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2010年6月15日 (火)

パリ20区、僕たちのクラス

20 2008年のカンヌ国際映画祭でパルム・ドールに輝いた作品。移民の子弟がい多いパリ20区にある中学校を舞台に、様々な子供たちとその担任との間に起こる出来事を1年間に渡って追いかけたドキュメンタリー風ドラマだ。本作の原作である「教室へ」の作者、フランソワ・ベゴドーが主演を務めている。監督はローラ・カンテ。24人の生徒たちはいずれも演技未経験ということに驚かされる。
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フランス人はこうして出来るのか…

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まずこれがドキュメンタリーでないことに驚かされる作品。フィクションと言うことはそこに多少なりとも脚色が存在するはずなのだけれど、そういった部分を全く感じさせないのです。理由の一つには生徒たちの存在があるでしょう。聞くところによれば、生徒役の24人はオーディションで選ばれたとはいえ、演技に関しては全く未経験だとか。この作品の場合は、その未経験な部分と今正にリアルタイムで思春期を生きる彼らが放つ子供らしい空気感が真実味を持たせていました。それにしても本作を観ると、今まで数々のフランス映画やテレビ等の映像から受けていたフランス人やフランスという国に抱いていたイメージの根源を垣間見た気がします。つまり、言うまでも無くその国の国民を形作るのは教育であり、実際にどんな教育を受けていて、学校でどのような日常を送っているのかは非常に興味深いものがあるから。

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クラスの様子はぱっと見たところ、アメリカなどでも良く見られる風景です。服装は自由で、アクセサリーも自由。授業中にガムを噛み、教師に対してもやたらとフランクな語り口。最近の日本では学級崩壊が叫ばれた久しいものの、基本的に日本人とは何と勤勉で規律を守り重視する国民性なのかとつくづく感じます。もっともフランスとてアメリカ同様に多くの移民を受け入れており、クラスにも白人・黒人・黄色人種、具体的にはアフリカのマリ出身だったり中国出身だったりと、そもそもの価値観や宗教が異なる子供たちがいる以上、画一的な決め事で縛るのは難しいのかもしれません。担任のフランソワ(フランソワ・ベゴドー)は国語の教師。彼は生徒たちが吹っかけてくる意見に対して一々論理的に答えていくのですが、それには単純に専門教科以外にも人間として幅広い知識を必要とする訳で、あちらの教師の懐の深さがうかがえました。

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多彩な個性の集合体である教室には、当然のことながら優等生もいれば劣等性もいます。しかし、彼らの発想や発言は常に自由であり、時として勉強は出来なくともハッとさせられるのでした。例えば自己紹介文を書いてくるという宿題。字も上手くかけないスレイマンという生徒は、デジカメで自分や家族、身の回りの友人を写真に撮ってきます。フランソワはそこに簡単なキャプションをつけるように指導するのですが、正にこれこそ豊かな発想力というもの。自己紹介文を書かせる目的は、自分と自分を取巻く環境を客観的に見直すことであり、それを皆に説明することでお互いの理解を深めることでもあります。従って必ずしも文章である必要はありません。日本だったら、手抜きしないできちんと書いて来いとでも言われるのではないでしょうか。

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もちろん何でも自由勝手に解釈してよいわけではありませんが、事の本質を把握してどのようにそれを達成するのかを自分で考えること、日本の教育に足りない点の一つがこんなシーンに見受けられました。それにしても、自由や権利、平等に対する意識は、例えそれが子供であっても非常に高いのがいかにもフランスらしいです。驚かされたシーンの一つに成績評定会議がありました。教師が集まり全ての生徒の成績評定を議論するその席に、生徒代表の2人を同席させるのです。しかも発言まで許される…。これは流石に日本人的には考えられませんし、それが本当に生徒の為になるのかは疑問でした。案の定というか、この2人の参加者から生徒の成績が外に漏れることになります。そしてそれが原因でフランソワのクラスに問題が起こり、自己紹介文の宿題で素晴らしい発想をしたスレイマンは懲罰会議にかけられ退学となってしまいます。

