シャーロック・ホームズ

名探偵シャーロック・ホームズを『スナッチ』のガイ・リッチー監督が映画化！『アイアンマン』のロバート・ダウニー・Jrがホームズを、『マイ・ブルーベリー・ナイツ』のジュード・ロウが相棒のワトソンを演じるという豪華な布陣。共演には『きみがぼくを見つけた日』のレイチェル・マクアダムスや同じガイ・リッチー作品『ロックンローラ』のマーク・ストロングが出演。新たなホームズに注目だ！
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これが２１世紀のハイブリッド型ホームズだ！

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昨年から楽しみにしていたこの春期待の大作、オープニングから見せ付けてくれるのが、本作で描かれる新たなホームズ（ロバート・ダウニー・Jr）を象徴するシーンでした。素晴らしい洞察力と推理力による派手なアクションシーン、そう、奇才ガイ・リッチーの手による２１世紀のシャーロック・ホームズは類稀なる知力だけでなく、類稀なる戦闘力をも持ち合わせているハイブリッド型なのです！一瞬で敵を観察し、そこから得た情報で敵の動きを読み切り、攻撃の手段を頭で組み立てあとはそれを実行に移すだけ。頭の中で考えていることをスーパースロー映像で描き出し、実行する時は通常映像、いやはやこの演出が実にカッコいい！やはりガイ・リッチーの考えることは普通じゃありません。

ちなみに後でもう一度、今度は闘技場のような場所でホームズは闘いますが、そのシーンはガイ・リッチー自らが『スナッチ』で見せてくれたブラピの拳闘シーンそっくり。モチロン演出は先に書いたとおりでグレードアップしていますけれど。という訳でこの作品、伝統的なホームズが好きな方にとっては違和感を感じるかもしれません。そもそもロバートが演じているだけあって持っている雰囲気がどこと無くアメリカ的。というかイメージはアイアンマン？更にそれを強調するかのごとく太い眉毛に無精ヒゲ、ギョロっとした眼差しに丸いサングラスはおおよそ英国紳士らしくないです。でもそのワイルドなところが本作のハイブリッドホームズにはピッタリなんですけどね。

さて、そのオープニングでブラックウッド卿（マーク・ストロング）の生贄の儀式を阻止し、彼を逮捕するところから物語は始まります。が、卿は必ず復活すると宣言してサクッと処刑されてしまうんですね、これが。この後、ホームズの元恋人アイリーン・アドラー（レイチェル・マクアダムス）が登場したり、ワトソンとケンカしたりしながら話は進むのですが、ここで何と睡魔に襲われてしまったのでした。期待の大作なのに何故眠い？！結論から言うとブラックウッド卿が復活してからの物語は事件解決に向かった躍動感とリズムのあるストーリー展開なのですが、そこまでがちょっとタルい。というかちょっと長いのです。

宿敵モリアーティ教授を登場させたり、アイリーンを未だ諦め切れないホームズを描いたり、と登場人物を含めた物語の広がりを見せてくれるシークエンスではあるのですが、気持ち的には早く先に進んで欲しいという思いが、いま一つ物語りに熱中するのを妨げたかのようでした。余談ですがアイリーンに騙されてベッドにくくり付けられるホームズのネタ、これを予告編で思いっきり見せてしまったのはちょっともったいなかったなぁと。初見ではかなり笑えるシーンだと思います。レイチェル・マクアダムスの美しさは今更言わずもがなで、個人的にはもうそれだけで満足。

ただ原作ではその知力と美貌でもっとホームズを振り回していたイメージなんですが、わりと可愛らしい女性になっていたように思いました。まあ、計算高い女性というにはあまりに愛らしい笑顔なんですが…。さて、ブラックウッド卿が復活してからはもうグイグイと物語に引き込まれます。特に卿の手による連続殺人の謎の解明は鮮やかで、このあたりは正しく名探偵シャーロック・ホームズの面目躍如。しかしその謎の解明はあくまでも大いなる計画の一部が判明したのみという…この辺りの広がりある展開は原作の流れ通りです。ちょっとラングドン教授の『天使と悪魔』に似てるなとは思いましたけど。

そんな本線の合間にガイ・リッチーらしい小ネタも見られてファンとしては嬉しいところ。例えばせっかくホームズが七つ道具で扉を開けようとしているのに、ワトソンに蹴破られてしまったり…。似たようなシーンは２回ありますが、結局本編では一度もホームズが自力で扉を開けることは適いません。（笑）そのワトソン。ジュードの持つスマートで涼しげな格好良さと医者であるという設定が実にマッチしていました。彼が演じるこのキャラクターは、どちらかというと偉大なる名探偵の助手に甘んじているイメージですが、序盤、婚約者メアリーをけなされた彼がホームズを殴りつけるカットは、言外に２人が対等であることを宣言しているかのようです。ある意味彼もまた２１世紀のワトソンなんですね。

「シャーロック・ホームズ」シリーズは必ず最後に見事なまでの謎解き解説がありますが、本作もそれは踏襲されています。そもそもホームズの動きには必ず何らかの意味があり、ともすればそれはあまりに些細で見落としてしまいがちなのですが、それらがラストに意味を持ってくることの快感、これこそが世界中からこの名探偵が愛される魅力の一つ。そこでふと考えるとこのパターンはガイ・リッチー監督の作品作りにも当てはまっているように思えました。監督の作品も、登場人物の様々な行動が伏線となり、一見何の関係もないような別の事象がラストで収斂してくるのが特徴です。ある意味いつもよりも、伏線を残すのがホームズ自身だけで良い分、監督にとってはお手の物だったのかもしれません。

モリアーティ教授は何者？アイリーンが教授に握られている弱みとは？真の敵との戦いは始まったばかりであり、続編の制作もガイ・リッチー監督で決定しているとのこと。ロバート・ダウニー・Jrやジュード・ロウにとっては将来自分の代名詞とも呼べるシリーズ作品がスタートしたのかもしれません。ちなみに、モリアーティ教授には一時期ブラッド・ピットにオファーがいったことがあったんだとか。さてさて正体は一体誰になるのでしょうか。

個人的おススメ度3.5
今日の一言：１９世紀イギリスの風合が実によく出ていました
総合評価：71点

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