NORDWAND)
→ ★映画のブログ★
どんなブログが人気なのか知りたい←
「間違えて録画していたものを
冒頭だけどんなか見... [続きを読む]
受信: 2011年7月29日 (金) 20時29分
» アイガー北壁(DVD) [パピ子と一緒にケ・セ・ラ・セラ]
1936年、前人未踏だったアルプス連邦の難所“アイガー北壁”に挑んだ若き登山家たちの壮絶な運命を、実話に基づいて描く山岳映画。監督・脚本はドイツの新鋭、フィリップ・シュテル ... [続きを読む]
受信: 2012年2月18日 (土) 10時46分
» アイガー北壁(DVD) [パピ子と一緒にケ・セ・ラ・セラ]
1936年、前人未踏だったアルプス連邦の難所“アイガー北壁”に挑んだ若き登山家たちの壮絶な運命を、実話に基づいて描く山岳映画。監督・脚本はドイツの新鋭、フィリップ・シュテル ... [続きを読む]
受信: 2012年2月22日 (水) 22時36分
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