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ここにも私はフランスらしさを垣間見た気がしました。実際スレイマンの起こした問題行動は教師への暴言、無許可で教室からの退室、そして退室の時たまたま彼のバッグが女子生徒にあたり軽い怪我をさせてしまったというもので、日本であれば退学はあり得ないでしょう。そもそも中学生は義務教育ですし。つまり、日本人から観たら過剰なまでの自由、そこには代償として責任や義務が付随しており、今回の場合それは学校のルールを守ることであり、クラスの秩序を守ることだった訳です。たとえ子供であろうとも、一人前の権利と自由を当然の如く与える教育、それがもたらす自由闊達な議論、彼ら教師と生徒のやり取りが必ずしも良いことだと私には思えません。しかし、今の国際社会上で自分の意志を強固に表明することが余り無い日本人としては、それの気概を自然と養う教育の一つのあり方ではあるのかもしれません。

個人的おススメ度4.0
今日の一言:ホント生意気なガキたちだ…
総合評価:74点

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『パリ20区、僕たちのクラス』予告編

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受信: 2010年6月15日 (火) 23時51分

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《パリ20区、僕たちのクラス》 2008年 フランス映画 -原題 - ENTRE [続きを読む]

受信: 2010年10月16日 (土) 22時18分

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受信: 2011年1月10日 (月) 13時06分

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パリ20区、僕たちのクラス 監督:ローラン・カンテ 移民が多く暮らすパリ20区の公立中学校。正しい国語を身につけさせることこそ生徒たちの将来の幸福につながると信念を持つフランス語教師のフランソワだったが、様々な出身国を持つ24人の生徒たちが混じり合う新学期の教室で、思いがけない反発や質問に翻弄されてしまう。去年は素直だったクンバは反抗的な態度で教科書の朗読さえ拒否する始末だ。また、自己紹介文を書かせる課題が大きな波紋を巻き起す。...... [続きを読む]

受信: 2011年3月21日 (月) 07時24分

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2011年3月27日(日) 15:05~ キネカ大森2 料金:1000円(Club-C会員料金) パンフレット:未確認 パリ20区、僕たちのクラス [DVD]出版社/メーカー: 紀伊國屋書店メディア: DVD 「パリ20区、僕たちのクラス」公式サイト カンヌ映画祭パルム・ドール作品。 モキュメンタリーな感じで、パリにある問題児の多い学校のフランス語教師と担任しているクラス24人の中学生の中2の1年間を描く。 モキュメンタリーであるし、パルム・ドール採るような映画は感動作というより作家性... [続きを読む]

受信: 2011年3月27日 (日) 21時07分

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パリ20区、僕たちのクラス’08:フランス◆原題:ENTRE LES MURS/THE CLASS◆監督:ローラン・カンテ◆出演:フランソワ・ベゴドー、ナシム・アムラブ、ローラ・バケラー、シェリフ・ブナ ... [続きを読む]

受信: 2011年4月19日 (火) 16時08分

» パリ20区、僕たちのクラス [小部屋日記]
ENTRE LES MURS(2008/フランス)【DVD】 監督・脚本: ローラン・カンテ 出演:フランソワ・ベゴドー/ローラ・バケラー/シェリフ・ブナイジャ・ラシェディ/ジュリエット・デマーユ/ダラー・ドゥコゥール 笑って、怒って、ぶつかって生きる。 教師フランソワと24...... [続きを読む]

受信: 2011年5月 7日 (土) 13時00分

» 喪中映画評「パリ20区、僕たちのクラス」 [プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]]
☆☆☆☆(8点/10点満点中) 2008年フランス映画 監督ローラン・カンテ ネタバレあり [続きを読む]

受信: 2011年5月29日 (日) 13時13分

» 『パリ20区、僕たちのクラス』'08・仏 [虎党 団塊ジュニア の 日常 グルメ 映...]
あらすじ問題ありの生徒たちに囲まれて、この中学校に来て4年目になる国語教師フランソワの新学年が始まった・・・。感想カンヌ国際映画祭パルムドール受賞『チェンジリング』でも... [続きを読む]

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» 『パリ20区、僕たちのクラス』'08・仏 [虎団Jr. 虎ックバック専用機]
『フリーダム・ライターズ』って同じく実話物の映画に、設定は酷似してるんですが全然 [続きを読む]

受信: 2011年6月20日 (月) 09時21分

» 「ミックマック」「パリ20区、僕たちのクラス」仏映画2本立て [国内航空券【チケットカフェ】社長のあれこれ]
ミックマック 「アメリ」「デリカテッセン」のジャン=ピエール・ジュネ監督最新作、「ミックマック」を見ました。 オシャレでおバカでかわいい反戦映画、おもしろすぎてけしからん!って感じです。 ストーリーは、父の命を奪った地雷を作っている軍事会社と、自分の運命を... [続きを読む]

受信: 2011年7月22日 (金) 19時18分

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