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2010年4月23日 (金)

掌の小説

Photo 川端康成の短編集から6篇をベースにしたオムニバス映画だ。坪川拓史、三宅伸行、岸本司、高橋雄弥の4人の若手監督が“桜”をテーマに、日本らしさを前面に押し出した映像美で川端文学を描き出している。吹越満、福士誠治、香椎由宇ら人気俳優が多数出演。更に昨年12月24日に亡くなった奥村公延の遺作ともなっている。
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日本の美、映画の美


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全体として“桜”がテーマになっているだけあって、日本人の心に沁みこんでくる作品でした。川端康成の短編集が元となっているだけあって、セリフの一つ一つが実に格調高く、伝統的な日本語の持つ美しい響きを堪能できます。思わぬ嬉しさもある4篇のオムニバス映画、順番に紹介したいと思います。

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第一話『笑わぬ男』
監督:岸本 司
出演:吹越満,夏生ゆうな,コージー冨田

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路地裏のアパートにある若い夫婦が暮らしていた。夫は売れない作家。病の床に臥している妻は自分の死期が近いと感じているのか夜毎「足が淋しい」と呟きその細くなった白い足を擦らせていた。「桜が見たい」という妻のために男は桜が咲き誇る裏山へと向かう。
(公式サイトより)

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筆が進まず少し書いては原稿用紙を丸めて捨てる男。売れない小説家がふと振り向くと、そこには美しい妻がいた…。しかし妻はどうも結核か何かを患っているらしい。「足を揉んで頂戴。」すらっと伸びた足は透き通るように真っ白。何ともエロティックでありまた美しいのでした。桜を見たいという妻のために裏山の桜の枝を持ち帰る夫…。裏山で出会った友人Kはしきりに「細君を大事にしたまえ。」と忠告するのですが、それが却って妻の死を暗示しているようです。恐らくもう妻はこの世にいないのでしょう。妻との想い出を辿る男の物語、吹越満が演じる売れない作家が正に当時のインテリっぽさが良く出ている好演でした。

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第二話『有難う』
監督:三宅伸行
出演:寉岡萌希,中村麻美,星ようこ

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私婦として生きている菊子は毎晩違う男と枕を並べながら、いつも故郷で出会った、今はもう逢う事の無いある青年の事を思いかえす。青年は、乗り合いのバスの運転手で、(ありがとさん)と呼ばれている青年だった。道すがら、バスの中から馬車にも大八車にも馬にでも「ありがとう」と声をかける(ありがとさん)。菊子はまだ幼い時分、この(ありがとさん)のバスに揺られ町へ売られて来たのだった。ちょうど、桜の咲き誇る季節に。
(公式サイトより)

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14歳になったばかりの菊子は母に連れられて町に売られていく…。貧しい農村で昭和の初期にはよくあった話。物語は現在の菊子の回想です。自分の娘が売春婦となる前に、せめて好青年であるありがとさんに抱いて欲しい。それは母の希望でもあり、娘の希望でもありました。しかし彼女を抱こうとはしないありがとさん。そんなことを想い出している菊子も今ではもう結婚を控えた身。男たちの慰み者となる生活から解放される菊子の歓びの表情が印象的です。この作品で出てくる“桜”は昔見た故郷の桜だけ……っと思いきや、いつの間にか置かれていた宝石箱を開くとそこには桜の花びらが1枚。たった1枚だけれども頭の中には満開の桜が広がりました。日本人にとっての桜とは、やはり特別なんですね。

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第三話『日本人アンナ』
監督 :坪川拓史
出演:福士誠治,清宮リザ,菜葉菜

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ある寒い日、ロシア人の少女・アンナに財布を掏られてしまう。アンナは毎晩街の映画館でロシアの歌を歌っている。可憐なアンナに魅せられた私は、彼女の暮らす木賃宿をつきとめ、隣の部屋へ通い夜な夜な襖の奥からアンナの姿を覗いていた。そんな夜が幾日か続いたある朝、アンナは町から忽然と姿を消す。翌年の春、満開の桜の下でアンナに良く似た美しい少女と出会い…
(公式サイトより)

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この作品はモノクロ映像が多くを占めていました。セリフも少なめで観ているとまるで昔の無声映画を観ているかのような気にさせられます。くしくも物語りに登場するロシア人少女・アンナは毎晩映画館でロシアの歌を歌っていました。彼女は木賃宿に住んでいますが、彼女の不思議な魅力に惹かれた男は、その部屋の隣に宿泊します。宿の女中さんのセリフ「隣の異人娘がお気に召したんでしたらお世話しましょうか?」は実に意味深。物語最後で男とその妹が引越しをするのですが、そこで男は『有難う』に出てくる宝石箱を、次の住人へのプレゼントとして置いて行くのです。つまりそこは『有難う』で少女・菊子が客を取る部屋になった訳。男はアンナを買ってないですが、少女に客を取らせることなど珍しくも無い時代性の繋がりを感じました。

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第四話『不死』
監督:高橋雄弥
出演:奥村公延,香椎由宇

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来る日も来る日も同じ木の下で凧をあげ続ける新太郎。ある日街の雑踏の中に今は亡きかつての恋人・みさ子の姿を見つける。二人は手を取り合い桜の木へと向かい歩き始める。そこはかつてみさ子が亡くなった場所だった。ようやく恋人に再会することが出来た新太郎は、満開の桜の木の下で凧をあげる。
(公式サイトより)

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4つの中で一番短い作品です。しかし、ある意味では一番印象深かったといえるかもしれません。この篇に登場する新太郎(奥村公延)は、実は他の三編にも何処かに必ず登場しています。それもある時は凧を抱え、ある時は凧を上げ…。そして最後の最後にみさ子(香椎由宇)に誘われるように現世から旅立つのです。香椎由宇は余りセリフの言い方は上手いとは思いませんでしたが、なんといっても独特の雰囲気が、まるで役割としては死神にあたるみさ子にピッタリ。この天性の空気と奥村さんの名演技が融合することで、非常に短いながらも、他の三篇に勝るとも劣らないインパクトを与えてくれました。本作が遺作になってしまった奥村さんの最後の作品が「不死」とは何とも皮肉な限りです。

地味な作品ですが、日本人なら誰しもこの映像表現はしっくり来るものがあるのではないかと思います。純文学はとっつきにくいと思われるかもしれませんが大丈夫。意外に魅入ってしまうはずです。また、一昔前の古いタイプのフィルム映像もいかにも昭和な雰囲気を醸し出していてレトロな気分に浸れるでしょう。

個人的おススメ度3.0
今日の一言:やっぱり太宰より川端の方が好き
総合評価:65点

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『掌の小説』予告編

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売れない作家と夜毎「足が淋しい」と訴える病床の妻。 誰にでも「ありがとう」と声をかけていたバスの運転手を思い出す私娼。 自分の財布を掏ったロシア人の少女を覗き見する男。 今は亡き昔の恋人と再会する老人。 4人の監督の作品を少しずつリンクさせ、1本の映画のように綴ったオムニバス形式の文芸作品。... [続きを読む]

受信: 2010年4月24日 (土) 10時30分

» 『掌の小説』(2010)/日本 [NiceOne!!]
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受信: 2010年4月24日 (土) 23時33分

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