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2010年6月 2日 (水)

あの夏の子供たち

Photo 幸せな家族にある日突然悲劇が訪れる…。自ら命を絶った父の死に直面し、悲しみを乗り越えてゆく家族を描いたヒューマンドラマだ。長編2作目となるミア・ハンセン=ラヴ監督が自分の作品をプロデュースしてくれるはずだったアンベール・バルザンの自殺という実体験をベースに脚本を書いたという。独立系映画製作受難の時代がリアルに描かれているところにも注目だ。
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それでも人は生きてゆく。

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大きな感動が待っているわけではありません。エンディング主題歌に使われているドリス・デイの「ケセラセラ」がこの作品の全てを象徴していました。なるようにしかならない、それでも人は一生懸命生きてゆくしかなく、時は流れていく…。まさにそれをそのまま切り取ったかのような作品です。柔らかな光に包まれるパリ郊外の風景、遠くに凱旋門を臨むパリの街並み、可愛らしい子供たちの満面の笑み。ミア・ハンセン=ラヴ監督の撮る映像は実に私の好みでした。しかしこの感覚はどこかで味わったことがあるような…そう、私の大好きな作品、オリヴィエ・アサイヤス監督の『夏時間の庭』とその空気感が非常に良く似ています。それもそのはずで、ミア・ハンセン=ラヴ監督はなんとアサイヤス監督のパートナー、昨年にはお子さんも産まれたんだとか。

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そもそもこの作品、ミア監督の作品をプロデュースするはずだったが資金繰りに行き詰って自殺したアンベール・バルザンという独立系映画会社のプロデューサーがモデル。私はこのプロデューサーの作品を観たことがありませんが、監督が語るバルザンの印象と、本作の主人公グレゴワール(ルイ=ド・ドゥ・ランクザン)は完全に重なっていました。独立系映画製作会社ムーン・フィルムを経営するプロデューサーという設定だけでなく、「とても面白く、エレガントで、誰に対しても温かみのある魅力的な人物」という人物像が正にその通りに描かれています。日本では特にそうですが、こういった独立系映画はいわゆるハリウッド系作品と異なり、まず広く一般受けはしません。さらに日本でも独立系配給会社の倒産が相次いだように、ムーン・フィルムも多額の負債を抱えて財政は火の車。

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そんな中でも有望な若手新人監督アルチュール(イゴール・ハンセン=ラヴ)の脚本を映画化しようとしたり、ひたすら拘りをもつアート系監督スティーグ・ヤンソンの作品「サトゥルヌス」を何とか完成させようとしたりといった、独立系映画製作会社の舞台裏の苦労が垣間見えるのは映画好きには特に興味深いところでしょう。複数の携帯電話が手放せないほどに多忙なグレゴワールですが、それでも週末は必ずパリの郊外の別荘で家族とともに過ごします。妻・シルヴィア(キアラ・カゼッリ)と3人の娘、クレマンス(アリス・ドゥ・ランクザン)、ヴァランティーヌ(アリス・ゴーティエ)、ビリー(マネル・ドリス)とともに過ごす束の間の休息、作品序盤で描かれるこのシーンは溢れんばかりの愛情に満ち溢れた幸せな一家が描かれていて、観ている私も知らず知らずのうちに笑顔がこぼれてしまうほど。

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特に下の2人、ヴァランティーヌとビリーの愛らしさといったら、天使のようなとはまさに彼女たちのことです。しかし、その時は確実に近づいていました。資金繰りに窮したグレゴワールは結局自らその命を断ってしまいます。それは劇中でシルヴィアも言っているとおり、発作的なものだったとしか思えません。そうでなくてはあれほどまでに素敵な、愛する家族を残して死を選ぶことなど考えられないですから。シルヴィアはムーン・フィルを何とか守ろうとします。会社の財政を圧迫した原因の大きな要因に「サトゥルヌス」があるのですが、いわゆるアーティスト監督の拘りはそのままコスト感覚の欠如に他なりません。これはもはやクリエイティヴな世界の永遠の命題とも言えますが、基本的にアートとコストは相反する要素です。

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私は一映像業界に身をおく者として言うならば、好きなものを好きなように創って良いのは自分で全てを負担した場合のみだと思っています。そこを認識しないクリエイターはクリエイター失格であり、その存在は自らの首を絞めることに他なりません。話がそれました。最愛の夫の死、悲しむ間もなく必死で会社を守ろうとするシルヴィア、そして妹2人の面倒を見ながら、自分も悲しみを乗り越えようとしている長女のクレマンス、しかし一人の男の死で全てが清算されるほど世の中は甘くありません。結局ムーン・フィルムは清算せざるを得なくなります。ついこの間の幸せが嘘のようなこの光景、しかしそんな中でもクレマンスは父が世に送り出そうとした新人監督アルチュールと出会い、そこに仄かな恋心が生まれ、父の死の当日には涙を浮かべていた2人の妹たちは楽しげに玩具で遊ぶ…。

