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2010年7月 9日 (金)

ガールフレンド・エクスペリエンス

Photo 『セックスと嘘とビデオテープ』、『トラフィック』、「オーシャンズ」シリーズなど人気作品を多く世に送り出しているスティーヴン・ソダーバーグ監督が、現役ポルノ女優のサーシャ・グレイを主演に据えて低予算で撮影した珍しい作品。ニューヨークの高級エスコート(コールガール)に密着し、恋人やクライアントとの5日間をドキュメンタリー風に綴ったドラマだ。
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赤裸々に綴られた日常

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実に淡々とドキュメンタリータッチに進む物語でした。主人公チェルシーを演じるサーシャ・グレイはアメリカの人気ポルノ女優で、雑誌「ペントハウス」の「ペントハウス・ペット」を獲得したこともあるらしい。実際劇中でも全裸で登場するシーンはあるけれど、それはホンノ僅か。それを期待して観に行くと肩透かしを食らいます。とはいえ下着姿だけでも十分セクシーではあるのですが。この作品はニューヨークのとある高級エスコート嬢、すなわちコールガールの女性にフォーカスし、彼女の一風変わった人生観や日常を包み隠さず描き足したある種の人間ドラマであると言えると思います。てなことを書きつつも、前半は相当タルいんで睡魔との格闘に費やされたのですが。(笑)という訳でこれじゃいかんとばかりに2日連続で観てきました。するとこれが中々に興味深いのです。

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主だった登場人物は3人で主人公チェルシー、そしてその恋人クリス(クリス・サントス)、チェルシーのクライアントで映画脚本化の男。この3人でメインストーリーは回っていくのですが、それにプラスしてチェルシーのクライアント数人を含めた彼女の日常を、彼女の友人やジャーナリストの取材に語る形で物語は綴られていました。特徴的なのがチェルシーを客観的に観ている映像と、彼女が人に語りながら回想する映像とがランダムに映し出される点で、それゆえに時系列は行ったり来たりしてまとまりとしては非常に宜しくないのでした。さらにプラスして恋人クリスが勤務先のジムのお客に誘われラスヴェガスに出かける映像がディフュージョン(白いモヤ)の掛かった映像で随所に挿入されると、観ているほうは自分が今時間軸のどこにいるのかを見失いそうになります。

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さて、メインストーリーをまとめるならば“人格学”の本を自分の人生のバイブルとしているチェルシーが、クライアントの一人、映画脚本家の男に興味を惹かれ彼と週末に旅行にでかけようとすることが原因でクリスと破局するという話。そこに彼女の宣伝をする代わりに美味しい思いをしようとするエスコート嬢批評家で自分のサイトを持っている男や、彼女にインタビューをするジャーナリストが登場してきます。そもそも論として、自分以外の男に体を売る女を恋人に選ぶほうがおかしいという意見もあるでしょうが、経験上好きになったら仕方ないのですね、これが。もどかしい思いを胸のうちにぐっと抑えて、それでも心は自分にあると信じていたクリスに対して、週末に脚本家の男と旅行に行くと言うチェルシーの行為(それもクライアントとは旅行をしないと約束していた)は裏切りと映っても仕方ありません。

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一方のチェルシーは先に書いたとおり“人格学”の本を自分の人生のバイブルにしており、脚本家の男とのフィーリングを確認するために旅行に行くのは、その本の教えに従ったものでした。既にその部分からしてかなり個性的と言わざるを得ませんね。ニューヨークと言う世界一の大都市で一番人気の高級エスコート嬢としてやっていくには、凡百な考え方では無理ということなのかもしれませんが、知的でセルフマネジメントに優れた彼女が相手にしている人が全て同じく知的な男性だとは限らないところに、現実と理想のギャップが垣間見えて面白かったりします。いや、正確に言えば高級エスコート嬢などといえば聞こえは良いですが、悪い言い方をすれば娼婦ですから。本能に根ざした行為がそこに存在する以上、彼女のような存在のほうがむしろ珍しく“非常識”なのかもしれません。

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結局、脚本家の男は旅行の待ち合わせ場所には現れず…。実はこの結末は、当初その話を聞いたクリスがチェルシーに対して断言した通りでした。その時彼女の心に去来したものは何だったのか…。自分の生き方、哲学に従ってはみたものの、それは世間一般的な常識すら読めないものだった、しかし彼女のアイデンティティはそこにある。もしかしたらこれが恋をするということなのかもしれませんね。残念ながら映像の上からは彼女の心の動きはあまり伝わってこず、ただひたすら淡々と彼女を映し出すのみ。他にもある時は、エスコート嬢批評家の男に、ネット上に良い情報を流して欲しければ自分の言うことを聞くようにと、生理的な嫌悪感を抱くような行為をさせられたりもするのでした。とはいえ、そんな嫌な現実、悲しい現実も含めたチェルシーの毎日は過ぎていきます。

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ラストシーン、ユダヤ教徒の男と男の店の奥で行為に及ぶチェルシー。そこでの彼女には今までのスマートなイメージと違って直接的で猥雑的なエロさがありました。まるでこの時はチェルシーとポルノ女優・サーシャが重なっているように見えるのです。それを観ていると“That's my business.”彼女がそんな風に言っているように感じました。同じ高級エスコート嬢をテーマにした『コール・ミー ~ハリウッドと寝た女たち~』なんて作品もありますが、それよりは全然スタイリッシュな映像であり、ニューヨークの街を感じられる作品です。

個人的おススメ度3.0
今日の一言:サーシャって黒木メイサに似てない?
総合評価:63点

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『ガールフレンド・エクスペリエンス』予告編

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