北京の自転車/十七歳的単車
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| 小さな風景に現実がこもっています |
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新宿のケイズシネマで開催中の「中国映画の全貌 2010」でやっていた本作。チョン・ウソンと共演した『きみに微笑む雨』でその清楚な魅力に惹かれたカオ・ユアンユアンが出演していることと、本作のワン・シャオシュアイ監督が私の大好きなジャ・ジャンクー監督と同じく第6世代の監督だったからという理由での鑑賞です。もう10年前の作品になるけれど急激な経済成長を遂げ始めた中国は北京の活力が溢れ出てくるような作品でした。丁度私が中国に行ったのが15年ほど前になりますから、そこから更に5年が経過した時点での彼の国。実際問題どこがどうではなくやはりあの時実際に現地で感じたエネルギーは今日の中国を予感させるに十分なものだったなと実感しています。さて、物語に登場するのは農村部出身で北京に働きに来ている17歳のグイ(ツイ・リン)と高校生のジェン(リー・ピン)という2人の少年。
自転車宅配の仕事をするグイは毎日必死に働きます。それは彼に支給された自転車の代金が給料から天引きされるシステムだから。つまり一生懸命働いて自転車代を払いきってしまえば、自転車は自分のものになり、その分自分の給料が増える訳です。銀色に輝くピッカピカの高級マウンテンバイク、それは農村出身のグイにとっては都会の象徴であり明るい未来への希望となるものなのでしょう。ところがある日、やっと代金の天引きが終わり自分のものとなった自転車を配達の最中に盗まれてしまいます。必死で探すグイ。やっとの思いで見つけた彼の自転車は自分と同年代の少年が乗っていました。中古自転車屋に売られたその自転車を盗難車とは知らずに購入したのがジェンだった訳です。こうして1台の自転車が同じ世代の少年2人を結びつけることとなります。同年代なのに方や農村出身で働いていて、片方は高校生。

ぱっとみで中国の都市部と農村部の格差を如実にあらわした構図なのですが、そう単純な見た目だけの問題ではないことが本作の上手さです。グイは自転車を盗まれて配達が出来なかったことが原因でクビになりましたが、自転車を見つけてきたら再雇用してやると言われています。一方のジェンも仲間が皆持っている自転車を中々買ってもらえず、家のお金を盗んでまでしてやっと手に入れた自転車だったのです。彼は自転車があることで仲間との絆を保ち、更には彼女(カオ・ユアンユアン)との繋がりも保っていると言う状態。極端に言えばグイは生きるために自転車が必要であり、ジェンは自分と言う人間を確立するために自転車が必要なのです。これは物質的なものと精神的なもののせめぎあいと言っても良いかもしれません。この対比を2人の少年に投影して表現している、まるで現代の資本主義社会の縮図のようにも感じます。

皮肉なのが周囲の人間、例えばグイの働く会社の社長や、ジェンの友達に彼女。彼らは「たかが自転車」という言い方をしています。「たかが自転車、また買えばいいじゃないか」と。しかし彼らにとっては「たかが自転車」ではありません。そこに拘った結果、ジェンの彼女は彼から離れてゆくのでした。結局グイとジェンは交互に自転車を使うようになります。彼女は戻らなくても仲間たちとは以前と変わりない交流が続くのですが、そこでジェンは初めて気付くのでした。「たかが自転車だった…」と。自転車に拘る、即ち自分が自分であるよりどころを自転車などに求めたがために彼女を失い、そして自転車が無い時でも仲間は今まで通り仲間だった…。一方でグイにも事件が。グイの良く立ち寄る雑貨屋、そこから見えるマンションに住む美しい女性、彼女は彼の憧れです。ところがある日実は彼女が自分と同じ農村部出身の使用人だったことが判明します。

それどころか、雇い主の衣装を勝手に着たり化粧品を使ったり、あまつさえそれらを売り払っていたらしい。しかしグイはジェンとは違って、そうしてしまった彼女の気持ちが理解できるようでした。結局は都市部の人間と農村部の人間には埋めようがない大きな価値観の相違があるのです。「人はパンのみに生きるにあらず」はパンがいつでも手に入る人間だから言えることで、パンを手に入れることが第一義の人間には通用しません。グイにとっての自転車はパンそのものだったと言えるのです。ラストのシークエンス、ジェンの嫉妬が原因の行動で胡同(北京の路地裏)じゅうを追いまわされた挙句、その命ともいえる自転車を壊されてしまうグイ。もはや乗れ無くなった自転車を肩に担ぎ、北京の大通りの雑踏を泣きながら歩く彼の姿は、この後10年間に訪れる現在の中国の現実、日本やアメリカどころではない格差社会を見通しているかのようでした。
個人的おススメ度
4.0
今日の一言:私も第6世代です。
総合評価:76点
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『北京の自転車』予告編
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