ボックス!(ティーチ・イン付)
人気放送作家・百田尚樹の同名ベストセラー小説を『デトロイト・メタル・シティ』の李闘士男監督が映画化。高校ボクシングをテーマに、天才肌のボクサーと努力型ボクサーという親友同士が成長していく様子を描く青春スポーツドラマだ。主演は『ROOKIES -卒業-』の市原隼人と『ソラニン』の高良健吾。共演に谷村美月、筧利夫、香椎由宇ら人気俳優が名前を連ねる。迫真のボクシングシーンに注目。 |
今度はボクシングで夢にときめいた!? |
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ストーリー的には青春スポーツドラマとして普通のお話。普通と言うことはベタな展開の中にも感動させたり笑えたりといった、この手の話の決まりごとはしっかり含まれているという意味です。しかしながら、何故か『ROOKIES』などで感じた突き抜けた感動に涙がボロボロと言うほどでもありませんでした。主演の2人はとても魅力的。市原隼人はついこの間まで不良高校球児だっただけに、関西でボクシングと住んでる場所と種目は変われども、そう違和感は感じません。というか殴られて血が出てるほうが自然かも。一方の高良健吾は正直ちょっと高校生には違和感を感じましたが、こちらもまあついこの間までは大学出たてのミュージシャンでしたから、若さというくくりでは問題なし。優等生役だけにその髪型や好青年そうな顔立ちですぐに馴染めます。
この2人、実は子供の頃からの親友。木樽優紀(ユウキ:高良健吾)は小4の時に母の仕事の関係で東京に転校していたのが、恵美須高校で再会を果たすことから物語は動き出します。天才ボクサーとして実力を発揮していた鏑矢義平(カブ:市原隼人)はユウキをボクシング部に誘うのでした。話の流れを凄く大まかにいうと、この2人の前に高校三冠王で超高校級といわれる稲村(諏訪雅士)が登場し、カブはボコボコにやられ、しかも努力家のユウキまでメキメキ実力を伸ばし試合でカブをKO。心がポッキリ折れたカブはボクシングから離れてしまうという……あれ?何か似たような話を何処かで聞いたような…?そう、曽利文彦監督の『ピンポン』と良く似ているんですね。
あちらは卓球でしたが天才肌の男が自分より格下だと思っていた相手に負けて心が折れるという部分が同じです。今回はしかもその格下だと思っていた相手が親友だったという…。それにしても卓球の球はCGでしたがボクシングはそういうわけには行きません。市原隼人は元日本チャンピオンの田端氏から3ヶ月以上にも及ぶ猛特訓を積んだそうですが、その動きは素人目には経験者のよう。シャドウボクシングだけでなく、試合での様子もノーガードで顔を前に突き出してはスウェーバックする、ちょっとおどけたようなスタイルはまるで亀田興毅が良く見せる姿にそっくり。ちなみに亀田興毅もちょこっとだけ観客として出演してたりしています。(笑)
さて、この後もちろん立ち直ってリベンジを果たすという流れになるのは当たり前なんですが、少し気になったのがカブが受けたショックの描写が今一つだったこと。なにやら似合わないヤンキースーツ姿で荒れ模様ではあるんですが、どうも安っぽく見えてしまいました。そんなカブがユウキの試合の応援に駆けつけるも、関係者以外立ち入り禁止の張り紙を見ることで、自分がボクシング部を止めていることを実感する…即ちそれが気持ち的に立ち直るきっかけなんですが、心情は理解出来るもののきっかけとしては少し弱かったように感じます。というか、これはカブとユウキ両方に言えることなのですけども、彼らに影響を与える人間が基本的には彼ら自身だけなんです。
