インファナル・アフェアIII/終極無間
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ラウは永久に許されないのか… |
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シリーズ第3作、本作でもまた意外な事実が判明し、実に見応えがある作品です。1作目からそれぞれ描く内容は異なれど、運命の流れに翻弄される男たち。「ゴッドファーザー」シリーズに匹敵する素晴らしい三部作と言えるでしょう。今回は、第2作では余りフィーチャーされなかった潜入マフィアのラウ、即ちアンディ・ラウを中心としたストーリー展開です。1作目のラストから10ヵ月後…、善なる道を行きたいと切に願うも、ヤンにそれを拒絶され挙句に同じ潜入マフィアのラムによってヤンを殺させてしまったラウ。あの時点で正真正銘の“インファナル・アフェア”に入り込んでしまった訳ですが、案の定眠れない日々を過ごしていたのでした。しかも罪の意識に苛まれるラウに更なる心配事がのしかかります。うーん、無間道まっしぐらと言う感じ…。


さてその心配事とは…、ヤンを殺したラムの残した言葉「全部で5人」つまり、潜入マフィアはまだ他にいるということ。自分の正体を知る者が警察内部にいる、しかも下手をしたら命を狙われる危険すらある。やっとの思いで得た善なる人生なのに…。またこのタイミングで絶妙にいやらしく登場するのが保安部のヨン警視(レオン・ライ)。はっきりとは解りませんが保安部は日本で言うところの公安のようなもので、警察内部でも非常に閉鎖された部署なのです。彼の前で部下が「仲間だろ!」と言って自殺したり、ウォン警部の残した写真にサムやもう一人謎の人物と共に映っていたり、挙句の果てにはサムとの会話の録音テープまで出てくる始末。このあたりの演出が実に上手いのは、観ている私たちがラウ目線であることを十分に意識している点。


いや、例えそうじゃなく中立的な観方をしていてもヨン警視の謎の多い行動には疑問が湧きまくりです。さて、ラウならずとも疑心暗鬼になりつつあるタイミングで挟まれるのが、殉職前のヤンを描いたシークエンス。ただし、今回はあくまでも1作目で描かれなかったサイドストーリーをつまびらかに見せてくれたといったところでしょうか。しかしながら、精神科医のリー(ケリー・チャン)に心の安らぎを見出していくあたりは、彼女がヤンの辿った“インファナル・アフェア”の道程で唯一の心のオアシスだったことが良く解りました。ちなみに1作目で離婚した妻が娘と共に登場するシーンがありますが、それに関する事実も描かれています。いずれにしても、リーとのシーンではシリーズでは余り観られないトニー・レオンの気持ちの良い笑顔も見られるので、ファンには堪らないサービスシーンかもしれません。


保安部に隠しカメラを設置し、ヨン警視の動きを監視するラウ。監視カメラの映像を見る彼の顔には次第に狂気が宿っていくのでした。ちょっと面白いと思ったのは、それを表現するのに乱暴に使い捨てコンタクトレンズを目に入れるシーン。1作目でアレだけクールで切れ者だったラウの姿はもうそこにはありません。そして皮肉だったのは、ヤンの情報を得るためにリーに近づいたラウが、ヤンと同じように彼女に安らぎを見出すところ。彼女の前で彼は秘密を語ります。画面左にラウ、右にヤンが寝ている姿は対照的であり、それは1作目のレビューで私が書いたように、正反対の波形を示す2人がリーという一点で交差したかのようでした。遂にはヨン警視を尾行までするラウ。その目の前に現れたのは義足の男…。それは過去にサムとの取引相手でヤンともつながりのあるシェンでした。


ことここに及んで、ラウは遂にヨン警視の金庫からテープを盗み出し、彼を逮捕しようとします。証拠として再生したテープから流れてきた声はラウ自身とサムとの会話でした…。と同時にその場に現れるシェン。彼もまたヤンとラウの最後の会話のテープを再生します。一瞬何が何だか解らなくなる私。え?ラウがラウじゃなくてヨン警視がラウ?じゃあシェンって何者?簡単に言うとラウはリーのところでヤンの魂と波形が交差した時、彼になったのです。ヤンがラウを許さないという執念がラウの正体を暴いたと言えるのかもしれません。ヨン警視は実はヤンと警察学校の同期、シェンは大陸からの潜入捜査官でした。全てが判明した今、改めて「運命は人を変えられるが、人は運命を変えられない」という言葉をかみ締めています。


ラウの「俺にだってチャンスをくれ!」という悲痛な叫び声が耳から離れません。善の道を辿る運命になかったラウはどんなにあがいてもそれを手に入れることは出来ないのでしょうか。最後は拳銃自殺を図るラウ。しかし彼は一命を取りとめ、その頭には銃弾が残ってしまいます。死ぬことすら許されないのか…。ラストシーン、彼の意識が正常なのかそれともそうではないのかは解りません。おかしな話ですが、障害が残り何も考えられない状態になっていた方がまだ幸せなのかもしれないとすら思ったのでした。実に見事な三部作、正しく香港ノワールの名作と呼ばれるに恥じない作品でした。
>>インファナル・アフェア
>>インファナル・アフェアII/無間序曲
個人的おススメ度4.0
今日の一言:最後の最後で最初にもどる演出が憎い
総合評価:75点
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『インファナル・アフェアIII/終極無間』予告編
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