エンター・ザ・ボイド/ENTER THE VOID
ギャスパー流に描いた輪廻転生物語 |
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この映像感覚と哲学的なストーリーは明らかに好き嫌いが大きく分かれるところでしょう。個人的にはこの手のサイケデリッシュで作りこまれた映像がとても気に入った作品でした。映像表現や選んだテーマ自体は非常に奇抜ではあるものの、ストーリーの流れは実は意外に簡単。少なくとも仏教思想に馴染んだ日本人であればすんなりと理解はできると思います。少なくとも『リミッツ・オブ・コントロール』のような難解さはありません。っと思っていたら主人公オスカー(ナサニエル・ブラウン)の妹リンダ役に扮しているパス・デ・ラ・ウエルタは『リミッツ・オブ・コントロール』に出演していた女優でした…。面白いという言葉が妥当かどうかはさておき、興味深いこの作品の唯一の欠点はその長さでしょうか、全編143分に渡ってこの映像を見続けるのは流石に目が疲れました。


始まってすぐに気づくのは、画面が主人公オスカーの目線で描かれていること。彼の顔を認識できるのは、彼がドラッグをやってトリップした時、あるいは鏡を見た時という変わった展開です。即ちトリップした彼は自分の姿を天井から見下ろしている、いわゆる幽体離脱の状態。実はこれがこの後、ずっと続く映像の前触れでした。TOKYOにやってきたオスカーは妹をアメリカから呼び寄せる金を稼ぐために、友人のアレックス(シリル・ロイ)の紹介でドラッグのディーラーをしています。彼の部屋から見下ろす新宿の様子は確かに新宿ではあるものの、私たちのイメージするそれとはちょっと異なっていました。ギャスパー監督の目を通して描かれる東京はまさにTOKYOであり、現実と重なり合いながらもどこかパラレルワールド的な感覚を覚えさせられるような感じ。


ビルは「LOVE HOTEL」と書かれた巨大なネオンや、色とりどりのネオンに彩られています。呼び寄せた妹はストリップで働いているのですが、これもまた日本人のイメージするストリップというよりはポールダンス。いずれにろこの兄妹に言えるのは、はるばる極東の島国までやってきて底辺の生活をしいられているけれど、2人の間には強い兄妹愛があるということでした。ところがある日、注文のドラッグを届けた先で警察の手入れに遭い、何とオスカーは射殺されてしまいます。最初にドラッグでトリップした時の如く、自分の遺体を天井から眺める視線…。ここからが本作の本当の意味での始まりでした。魂となったオスカーの目線、それはひたすら俯瞰の映像。


肉体から解放された魂には物理的な縛りなど当然なく、ビルの部屋から部屋を覗いて回ったり、果てはSEX中の男に取り付いたのでしょう、その男の目線になったりと非常にユニーク。何やら観ている私たちまでもがトリップしているかのようにすら思えてきます。というより私たち一人ひとりがオスカーなんですね。リンダを見守りつつも、少しずつ何故自分が死ぬハメになったのかが解ってゆくオスカー。魂に心があるのか、はたまた魂が心そのものなのか、その辺りは良く解らないですが、オスカーの心には常に幼い頃にリンダと交わした約束がありました。「ずっと側にいるよ。」この約束を彼の魂は果たすべく行動に移します。と書いてみたものの、それが彼自身の意思なのか、天の配剤なのかは解りません。


いずれにしろ輪廻転生があるならばそれを映像化したらこうなるのだろう、そう思わせる映像表現、その発想の奇抜さは鬼才ギャスパー・ノエと呼ばれるに相応しいものでした。ひたすら俯瞰の目線ゆえに、常に動きのある映像が目に飛び込んできます。否が応にもスクリーンを凝視してしまうため、知らない内に目と脳がクタクタ。それでなくても光の点滅が多い映像は、それだけで下手すると気分が悪くなる人も出てしまうかも。(苦笑)せめてもう少し短く作ってくれたら個人的にはもうちょっと集中して楽しめたのではないかと思うのですが…。R18指定ということで、そのものズバリのSEXシーンはありますが、グロはありません。魂になっても兄妹愛を成就させる、その場所が文字通り「LOVE HOTEL」だったところに上手さを感じました。
個人的おススメ度3.5
今日の一言:パス・デ・ラ・ウエルタが超ナイスバディ!
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『エンター・ザ・ボイド/ENTER THE VOID』予告編
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