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2010年5月17日 (月)

ビルマVJ 消された革命

Vj 第82回アカデミー賞の長編ドキュメンタリー賞ノミネート作品。軍事政権下のビルマ、厳しい報道統制下にあるかの国で、自らの命を危険に晒して取材活動を行っているVJ(ビデオジャーナリスト)たちが撮影した映像を再構築。日本人ジャーナリスト長井健司氏の銃撃の瞬間を含む、知られざるビルマの真実が映し出されている衝撃の問題作だ。
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紡ぎだされたビルマの真実

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ビルマで今起こっている真実に目を奪われるのみだ。その現実を見るにつけ唾を飲むのも忘れ、瞬きすら出来ない。喉も目もカラカラに乾ききって痛くなってくる。そんな時に長井健司氏の銃撃の瞬間の映像が流しだされた。無造作に手足をつかまれ運ばれていく長井氏を見て、止め処もなく涙が流れ落ちる。渇ききった目を潤したのが涙だったというのが皮肉としか言いようが無い…。実は本作の内容に関して私がここにどうこう書いても仕方が無いのではないか、そう思っている。即ち、彼の国で命を賭して取材活動をし、少しでも自国の状況を世界に発信しようとしている彼らVJの映像、これは正に「百聞は一見にしかず」だと思うからだ。とはいえそれでは記事にならない。そこで内容的なことよりも観て思ったことをそのまま書いてみたいと思う。

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本作で登場する映像はきっと誰しもが何処かでみた覚えがあるはずだ。特に2007年9月に起こった大規模な反政府デモの様子は日本でも盛んに報道された。ずっと沈黙を守っていた2000名もの僧侶が始めてデモに参加した映像、冒頭書いた長井健司氏の銃撃映像、これらはいずれも「ビルマ民主の声」に所属するVJたちが撮影した映像だ。撮影したと言っても、子供の運動会を撮影するのとは訳が違う。当時から現在に到るまで、ビルマではカメラをもっているだけでも逮捕の対象なのだ。当局に捕まり、内乱罪が適用されたら十年以上の刑務所入りが待っている。そんな危険と背中合わせで撮影したその映像を再現映像も使用しつつ整理再構成したのが本作なのだ。

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作品の中心人物はジョシュアというVJ。ちなみにジョシュアは恐らく偽名だろう。本作ではこのように登場する人物全ての素性を明らかにはしていない。それは未だ国内に潜伏する彼らの安全を守るため。ジョシュアの部分は再現映像ではあるが、作品では彼が司令部的な役割となって各地で起こった出来事が映像として見せられていく。ジョシュアが各地のVJと携帯で話す台詞は一部本物の音声ではあるが、殆どは事実に基づいて構築された真実だ。つまりアンドレス・オステルガールド監督は、事実の断片を集めてきてそれを元に真実を紡ぎだしたと言えるだろう。これに関して、私は鑑賞後ツイートで「素晴らしいセミドキュメンタリー」だと話したところ、公式ツイートの方から「セミではないです。」とのご指摘を頂いた。

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私としては“作り物の映像が入っていないこと。”というのが、今まで自分が作り手として考えていた定義だったため軽い気持ちで使ってしまったのだが、「作り手側もセミだとは思っていないだろうと思う。」と仰っておられたことに関しては正しく其の通りで自分の不明を恥じるばかりである。重要なのは形ではないのだ。本作には正に今ビルマで起こっている真実が映し出されているのだから。話を元に戻そう。2009年の反政府デモのシークエンス、各地のVJと彼らが撮影した映像、ジョシュアとの緊迫した電話でのやり取り、真実の持つ緊張感に観ている我々も包まれる。それはこれから起こる歴史的な出来事に立ち会う瞬間の緊張感だ。私は以前にこれと似たような経験をしたことを思い出した。

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1989年6月4日。中国は北京で起こった天安門事件がそれだ。ビルマと同じように民主化を求める反政府デモに対して軍が無差別に発砲したこの事件、約20年を経過した現在も中国の民主化は到底十分とは言えないが、しかしながら近年の目覚しい経済発展は周知の事実だ。ビルマでも全く同じことが繰り返されてしまった。国民を守るために存在するはずの軍が国民に向かって発砲する…。よもや国が発展するのに国民に対して武力弾圧を加える必要があるなどという決め事がある訳ではなかろうに。実はビルマでもこの天安門事件の前年、1988年に同様の大規模な民主化運動が起こり、この時は翌年にアウンサンスーチー女史が軟禁されている

