君と歩こう
第22回東京国際映画祭 日本映画・ある視点部門出品作品。34歳の女性教師とその生徒の男子高校生の駆け落ちの様子を描いたコメディドラマだ。監督は『川の底からこんにちは』で商業映画デビューを果たした新鋭・石井裕也。主演は現在公開中の『書道ガールズ』や『色即ぜねれいしょん』の森岡龍とモデルの目黒真希。微妙な間合いのセリフ回しが生む空気感に何故か和む。 |
石井監督最後の自主制作映画か?! |
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『川の底からこんにちは』で絶妙な笑いと、人間模様を描いてくれた石井裕也監督作品。本作も個性的なセリフ回しや間合いは共通でした。それにしてもこのユーモアのセンスは案外好き嫌いが分かれるかもしれないです。緩い空気の中で結構ドキッとするようなことを言わせたりするし…。そもそもこの作品、設定がありそうでないところが面白い。両親の自殺で高校を中退した男子高校生・佐伯ノリオ(森岡龍)とその高校の女性教師・田中明美(目黒真希)の2人が駆け落ちをしてしまう―すわっ、女教師と男子高校生の禁断の愛か?!まるで松嶋菜々子・滝沢秀明の「魔女の条件」じゃないですか!…っと思いきや、これが全然ウェットなラブストーリーではないのです。
というかこの2人はそもそも恋人同士といえるのか?物語の冒頭から2人の会話は普通に教師と生徒の語り口そのもので、年上で先生だけに命令口調の明美とそれに素直に従うノリオといった感じです。どうして駆け落ちをすることになったのかなど、詳しいことは一切解らないままに東京に出る2人、渋谷の街中での完全おのぼりさん状態が妙に面白い。この辺まで見ていると気付くのですが、この作品中では会話のキャッチボールで1回に投げる玉が1つではなく、必ず繰り返しているのが特徴。時には全く同じ言葉を2回続けることもあります。別に取り立てて強調している訳ではないのですが、この妙な台詞回しが生む微妙な空気感、私はこの変な空気感が結構好みだったりしました。
例えばひとしきり逃げ回り疲れてベンチに座る2人、「先生、手とか握りましょうか?」「お前、案外女心解ってんじゃん―。×2」みたいな。ぎこちないけど一応この2人って好きあってるんじゃん?と、ほのかに漂う恋の香りがどこか心地よい気持ちにさせてくれます。さて、部屋を借りノリオには弁護士になるために勉強しろ、自分はエステに行くと話す明美。しかし、実はそんなお金などあるわけも無く、あっという間にジリ貧に…。そこで近くのカラオケ屋でバイトする明美。元教師のプライドが邪魔するのか、全くやる気の無い明美とその姿に激怒する店長のやり取りもまた畳み掛けるように繰り返し。一方ノリオは図書館で勉強中にひとりの少年と出会います。
この少年がこの作品のオチのネタ。この少年との交流も描かれるのですが、なんというか…、書くのも下らないというか…。正直この件はいま一つ面白くないです。更に明美がバイトしていることを知ってしまったノリオは、ついでに明美の同僚の女子高生が妊娠していて、彼氏と駆け落ちしたいと思っていることまでも知ってしまいます。そして、何故かその2人の駆け落ちを手伝うことに。この辺まで来るともはや話の筋道がめちゃくちゃというか、何が言いたいのか、何を描きたいのかが良く解らない…。ただ、その女子高生と彼氏を家に呼んで明美が駆け落ちの何たるかをトウトウと語るシークエンスは作品中もっとも下らない笑いが巻き起こった場面でした。敢えてココには書きませんが、下ネタなんで好き嫌いがあるでしょうけど。
ただ、よくよく観ていると、そうした下品な笑いの中には彼らを反面教師として、これまでいま一つハッキリとしていなかった明美とノリオの気持ちが整理されていくのが解ります。この落としどころというか、収斂の具合がなんとも気持ちよかったり。最終的に彼らの駆け落ちはひょんなことから失敗します。しかし、3年後に再会した2人の表情は駆け落ちした時よりもはるかに良い顔をしていました。『川の底からこんにちは』と同時期に製作されたこの作品、作品としての完成度、面白さは『川の底からこんにちは』に遠く及ばないと思いますが、自主制作映画臭さが好きな人には向いているかも。
個人的おススメ度3.0
今日の一言:映画好き向けの作品かな…
総合評価:61点
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『君と歩こう』予告編
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