PFFアワード2010準グランプリ獲得!!
くらげくん
当サイトで兼ねてから一押しの若手監督、片岡翔さんの作品『くらげくん』が「PFFアワード2010」応募527作品の応募の中から入選16作品に選ばれました。そこで去る7月17日、親交のある映画ブロガーのみなさんと共に鑑賞ツアーに突撃です。 |
本作がPFFアワード2010で準グランプリを獲得しました!全527作品にも及ぶ応募作の中から選ばれた準グランプリ。短編であることを考えたらグランプリに匹敵するものだと考えます。これにより片岡翔監督はPFFスカラシップへの挑戦権を与えられることになりました。今度は同じく挑戦権を獲得した8人の監督の中からスカラシップを争うことになります。もしスカラシップ獲得となれば晴れてプロデビュー。後一歩のところまで来ました。当ブログは片岡翔監督を心から応援していきます。今後の『くらげくん』上映情報は左サイドバーをご参照下さい。
くらげくんと虎太郎、あなたはどっち? |

PFF(ぴあフィルムフェスティバル)といえば言えば若手映画監督の登竜門。当サイトでも2008年グランプリの市井昌秀監督『無防備』や2007年グランプリの石井裕也監督『川の底からこんにちは』、『君と歩こう』、2006年の企画賞を受賞した内藤隆嗣監督の『不灯港』などを紹介してきたが、そんな期待の若手監督の末席に片岡翔監督も連なるチャンスを得たわけだ。グランプリには長編作品が有利な現実はあるけれど、今回の出品作『くらげくん』は先日行われた那須国際短編映画祭でグランプリを受賞した秀作。個人的には先日SSFFで上映された『Mr.バブルガム』よりこちらの方が好みだったりする。さてこの『くらげくん』、BL的な香りを漂わせつつ、実はどこにでもある無邪気な子供同士の友情物語でもあるというギリギリのライン上の作品だった。


この子達よりももう少し下、小学校低学年ぐらいだと愛情も友情も等しく「好き」と言う言葉で表現できてしまう。しかし個人差はあれど登場してくるくらげくんと虎太郎くんぐらいの年齢から、段々と異性に対する興味が湧いてくるもの。くらげくんの見た目の可愛らしさはとびっきりで、この中性的な魅力から放たれる「好きだよ」という言葉は少女的でもあり少年的でもある。きっと言っている本人もどちらかに偏ってはいないんじゃないかな。つまり成人のゲイが言う愛しているというのとはまた違うはず。人はそのふわふわとした文字通りくらげのような魅力についつい引き込まれるのだと思う。言うほうが中性的なら受けるほうはこれがまたガチ昭和のガキんちょ虎太郎。ステレオタイプな子供像ではあるけれど、虎太郎とくらげくんのコントラストは絶妙だった。


思えば今は虎太郎が減ってどいつもこいつもくらげくんばかりのような気がする。俗に言う草食系というやつ。別にくらげは草食べないけれど…。引越しで虎太郎と離れ離れになってしまうくらげくんが2人で海に遊びに行くシーンでは江ノ電の線路を歩いていく。名作『スタンドバイミー』では死体を見つけるために少年たちは線路を歩いたけれど、彼ら2人が行く先には何が待っているのか。もちろん死体はないけれど、柵も何もなくすぐ横を道路が走っているのに線路を歩いていく2人という不思議な絵は、まず普通は見られないワンシーンだ。そう言えばふと気付いたのだけれど、今まで観た片岡作品は全て単一シチュエーションだったのが、今回初めて絵変わりがする作品だった。これならすぐにでも長編も行けるだろう。


というより、短編が撮れる人間は長編は割と簡単に撮れるから。逆はそうは行かないのだけれど。それにしても毎度のことながら片岡監督のキャラクター作りの上手さには舌を巻くしかない。短編の中で人物描写を深く出来ない以上、シンプルに強く人の心に訴求させなければならないだけに、キャラクターそれぞれが剥き身の状態で差し出されているかのように感じる。もちろんそれが気に入るかどうかは別問題なので、気に入らなければそれはそれで仕方ない。幸い私は今のところ全部気にいっているけれど。あともう一つ感じたのは『ぐるぐるまわる』の不気味な人形だとか、『Mr.バブルガム』のやたら大きいガムだとか、今回の巨大米兵人形だとか、こだわりのガジェットが良くて、これら個人的にはツボだ。それは即ち監督の演出の丁寧さを物語っている。


ちょっとしたいたずら心というか、遊び心というか、監督の作品はホラー系からこの作品、果ては『象煮』のような時代劇までジャンルは幅広いけれど、そういう部分を観るにつけ、同じ監督が作っていて、自分はその作品が好きなのだなと実感できるのが嬉しかったりする。という訳で今のところ脚本的にも映像的にも欠点らしい欠点は見当たらないのだが、もしかしたらそれが片岡監督の弱点かもしれない。つまり、この世界は三振かホームランの方が良い場合もあるから。でもまあ次回は兄弟をテーマにしていよいよ長編に取り掛かるとの事なので、良い点も悪い点もよりはっきりするだろうし、いずれにしたところで、監督が若手の期待の星の一人であることは間違いない。
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