中盤までは丸野智子(谷村美月)という存在があるものの、彼女とて彼らの生き方そのものに影響を与えたというよりは、カブがボクシング部に戻るきっかけ作りのための存在にしかなっていません。更に、カブのボクシングスタイルは終始一貫変わらないのですが、そのまま稲村にリベンジを果たそうとしてもそれは無理な相談。そこで試合中に追い込まれると、ある事をします。それは誰に指示されたわけでもなくカブが自分でしたことなのでした。一応ボクシング部監督として沢木(筧利夫)という存在があるのですが、この流れだと結局彼の存在も活きていません。練習中も含め、監督は勝つためにカブの何かを変えるということをしていないのです。
良くも悪くもカブとユウキという親友同士がボクシングを通じて人間的に成長していく様子を描いた作品が本作であり、あくまでもフォーカスはこの2人に当たり続けています。例えば『ピンポン』しかり、『ROOKIES』しかり、『風が強く吹いている』しかり…、やはり魅力的な仲間や指導者の存在があり、自分は一人で闘っているんじゃないということが見えたほうが、何かを達成した時の感動もより大きいのではないかと思うのですが。…っとまあ批判的に書いて来ましたが、基本的にはこの手のドラマが大好きです。市原隼人の負けん気たっぷりの闘志と高良健吾の生真面目でも内に秘めた闘志が対を成している姿は、観ていてどちらも心から応援したくなりましたしね。
個人的おススメ度3.0
今日の一言:谷村美月はわざと太めにしたのかな?
総合評価:64点
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『ボックス!』ティーチ・イン(※ネタバレ含みます)
『ボックス!』試写会上映終了後、李闘士男監督(以下李監督)と武田吉孝プロデューサー(以下武田P)の御二方をお招きしたティーチ・インが行われましたのでその模様をご紹介したいと思います。
李監督―今日はGW最終日、日曜日にも拘らず足を運んで頂きありがとうございます。今日はお互いに隠し事ナシということで、ここを出るときにはスッキリということで、何でも聞いて頂ければと思います。
武田P―折角ですから、今日ここでしか言えないような事もお話しするということで…
李監督―この中で原作を読んだ人いますか?(1、2人のみ挙手…)百田先生が今日ここにいなくて良かったです。(場内笑)
映画化のきっかけは?
武田P―元々ボクシングが好きだったんですね。で、ボクシング映画の名作とかはありますけど小説でそれを表現していると言うのが気になったんです。そこでたまたまTBS近くの本屋でこの原作小説を手に取ったことからスタートしました。
原作者は映画は映画で好きにしていいと言う方と、そうでない方がいると思うのですが?
武田P―最初は好きにやっていいと。百田さんは関西で『探偵ナイトスクープ』っていう番組の構成作家をやってる方なんで、物語の勘所というのを心得ていらっしゃる方なんです。だからどうしても外せない部分というのはやはりあってそこは拘りました。
李監督―脚本は120ページありました。
どの辺が外せないところだったんですか?
武田P―原作は全部で600ページ位あるんです。カブとユウキ、当初はこの2人を若いイケメンを集めて最後に対決かなって思ってたんですね。でもそれだと原作が活かせないと思って百田さんに相談したんです。そこからまた脚本を何回も練り直したんですね。
決勝で良い所で5年後に飛んでしまうのは何故ですか?
李監督―クレームですね?(場内爆笑)あのシーン何で飛んじゃったんだって思った人?(数名挙手)じゃあ飛んでしまっても良いと思う人?(多数挙手)
武田P―あの構成に関しては色々意見を貰ってるんですね。確かに最後はそのままが良いという指摘もありました。最後にカブが勝つのはこういう作品の場合予定調和になってしまいがちですよね。敢えて最後に切ってサスペンスを入れてみたんです。でも実は編集上落とせるようにはしてあって、実際に入れてみて自分の期待通りの効果があるのか試してみたという考えもありました。
数年後のお好み焼き屋でカブがパンチで骨折したというセリフがありましたが、一言で片付けてしまったのは?
