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2010年6月27日 (日)

ボローニャの夕暮れ

Photo 第二次世界大戦の開戦前夜から戦中戦後のボローニャを舞台に、とある家族の崩壊と再生を描いたヒューマンドラマ。主演のシルヴィオ・オルランドは本作で第65回ヴェネチア国際映画祭で主演男優賞に輝いている。娘をどうしても愛せない妻にフランチェスカ・ネリ、友人を殺し精神障害を抱える娘をアルバ・ロルヴァケルが演じる。監督はプピ・アヴァティ。
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イタリア庶民の生活感はよく解った

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観終わった直後にイタリアンレストランを探したほどパスタが食べたくなる作品。(笑)いきなり余談ですがユーロスペースの先着順にバリラのスパゲティが配られたのが妙に嬉しかったり。食事にスパゲティを食べるシーンが多いのですが、セピア色の古臭さを感じさせる映像からは、それがどんなソースなのかまではわかりません。やっぱりボローニャが舞台だけにボロネーゼなんでしょうか。事ほど左様に、私がこの作品から感じたのはイタリアの庶民の生活感でした。時は1938年、第二次世界大戦を前にしてムッソリーニのファシスト党が力をもっていたこの時期、しかし庶民には全体主義など殆ど関係なく、決して裕福ではないけれどそれなりに幸せな生活を送っていることが覗えます。

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この物語で描かれる一家も極普通の家庭で、父ミケーレ(シルヴィオ・オルランド)、母デリア(フランチェスカ・ネリ)、娘ジョヴァンナ(アルバ・ロルヴァケル)の3人暮らし。ミケーレは高校教師で、ジョヴァンナは父の勤める高校に通っているのですが、先ず違和感を感じたのは彼ら父娘の関係。まるで恋人同士のように登校する様子は思春期の少女としてはちょっと考えにくい光景なのです。ナレーションでは、引っ込み思案で恋人が出来ない彼女の事をミケーレが気にかけていると語られるものの、それを父の大きな愛と捉えて良いのか、単に父のお節介と捉えて良いのかこの時点では解りません。しかし、物語が進むに連れて、何やらミケーレはある種モンスターペアレントのように見えてきます。

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いや、他者に無理難題を押し付けるわけではないから、究極の親バカあるいは過保護と言ったほうが良いかもしれません。そういう話なの?とちょっと意外かつ期待はずれだったのも束の間、ジョヴァンナが親友の女の子を殺してしまい逮捕されてしまうあたりから、父親の娘に対する無償の愛を見せ付けられることとなるのでした。犯罪者の身内が近隣から白眼視され、ミケーレは当然失職、こうした様子は古今東西同じですね。そしてそれ故に家族が崩壊していくのも同じ。唯一壊れなかったのはミケーレの娘への愛だけで毎日面会に訪れるのでした。娘に会う決心がつかずに、面会を中止してしまうデリア。そんな彼女をみているとまるでジョヴァンナは彼女の娘ではないのではないかと邪推すらしてしまいます。

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結局心神耗弱で精神病院に収容されるジョヴァンナですが、毎日ミケーレが会いに行くたびに狂気が少しずつ彼女を支配していくのですが、この微妙な心の崩壊具合というか、ギリギリの均衡を保ちながらの狂気がクレッシェンドしていく様子はアルバ・ロルヴァケルの見事すぎる演技です。そしてそれ以上に素晴らしいのが、そんな娘を相手にしても終始一貫顔色一つ変えず愛し続けるミケーレを演じるシルヴィオ・オルランド。ただ、私はこの期に及んでもジョヴァンナがこうなってしまった原因が母親にあるとは気付きませんでした。どう考えてもミケーレの娘に対する大きすぎる愛情が、普通のときは異常なまでの過保護になり、それが原因だと思っていたのです。ところが、話はここで急展開。精神科医は母に対する劣等感が彼女の病の原因だと明言してしまうのです。

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しかし残念ながら自分と母親を引き比べて、それでどうして精神を病んでしまうのか…。しかも彼女は病が癒えて退院することになるのだけれど、コレがどう見ても治っているようには見えないのです。もっとも相変わらずミケーレの娘に対する愛情の深さと過保護ぶりは変わっていないのですが。退院から7年後、ミケーレと別れて行方知れずになっていたデリアと再会し、コレで家族3人がまた一緒に生活を始めるのだけども、それをもってこの家族の再生と受け止めるのは早計過ぎるという気もしなくもない。父の深い愛情とジョヴァンナの精神崩壊振りはよく解るのですが、物語全体には何やら説得力を感じることは出来ませんでした。

個人的おススメ度3.0
今日の一言:う~ん、何か気持ちが伝わらない。
総合評価:65点

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『ボローニャの夕暮れ』予告編

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