ダレン・シャン

イギリス人作家ダレン・シャンが自分の名前を冠したファンタジー小説を映画化。バンパイアとの取引でハーフバンパイアとなり、バンパイアとバンパニーズの戦いに巻き込まれていく様子を描く。監督は『ライラの冒険　黄金の羅針盤』の製作総指揮を務めたポール・ワイツ。主演は弱冠１７歳の新鋭クリス・マッソグリア。共演に『シカゴ』のジョン・Ｃ・ライリー、日本アカデミー賞主演男優賞の渡辺謙も出演。
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何はともあれ渡辺謙。今年度の日本アカデミー賞主演男優賞も獲得した彼ですが、非常に良い役をもらっています。日本人が日本を題材にした作品以外でこれほどのメインキャラクターを演じる、それもファンタジー映画で。同じ日本人として非常に嬉しく思います。残念ながら試写会は日本語吹替えでの鑑賞だったため、彼の英語での演技は解りませんが、いずれＤＶＤになった時にでも改めてゆっくり観直して、もとい聞きなおしてみたいと思います。他にも多分日本公開は永久に無いであろう『Anti Christ』（シャルロット・ゲンズブール主演！）のウィレム・デフォーなんかもさりげなく出演していたりして、ヴァンパイアモノでありながら、『トワイライトサーガ』とはまた違った印象が好みです。

主人公ダレンを演じるのは弱冠１７歳の新鋭イケメン俳優クリス・マッソグリア。このダレンがとある事件をきっかけにハーフ・バンパイアとなり、バンパイアとバンパニーズの争いに巻き込まれるまでを描いたのが本作です。言うなれば作品全体がこれから始まる物語の序章に過ぎず、そういう意味では最初から続編含みで描いているため、今回ダレン自身が大活躍するシーンは多くありません。この辺は一話に全部詰め込んできた『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々 』とはちと違うところ。ちなみにバンパニーズとはバンパイアから分岐した一族のことで、本作の世界ではバンパイアは人間の血を吸うものの殺しはしませんが、バンパニーズは殺します。

さて、我らが渡辺謙の役どころは、ダレンをハーフ・バンパイアにしたバンパイア（ややこしいな…）ラーテン・クレプスリー（ジョン・Ｃ・ライリー）が身を寄せている「シルク・ド・フリーク」というサーカス団の団長ミスター・トール。名前の通り身長２ｍを超える大男です。そもそもダレンと親友のスティーブ（ジョシュ・ハッチャーソン）がこのサーカスを観に行ったことが物語の発端なのですが、このサーカス団がらみのシーンでの渡辺謙の怪演がまた素晴らしい！独特のドスの聞いた低い声は、狼男ですらその命令に従わせていました。こんなにフィーチャーされていいのかと思うほどの出番の多さと、その際立つ存在感は、ある意味準主役であるジョン・Ｃ・ライリーすら食い気味なほどです。

彼がどんな人物なのかも本作内では全く明かされないながら、フリークたちからの信頼もあつく、バンパニーズや謎の男ミスター・タイニー（マイケル・セルヴェリス）とも対等に渡り合うという重要な役どころなのでした。フリークとは特異体質の人間のことで、解りやすい例で言うと、２人の体がくっついてしまっている人間だとか、蛇のような皮膚をした人間たちのこと。それとミスター・タイニーは古来よりバンパイアとバンパニーズの間の中立な存在らしいのですが、物語の世界観では中心的な役割を担っている住言うようなキャラクターです。そもそもダレンやスティーブに目をつけたのは彼が最初でした。ただし、彼がダレンやスティーブを使って何を狙っているのかはまだ明らかにされていません。

クライマックスで少しだけ彼の能力、それもとんでもなく強力な力の片鱗を見せてくれますが、彼がこれからこの物語にどのように関わってくるのかもまた楽しみなところ。っとまあ、非常に魅力的なキャラクターが揃う本作ですが、割とダークな印象のキャラが多い中で、ジョン・Ｃ・ライリーのあれだけ強力なバンパイアという役の割には外見的にはちょっと可愛いおじさんといったギャップが面白かったりします。スタイルはカッコいいのだけれどチリチリパーマと顔つきは何だか三枚目、そんなクレプスリーメインのスピンオフ小説も予定されているのだとか。

『ライラの冒険　黄金の羅針盤』の製作総指揮を務めたポール・ワイツが監督というところに不安があるのですが、「ライラ」は続編の声が全くしないものの、この作品は是非作って欲しいところです。物語としてこれからが面白くなりそうだということと、何より渡辺謙のハリウッドでのレギュラー作品になる可能性があるのですから。ただ…低予算とはいえ全米興行成績が３２００万ドルちょいじゃ無理かな…。

個人的おススメ度3.5
今日の一言：渡辺謙さんでおまけの評価です。
総合評価：66点

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