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人間は深い悲しみの最中であっても当然それとは別に日々の生活は続いていく、冗談を言ったり、恋をしたり、美しい星空に感動したり…。父との思い出を胸にパリを去りシルヴィアの実家のあるイタリアへと向かう一家。クレマンスの頬を伝う一筋の涙がとても印象的でした。「あの夏の子供たち」はこのあとどんな人生を歩んでいくのか、きっとそれもケセラセラなのです。

個人的おススメ度4.0
今日の一言:最後にPCにメールが来てたような…?
総合評価:75点

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『あの夏の子供たち』予告編

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» 【フランス映画祭2010】『あの夏の子供たち』... [NiceOne!!]
原題:LEPEREDEMESENFANTS監督・脚本:ミア・ハンセン=ラブ出演:キアラ・カゼッリ、ルイ=ドー・ド・ランクザン、アリス・ド・ランクザン鑑賞劇場 : TOHOシネマズ六本木ヒルズ2009年カ... [続きを読む]

受信: 2010年6月 2日 (水) 18時35分

» あの夏の子供たち [象のロケット]
父は、映画プロデューサーとして精力的に働き、家に帰れば家族を愛する魅力的な人だった。 しかし不況の中、突然自ら命を絶ってしまう。 残されたのは、多額の借金と未完成の映画だけ。 夫の会社と映画を引き継ごうと奔走する母、父の死を受け止め理解しようとする長女、悲しみにくれる次女、死をまだ理解できない末娘…。 残された家族の葛藤を描くヒューマンドラマ。... [続きを読む]

受信: 2010年6月 3日 (木) 13時44分

» あの夏の子供たち [佐藤秀の徒然幻視録]
公式サイト。英題:THE FATHER OF MY CHILDREN ミア・ハンセン=ラブ監督、キアラ・カゼッリ、ルイ=ドー・ド・ランクザン、アリス・ド・ランクザン。2005年に自殺した実在の映画プロデューサー、アンベール・バルザンがモデル。こういう映画を観るのは体調の悪い時は避けた....... [続きを読む]

受信: 2010年6月 3日 (木) 21時14分

» あの夏の子供たち ~フランス映画祭2010より~ [とりあえず、コメントです]
インディーズ系の映画プロデューサーだった男の人生と彼の家族の姿を描いた人間ドラマです。 カンヌ国際映画祭のある視点部門審査員特別賞を受賞したというのでちょっと気になっていました。 映画に人生を賭けた主人公の生き様に深く胸を打たれました。 ... [続きを読む]

受信: 2010年6月 4日 (金) 00時36分

» あの夏の子供たち [Men @ Work]
現在公開中のフランス映画、「あの夏の子供たち」(監督:ミア・ハンセン=ラヴ)です。恵比寿ガーデンシネマで鑑賞しました。 「父の自殺を乗り越える家族の物語」と聞いて、「ちょっと観たい」と思った映画です。でもまぁ、これが渋谷とか新宿まで出なくては観れないのなら、ちょっと迷ったかも知れませんが、家からも職場からも徒歩5分という「ご近所」の映画館、恵比寿ガーデンシネマでやっているのを知り、「じゃあ、行くか」という感じで行ってみた次第です。 がしかし、強烈な眠気に負けてしまい、後半... [続きを読む]

受信: 2010年6月17日 (木) 01時17分

» あの夏の子供たち [シネマ大好き]
映画プロデューサーとして制作会社ムーン・フィルムを率いるグレゴワール・カンヴェル(ルイ=ドー・ランクザン)は、運転中にも携帯電話を離さず、中毒のように仕事に漬かっている。車は免停中だが仕事のためには乗らずにおけない。役者がわがままで困らせている、監督が撮..... [続きを読む]

受信: 2010年6月26日 (土) 13時21分

» あの夏の子供たち(2009) [銅版画制作の日々]
原題:LE PERE DE MES ENFANTS 京都シネマにて鑑賞 家族の姿をシンプルに描いている作品です。劇的なドラマがあるわけでもなく、本当にナチュラルで、、、、。自分がこの家族と付き合いがあって、触れ合っているような感じがします。 ミア・ハンセン=ラヴ監督はまだ20代だそうで、これにはびっくり!そしてとても美しい女性。長編作2作目でいきなり2009年カンヌ国際映画祭《ある視点部門》審査員特別賞に輝いたというのだから、これまた驚きです。 STORY(キネマ旬報さんより拝借) 携... [続きを読む]

