チョルラの詩
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デビュー作『トロッコ』では台湾を舞台に、家族の絆や日本と台湾の関係を鮮やかに描き出した川口浩史監督。その監督の今度は韓国を舞台にした作品が公開されたということで、今度はどのような世界を見せてくれるのかと期待して鑑賞してきました。結論から言うと『トロッコ』ほど心に響く作品ではなかったかな。もともと私が“詩”と言うものに殆ど興味がなく、何がそんなに良いのやらさっぱり?という感じなので、そもそもこの作品のテーマ自体に向いていなかったのでしょう。ただそれにしてもいくら平日とはいえ19時代の回に観客が私を含めて5人程度とはちょっと寂しい限り…。ちなみに例によって、出演している俳優は誰一人として知りません。

この監督、前作と本作のメインとなるテーマは「家族の絆の物語」であり、「男女3人の恋物語」なわけですが、根底で共通しているのが先の戦争を通じた個人のアイデンティティの問題です。『トロッコ』では日本統治時代に日本語を学び、日本人として戦争に参加までしても、結局は日本人として扱ってもらえなかったことにショックを受けるおじいさんが登場します。本作の主人公・平山幸久は在日韓国人イ・ヒョンス(ソ・ドヨン)という設定。彼は日本の中学校で非常勤の教師をしていますが、学校からは常勤にならないかと勧められています。しかしそれには国籍を日本にしなくてはならない…。悩みを抱えたままヒョンスは祖父の葬儀の為に韓国へと旅立ちます。

結局ヒョンスのこの帰郷は、韓国人としての自分探しの旅という位置づけなのですが、どうも彼の行動とその位置づけの関連性がいま一つ良く解らない。ヒョンスは郷里で従兄のイ・カンス(キム・ミンジュン)と、カンスの幼馴染でソウルから戻ってきていたパク・ソンエ(キム・プルン)に出会い、詩を通じて3人は関係を深めていくのですが、そこでは3人の恋愛感情しか感じられないのです。それもありがちな三角関係。ソンエのことを好きなカンス、しかしソンエはヒョンスが好きで、ヒョンスもそんな彼女を徐々に好きになっていく…。もちろん最初からラブストーリーだと言っているので、それはそれで構わないのですが、物語終盤で急に帰る場所がないと言い始められても…。

もちろん、作品とは別の部分で在日韓国人の方々が日本人でもなく韓国人でもないという微妙な位置づけに置かれているということは知っています。それを考えると、満潮時に村へ続く道が水没してしまう風景は、まるで帰りたくても道が消えてしまっている、即ちヒョンスの帰る場所、いや帰れる場所がないという心情を上手く表していました。同時に、常に水没している=帰れない訳ではないという辺りが、彼の微妙なアイデンティティをも表していたのかもしれません。しかし残念ながら、これは最低限、日本と韓国の間にある歴史的事実を知らなければ、作品そのものだけを観ていても解らないでしょう。にしても、今でも満潮で道が水没してしまうとは、何かあったらどうするんでしょうね…。

最初に書いた通り、出演している俳優は誰も知りません。キム・ミンジュン、ソ・ドヨンは韓流らしいイケメン俳優ですが、この作品で彼らが特別良かったかと言われれば、私には普通としか言いようがありません。同様にキム・プルンも確かに整った顔立ちの美人女優ですが、何かいま一つ輝く個性というかオーラが感じられない…。80年代の韓国では詩人のステータスが高く、誰もが詩に夢中になったらしい。しかし詩に夢中になる若者3人とその恋愛模様を結びつけて観られるだけの素養は私にはありませんでした。バス停で野宿しながら詩でゲームを楽しむソンエとヒョンスを観て、簡単に言ってしまえば「何がそんなに面白いの?」としか思えない私には、どうやらこの作品は敷居が高過ぎたようでした。
個人的おススメ度
2.5
今日の一言:風景だけかな…
総合評価:54点
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