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さてその国軍の発砲のさなか、冒頭に書いた通り長井氏が撃たれる様子がはっきりと映し出される。逃げ惑う人々。僧侶たちは殆どが捕まり、残された学生たちは小数のグループにわかれてデモ行進を続けるものの、軍がやってくると必死で建物に隠れる。もちろんその彼らを撮影しているVJもだ。緊張の息遣いが見ている私たちにもハッキリと伝わってくる。もちろん観ている私は為す術もなく、ただただ涙が流れるのみだった。そして僧侶の遺体が川に遺棄されている映像を観た時、「ああこれでもう軍事政権と民衆の間の修復は不可能だろうな。」と漠然と感じた。この国での僧侶の敬われようは日本の比ではない。後述するトークショーのゲストで招かれていたゾー・ゾー・ライン氏も仏教の国でこんなことが起こるのは恥ずかしいと語っていた。

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本作鑑賞後に「ビルマ民主の声」の日本特派員であるそのゾー・ゾー・ライン氏のトークショーが行われたのだが、更にそのトークショーが終わったあと、一人のビルマ人の女性が私たちにつたない日本語で一生懸命訴えてきた。彼女は日本人にもっとビルマの事を知ってもらいたいと言っていた。良くは聞き取れなかったのだが、ビルマ人に親切にしてくれる日本人に感謝しているというようなことを話していた。でも実際私たちは彼女たちに何もしてはいない。それどころか、2003年まで日本は軍事政権を積極的に支援してきたのだ。長井氏の射殺事件がなかったとしても、彼らの問題は私たち日本人の問題でもあるはずだ。是非この作品を観て欲しい。いや、観られる環境にあるなら観るべきだ。

個人的おススメ度5.0
今日の一言:VJの皆さんの無事を心から祈ります
総合評価:86点(90点満点)

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<トークショー>
ゲスト:ゾー・ゾー・ライン氏(「ビルマ民主の声」日本特派員)

ゾー・ゾー氏―自分の仲間たちの活動を世界中にこうして知られるようにして下さったことに感謝します。私も作品を観て驚き涙が出ました。VJの仲間が命を賭けて世界中に情報を流してくれたことに感謝します。

司会―ゾー・ゾーさんはいつ日本に?

ゾー・ゾー氏―18年前です。

司会―どうして日本にいらっしゃったのですか?

ゾー・ゾー氏―1988年に私は大学生で、反政府活動をしていたビルマ学生連盟のメンバーでした。それは今もそうです。その時に国内の留まっていることが危険だったので日本に来ました。

司会―どういうきっかけで「ビルマ民主の声」にはいったのですか?

ゾー・ゾー氏―最近ではBBCやVOAが放送をしてくれますが、最初はメディアと国内の人を繋ぐ仕事をしていましたが、2007年のサフラン革命がきっかけで入りました。

司会―日本ではどんな活動を?

ゾー・ゾー氏―在日ビルマ人の活動を取材したり、たまにチェンマイに行って取材したりしています。

司会―日本で取材したものはどうやって放送するのですか?

ゾー・ゾー氏―インターネットでアップしてノルウェーにある「ビルマ民主の声」の本部に送り編集して放送します。ビルマ国内に潜伏しているVJもそうしてます。

司会―この作品上英語のビルマのVJの状況はいかがでしょう・

ゾー・ゾー氏―亡命した人もいますし、刑務所に入っている人もいますし、まだ国内に潜伏している人もいます。

司会―活動は縮小されてしまったのですか?

ゾー・ゾー氏―いいえ。映画の時はVJは30人ぐらい潜伏していました。今はそれが100人ぐらいまで広がっています。

司会―映画はビルマ人の方は観られるのですか?

ゾー・ゾー氏―インターネットから見られたりはしますが厳しいです。ビルマではDVDになっているのを持っているだけで10年以上は刑務所に入れられます。

司会―VJが増えてきたのはやはり映画のせいなんでしょうか?

ゾー・ゾー氏―ビルマの本当の情報は外に漏れないんです。インターネットも厳しいですしGメールも使えないけど頑張って使えるようにしています。それは本当の情報を国内にも世界にも知ってもらいたいから。VJになりたい人が増えたのはそういうことです。

司会―映画公開で登場した人に危険はないんですか?ゾー・ゾーさんは大丈夫?

ゾー・ゾー氏―映画はトゥルーストーリーです。再現を含んだりしているのは場所や人が特定できないように配慮しているからです。映画の中で学生が立って話していますが、彼は学生連盟のリーダーで、既に捕まって60年の刑を受けています。それでの向こうの人は本当の事を世界中に知ってほしい、其の方が嬉しいと言っています。

司会―最後にゾー・ゾーさんから何かあれば。

ゾー・ゾー氏―映画を観てくれてありがとうございます。100%じゃないけど本物の、トゥルーストーリーです。仏教の国なのにこういう国の状態を見てもらうのは恥ずかしくもあるけれど、真実を観てもらえることが嬉しいです。(了)

『ビルマVJ 消された革命』予告編

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