受信: 2010年7月 1日 (木) 00時34分

» ケ・セラ・セラ 『あの夏の子供たち』 [映画雑記・COLOR of CINEMA]
『あの夏の子供たち』物語・独立系映画のプロデューサー、グレゴワール(ルイ=ドー・ド・ランクザン)。彼には妻のシルヴィア(キアラ・カゼッリ)と3人の娘たち(クレマンス、ヴァランティーヌ、ビリー)がいて、... [続きを読む]

受信: 2010年7月 3日 (土) 21時03分

» ケ・セラ・セラ 『あの夏の子供たち』 [映画雑記・COLOR of CINEMA]
『あの夏の子供たち』物語・独立系映画のプロデューサー、グレゴワール(ルイ=ドー・ド・ランクザン)。彼には妻のシルヴィア(キアラ・カゼッリ)と3人の娘たち(クレマンス、ヴァランティーヌ、ビリー)がいて、... [続きを読む]

受信: 2010年7月 4日 (日) 01時16分

» 映画「あの夏の子供たち」子供たちはその後何に希望を見出すのか [soramove]
「あの夏の子供たち」★★★ キアラ・カゼッリ、ルイ=ドー・ド・ランクザン、アリス・ド・ランクザン出演 ミア・ハンセン=ラブ監督、96分 、2010年7月10日公開、2009,フランス,クレストインターナショナル (原題:Le Pere de mes enfants )                     →  ★映画のブログ★                      どんなブログが人気なのか知りたい← 「前半とても幸せな家族の何気ない日常を描き、 中盤で父親が事業の失敗で自殺した... [続きを読む]

受信: 2010年7月21日 (水) 22時56分

» あの夏の子供たち [映画的・絵画的・音楽的]
 恵比寿ガーデンシネマで上映されていたときは見逃してしまった『あの夏の子供たち』が、吉祥寺バウスシアターで再度公開されるというので見に行ってきました。 (1)この映画は、ちょうど真ん中あたりで主人公シルヴィアの夫グレゴワールが死んでしまうため、前半と後半に分かれるような印象を受けます。  前半部分では、映画のプロデュース業務を行う会社を経営しているグレゴワールの生活状況が描かれます。  一方では、グレゴワールのワーカホリック的な仕事ぶりが映し出されます。 これまでかなり良心的な作品を手がけてきて... [続きを読む]

受信: 2010年8月14日 (土) 11時11分

» あの夏の子供たち 原題 : Le Pre de mes enfants [備忘フィルモ]
【あの夏の子供たち 原題 : Le Pre de mes enfants】 公式サイト 2009年/フランス 監督・脚本 : ミア・ハンセン=ラブ 出演 : キアラ・カゼッリ、ルイ=ドー・ド・ランクザン、アリ...... [続きを読む]

受信: 2010年11月30日 (火) 08時56分

» あの夏の子供たち [シネマDVD・映画情報館]
あの夏の子供たち 独立系映画のプロデューサーとして精力的に飛び回るグレゴワール。妻のシルヴィアや、クレマンス、ヴァランティーヌ、ビリーの3人の娘たちと過ごす休暇中も携帯電話を手放せないほど多忙だった。ところが、経営する製作会社ムーン・フィルムが多額の負債を抱え、進行中の企画すら完成の目処が立たない苦境に追い込まれたある日、自ら命を絶つ。遺された妻と娘たちは悲しみの中、最愛の父が生きた証を再確認してゆく......... [続きを読む]

受信: 2011年3月19日 (土) 14時46分

» 喪中映画評「あの夏の子供たち」 [プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]]
☆☆☆★(7点/10点満点中) 2009年フランス映画 監督ミア・ハンセン=ラヴ ネタバレあり [続きを読む]

受信: 2011年5月24日 (火) 08時03分

» 『あの夏の子供たち』'09・仏 [虎団Jr. 虎ックバック専用機]
いかにも カンヌいかにも フランス映画もっと読む[E:down] 虎党 団塊ジュ [続きを読む]

受信: 2011年6月12日 (日) 08時42分

» 『あの夏の子供たち』'09・仏 [虎党 団塊ジュニア の 日常 グルメ 映...]
あらすじ映画プロデューサーとして精力的に飛び回るグレゴワールは仕事に情熱を注ぎながらも、家に帰れば妻シルヴィアと3人の娘たちを心から愛する男だったが・・・。感想カンヌ国... [続きを読む]

受信: 2011年6月12日 (日) 08時44分

» あの夏の子供たち [こんな映画見ました〜]
『あの夏の子供たち』---LE PERE DE MES ENFANTS  THE FATHER OF MY CHILDREN---2009年(フランス)監督:ミア・ハンセン=ラヴ出演:キアラ・カゼッリ 、ルイ=ド・ドゥ・ランクザン 、アリス・ドゥ・ランクザン 、映画プロデューサーだった父の突然の自殺に直...... [続きを読む]

受信: 2011年10月 2日 (日) 23時01分

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