殺人犯
|
/
アーロン・クォックが実に上手い!けど… |
あらすじ・作品情報へ
←みなさんの応援クリックに感謝デス

いやはや何なんでしょう、この後味の悪さは。99%救いがないラストで、本音を言えばこの記事を書くために思い出すのもちょっと苦痛なくらい。『チェイサー』のように衝撃に当てられて呆然、というより、もう心がどんどん鬱になっていく感じとでもいうのでしょうか。映画としての質は別にして、大変申し訳ないけれど、タダでももう一度は観たくない作品でした。鑑賞後の電車の中で、誰かと何か別の話をしたくて仕方なかったです。(苦笑)次々と起こる猟奇殺人事、主人公のレン刑事(アーロン・クォック)は親友でもあるクァイ刑事とともにその捜査にあたっています。ところが捜査の過程で何故かレン刑事が犯人であるという証拠がボロボロ出てくる…。え?じゃあ一体犯人は誰なの?っというのが本作の大きな流れです。


予備知識は映画サイトでのあらすじ解説ぐらい。故にオープニングの衝撃カットでいきなり目が点状態です。アパートから落ちてくる人間、飛び散る血飛沫、のっけからビビリまくりですが更にその後…、ネタバレなので書きませんが、もう生理的に受け付けない映像で気持ち悪くて泣きそうなしたよ。こんなシーンが頭からあるなら事前に警告しといてくれよ…と言いたいぐらい。元々グロいホラーが大の苦手ですが、「ソウ」シリーズなどでかなり免疫がついてきたと思っていたのですが、人間は想定の範囲外からの事態にはこんなにももろいものなのですね。血まみれで倒れていたのは、レン刑事の先輩でタイ刑事といいます。タイ刑事の背中には、他の被害者たちと同様にドリルで開けられた穴が何箇所にも残されていました。


どうもこのアパートで2人は会っていたらしい…。しかしレン刑事は別の階の廊下で気を失って倒れていたのを同僚に発見されます。しかも彼は殴り倒された後遺症で直近の記憶を失っている状態。うーん、既にこの段階でまずレン刑事に疑惑の眼差しが…。この後彼は親友のクァン刑事とともに捜査を開始するのですが、これがまた彼が犯人であると思わせるような証拠が出る出る!自宅の倉庫にドリルで穿った穴があいていたり、血のついた手のあとがついていたり、実は被害者とレン刑事が子供の頃友達だったことが解る写真が出てきたり、とどめは倉庫から電動ドリルが無くなっていたり…。ただ、これだけあからさまかつわざとらしいまでに証拠(といっても状況証拠ですが)が出てくると、彼は陥れられたんじゃないの?と勘ぐりたくもなります。


しかし、それをやっぱりレン刑事がやったのかな?と思わせてしまうのがアーロン・クォックの演技力でした。証拠が出るたびに自分自身を疑い、次第に狂気が彼を支配していくのですが、この加減の演じ方が実に良い塩梅なんですね。最初はもちろん「俺じゃない!」だったのが傍目に観ても「俺がやったのか?」に変わっていき、結局また「俺は嵌められたんだ!」に戻るのですが、細かいことはこの後下の方で。とにかく、異常な精神状態でいる割合をラストに向かって徐々に増やしているのがよく解るのです。故に彼の演技だけ見ているとついつい「ひょっとして二重人格?」だとか、「また『シェルター』ネタか?」とか思ってしまうのでした。さて、そうはいいつつもここで冷静に考えてみると、案外オチは想像がついてしまったのでした。


途中何度も「全てはレン刑事の狂気がなせる業」という方向に引き戻されかけましたが、流石に彼の演技だけでそう思い込ませるのには無理があったと思います。この点、もう少し演出でフォローを入れてあげれば、もっと謎は深まったでしょう。しかし!これだけなら別にそこまで後味が悪いことなどないのです。この作品、オチをばらした後もかなり続きます。その部分がもう本当に最悪。要は犯人の方がレン刑事よりも一枚も二枚も上手で、彼の動きは全て見切られていたと言うことなのですが…。この時点で既に彼の精神はほぼ崩壊しているのに、とどめを指して彼を廃人にまで追い込むのです。その手段は書きません。思い出したくもないから…。ロイ・チョウ監督はある意味才能があるのだと思います。次回作はもうちょっと明るいヤツを観たいものです。


(ネタバレ)
ポイントは家の中にあった証拠。外から入れないのであれば家の中にいる人間が関わっていると言うのは自明の理というもの。しかも被害者の背中に着けられたドリルの穴のあとがウサギの絵だった。しかも息子の人形にドリルで穴が開いている理由をレン刑事が問うた時、「パパが開けたんだ。」と答えた事。そしてこれは演出上の失敗だと思うのですが、レン刑事の子供が養子であり、その顔つきがあからさまに変だということ。これらを考えた時に思い浮かんだのが昨年公開された『エスター』でした。エスターはホルモンの異常で33歳でも少女という設定。もし息子も同じ病だったら…そう考えると問題は一つだけになります。即ち、「彼では大人は殺せない。」ということ。ところが、おあつらえ向きというか、割と早いタイミングでレン刑事を付回す浮浪者の存在が浮き上がってきます。最初は彼の幻覚かとも思いましたが、2度目の登場でそうではないことが解り、同時に彼が共犯であるという結論に落ち着きました。
個人的おススメ度2.5
今日の一言:早く忘れたい…
総合評価:53点
↑いつも応援して頂き感謝です!
今後ともポチッとご協力頂けると嬉しいです♪
『殺人犯』予告編
| 固定リンク
最近のコメント