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2010年8月10日 (火)

シルビアのいる街で/En la ciudad de Sylvia

Photo 6年前に出会った女性シルビアを追い求め、フランスの古都ストラスブールの街を彷徨う男の姿を描いた作品。特筆すべきは光と陰を上手く使った斬新な映像表現と、自然のノイズが織り成す究極のリアリティだ。監督・脚本はスペインの巨匠ビクトル・エリセ監督が一押しするホセ・ルイス・ゲリン。主演はグザヴィエ・ラフィット、共演にピラール・ロペス・デ・アジャラ。
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音の演出が素晴らしい!聴いて感じる映画だ

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いやはや異色の秀作。2008年の東京国際映画祭で『ミツバチのささやき』の名匠ビクトル・エリセ監督が推薦し話題になったそうですが、正直言ってそんなことは全く知りませんでした。単純に主演の男に扮するグザヴィエ・ラフィットと、その彼がストーカーの如く後をつける女性役のピラール・ロペス・デ・アジャラがあまりにイケメン&美人だというところに惹かれてふらっと観に行っただけ。しかも始まった瞬間、ホテルのベッドの上でいつまでたっても動かないその男をみていると、「失敗」の二文字が頭に浮かんできたものの、これが観ていると何ともリアリティに溢れ、男の気持ちに、というより男の体に憑依するかのように同化していく自分がいたのでした。

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いわゆるストーリー性という意味では大きな感情の起伏を伴うような盛り上がりはないのですが、現実に私たちが生きていく中では映画のような展開などそうはないもの。しかしその分、実際に男の目を通して見た光景がそのまま私たちが見る光景であり、男が聴いている音が私たちの聴いている音であるという演出は、ある種のドキュメンタリーであるとも言えるかもしれません。本作はフランスの古都ストラスブールで6年前に別れた女性の面影を追い求める男の姿を3日間に渡って描いた話です。1日目、最初に書いたとおりベッドの上でじっと動かない男、差し込む光が明るく柔らかいのに、彼の表情は一向に冴えない。ちょっと物憂げなハンサムな男はこれは日本の女性好みだと思う…。

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ようやく動き出して通りが映し出されるけれど、これがまたいつまでたっても男が映らない。でもお陰で泊まっているホテルの名前がパトリシアなんていうところまで目が行ってしまった。でも実はそれで良かったらしい…。つまりふと気がつくと私たちが見ているのは、ストラスブールのとある通りそのものだったりする訳。通りがかりの人の話す声、足音、様々な生活ノイズが耳に飛び込んできて、実際にそこに立って男と待ち合わせをしているかのようですらあります。なんなんだろう、この演出の意図するものは?正直最初の段階でのこれは驚きよりも戸惑いが大きいように感じたのでした。カフェに座って、周りにいる女性をじっと観察し、そしてスケッチする彼。

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その姿はシルビアを捜すというよりは、好みの女性に目が行き心の中で「彼女はシルビアだろうか?」と自問自答しているかのようにも見えます。2日目、ここは本作で一番ダイナミックで動きがあるシークエンスでした。デッサンを描いているノートに「DANS LA VILLE DE SYLVIA」(シルビアのいる街で)と書き込む男。このカフェでで彼が目にしたであろう風景、耳にしたであろう雑踏の音が実にいい。そこに息づく人々の何気ない仕草・服装、流れるバイオリンの音色、そして古都の佇まいの中を走る近代的な路面電車。そしてカフェのガラス越しに見つけた一人の美女を彼は追いかけ始めます。彼女はシルビアなのか?彼女の濃い目のブラウンヘアーに瞳、すっと通った鼻筋、そそるような唇、透き通るような白い肌……嗚呼、何と美しいことか!

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しかしこの後の男の行動はいささかヤバイ。これじゃ完全にストーキングだし。後で彼女も言われるのだが、一言「シルビアか?」と聞けば良いのにそうはせず、後ろからこれ見よがしに「シルビア!」などと呼びかけたりする。気持ちは解りますけど。呼んで振り返ったら「ああ、やっぱりシルビア、君だったんだね!」なんて話しかければよいのだから、さも偶然であったかのように。相当に初心なこの男、ある意味日本人の方が彼のメンタリティは理解してあげやすいかもしれないです。もっとも彼女をつけて乗った電車の中ではっきりと彼女に自分はシルビアではないと否定されてしまうのだけれど。このシーン、吊り革を掴む彼女の寄りの映像と、掴まない引きでの彼との2ショットが絵的に繋がらないのがちょっと残念。引きでも彼女は掴んでないと。

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人違いだったことが解り「最低だ」と落ち込む彼はそれはもうくどいほどの落ち込みよう。彼女がシルビアではなかったからというよりも、思い切って声をかけた結果がこれだったという意味で、その気持ちは理解できなくはない。そして3日目。実はこの日は1日目の繰り返しなのだと思う。というより、最初に書いた通り現実にはそんな劇的なことは起こらないものですから。シルビアが本当にいるのか、そして彼がどのぐらいの間この街でシルビアを捜し続けたのか、それは一切解りません。街行く人々の声、近づき遠ざかる靴音、転がる缶の音…街は何一つ変わることなくそこに在り続ける。しかし今日もまた彼はこの街の何処かで多くの街行く女性を観察し「今度こそシルビアじゃないか?」と自問自答し続けるのでしょう。

個人的おススメ度4.0
今日の一言:ピラールは『アラトリステ』に出てるらしいけど…
総合評価:82点

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『シルビアのいる街で』予告編

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