李監督―これは僕の個人的な考えなんですが、映画は全部説明する必要があるのかと思ってるんです。彼の未来に興味を持って欲しかった。拳を骨折したその事だけは解って欲しかったんですけど、敢えて他は伝えずに楽しんで欲しかったんです。小さい頃の2人、今の2人、そして未来の2人、こいつはボクシングは諦めたけどそれでも凄くイイ奴。この高校時代の1年数ヶ月は彼の人生の中でも一番キラキラ輝いていたんだっていうのを見せたかったんですね。
若い宝生舞さんがお母さんと言うのは?
李監督―ハイ!これはもう僕が宝生さんでやりたいと言って、バキ打ち(筆者注:ボロクソに責められること。)って言うんですか?にあったんですが、頑張りました。(笑)宝生さんは33歳なんです。大阪のヤンキーママは16歳で子供を産むのはありますから、計算すると合ってないですか?カブと殴り合えるぐらいの気概を持っている母親が欲しかったんです。
武田P―宝生舞、山崎真実、市原隼人ってこの3人は顔が似てるんです。目とかが。それに宝生さんと山崎さんは関西なんでネイティブの関西弁が話せますから自然に流れる空気感が出せるんじゃないかと思って。
李監督―宝生さんで言うと、最後の試合の応援の彼女の服装、あれは昔社交ダンスやってた時に作ったって設定なんです。でも仕事で忙しくて社交ダンスは止めて、晴れの舞台だから何着てこうかって考えたらアレになったという。
ユウキの母親が出てこないのは?
武田P―最初台本にはいくつか書いていたんですけど、決定稿には出てきてないです。実際問題として撮ってる内にボクシングシーンで日数を食ってしまって、撮影日数が足りなくなってきたという理由もあったりします。監督とは話したんですが、原作は膨大な情報量、それを2時間にするには、ある程度感じてもらえる芝居を役者にしてもらおうと。例えば2人の友情を表現するのに小説なら10ページあったとしても、映画では2人の笑顔のカットバックとか。ユウキのバックグラウンド、それを芝居の延長線上に含めて欲しいと高良くんには頼んでおきました。作り手側の想いとしては彼らの芝居と空気感で補足すればなと。
ユウキの住まいに関して何も情報がないけど何故あの場所なんですか?
李監督―この作品を撮るにあたって考えたのは、“川”が大事だってことなんです。大阪らしさを出すのは“川”を入れ込んだ時で、それが特別な感情を持った風景になると思うんです。例えば何もしゃべらない人を表現する時、中途半端に描かないで、敢えて何も描かないって良さを思ったんですね。
武田P―作り方の方針として、ある程度落としていくのなら中途半端にしないほうが良いだろうと。ユウキの母親が出ないということも、カブの母親や姉さんがある意味ファミリーで、だからこそあの2人の友情が育まれたんだと思えるんじゃないかなと。
ユウキが好きなのは先生?それともまるちゃん?
武田P―それはもうユウキは先生の事が好きです。まるちゃんはあくまで勉強のライバル。かつて不良に絡まれて逃げてしまった、だから試合の前日に鏑矢に勝つって、好きな人の前でちょっとかっこつけたっていうのもあります。でも伝わってなかったってことですね!これから帰って反省会開きます。(場内爆笑)
李監督―折角だから裏話を。葬式の会場からカブが逃げるシーンがありますよね。で、市原くんは常に動いている人だから、普通に彼が逃げたら絶対追いつかない訳ですよ。それで考えたのがあの幼稚園児。実はあの幼稚園児の中には僕の子供や武田さんの子供もいたんです。彼には世話になってるプロデューサーや監督の子供押しのけて逃げないよなって言ったんですけど。(笑)
…っとまあ実にフランクに質問に答えつつ、笑わせてくれた李監督と武田Pなのでした。この2人のコンビの良さが垣間見えた気がします。是非また別の作品でもコンビを組んで欲しいと思ったのでした。(了)
『ボックス!』予告編
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