グッドモーニング・プレジデント/굿모닝 프레지던트
3人の韓国大統領をユニークに描いたヒューマンコメディ。庶民派大統領をイ・スンジェ、青年大統領をチャン・ドンゴン、初の女性大統領をコ・ドゥシムがそれぞれ演じている。監督は『ガン&トークス』のチャン・ジン。普段はめったに見ることの出来ない韓国のホワイトハウス・青瓦台が見られる点にも注目だ。 |
もっとコメディで押し通せばいいのに… |
あらすじ・作品情報へ
←みなさんの応援クリックに感謝デス

チャン・ドンゴンの4年ぶりの映画出演と言うことで話題になっていたせいで、てっきり彼が主演だと思って観に行ったのですが少し違っていました。いや確かに主演なのですが、本作の主人公はタイトル通りプレジデント、即ち大統領。従ってチャン・ドンゴンは本作に登場する3人の大統領のうちの1人を演じているだけだったという訳。オムニバス風に3代続く大統領を描いていますが、当然3者はどこかしらで繋がりがあります。ただしストーリー全体は大統領府・青瓦台の料理人チャン・ギス(イ・ムンス)の目から見て綴ったという形式をとっているという、ちょっと一工夫された流れでした。本作の面白い点は、大統領として国家国民をリードするの決断や振る舞いと、一人の人間としての悩みや葛藤を実にユーモラスに表現しているところ。


例えば最初に登場するのはイ・スンジェ扮するキム・ジョンホ大統領。庶民派大統領で売っている彼がロトに当選してしまいます。当選金額は何と244億ウォン(約18億円/2010.7.28)。実は最初に当選した時は全額寄付すると公言してしまっていたのですが、仮にそうでなくとも立場的にここまでの大金をすんなりと受け取るのはどうなのよ…とは当然考えますよね。何が面白いといって、キム大統領があれやこれやひたすら妄想することが全部映像となって観られること。もし変装をして当選金を受け取りに行ったら?そこで列に並ばなかったがために自分の身分がばれたら?悪い方向へ膨らむ妄想は観ていて楽しい楽しい!遂には天使と悪魔ならぬ良心と欲望が当人の姿で具現化してしまうに到っては悪ふざけもちとやり過ぎか?(笑)


次は、お目当てのチャン・ドンゴン扮するチャ・ジウク大統領。残念ながらここが日本人的には非常に不愉快な内容。一方的に日本とアメリカを悪者にして最後には大統領を称えるという展開です。旭日旗を映し出し、日本の自衛隊が韓国領海付近で軍事訓練をして挑発したために北が怒るという話ですが、そりゃ今現在実際にあんたらとアメリカがやってることだろ?と言いたくなったし。要は祖国統一という路線の前には日本、ひいてはそのバックにいるアメリカには屈しないという強力なリーダーシップを表現したいのでしょうけども。国民的なスターのチャン・ドンゴンがそれをすれば、あちらでは大喝采なんでしょうが、大体娯楽映画に独島やら東海やらといった問題になっている事実を持ち出して来るのはそれこそ日本に対する挑発ですし、程度が低いというものです。


挙句の果てに日本大使に向かって「屈辱の歴史はあっても屈辱の政治はしない!!」なんてセリフをさもご大層に言わせるに到っては、国威発揚の反日教育と同じであまりに陳腐過ぎて失笑でした。おまけに、一市民からの訴えでその市民の父親の臓器移植の適合者が大統領しかいないことが判明し、な何と!本当に大統領がドナーになってしまうのです。これはあり得ないし、やってはいけないこと。これが通るなら責任ある地位の人間は全員ドナーにならなくてはまるで立派な人間ではないかのように思われてしまう訳で。美談にするのは間違いですし、そもそもコメディとして描くこと自体が既に相応しいとは思えません。いい加減イラつきも限界かと思われたところで次に登場するのが、韓国初の女性大統領ハン・ギョンジャ(コ・ドゥシム)。


3つ目のエピソードで面白いのは、ファーストレディならぬ、ファーストジェントルマンの存在です。ハン大統領の旦那役チャ・チャンミョンを好演しているのは先日公開された『仁寺洞スキャンダル~神の手を持つ男~』にも登場したイム・ハリョン。元々田舎モノのこのおとっつぁん、青瓦台での暮らしが堅苦しくて仕方がない。早いとこ妻の任期が終わって田舎に引っ込み牛や豚を育てて暮らしたいと、それまでの貯金で農場を買うのです。ところが!これが政治的に大ミステイク。細かくは書きませんが、まるで大統領があらかじめその土地の値段が上がるのを見越した政策を採っているかのような事態に陥ってしまうのでした。そこでこのおとっつぁんが悩みに悩んで出した結論が離婚。家族社会である韓国だって別に離婚ぐらいあるでしょうが、流石にそれが大統領というのはマズイ…。


それにしてもこのおとっつぁんの悲哀ときたら…。でもこれって別に奥さんが大統領でなくともあんまり変わらないよう思うのは私だけ?意外と世の中の一般的な勤め人や商売人のご主人も、家庭という国の中では奥さんが大統領なんじゃないでしょうか。個人的には今までそういうイメージではない韓国でしたが、今は本作の通り女性のほうが強いことも多いのだということなのかと勘ぐってしまったり。(笑)にしてもこの3人の大統領を観ていると、韓国人が大統領に期待する国家の指導者象が浮き彫りになっているようで面白いです。強力なリーダーシップを求められる大統領と、普通の人間としての大統領、この二面性を官邸料理人の目を通して描くというコンセプトは一応成功していますが、返す返すもチャン・ドンゴンのシークエンスだけが残念極まりなかったのでした。
個人的おススメ度3.0
今日の一言:これでも日本向けにカットしたらしい。
総合評価:60点
↑いつも応援して頂き感謝です!
今後ともポチッとご協力頂けると嬉しいです♪
『グッドモーニング・プレジデント』予告編
| 固定リンク
最近のコメント