アイスバーグ!
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いきなり登場するのがイヌイットの女性で、イヌクティトゥット語(造語)でカメラに向かって話し始めるという、何やら観るものの虚を突くような始まり方が斬新です。何でも彼女の夫と知り合った原因について語ってくれるらしい。しかしあまりに唐突に舞台が何処かの町に飛んでしまうため、一体どういうことなのかと目が白黒。ま、結論からすると最後には全部納得できるのだけれども、何やらやけに現実臭いこのイヌイット女性と、これから始まる物語の非現実性が繋がってきてしまうと言うこと自体が実にユニークな作品なのでした。飛んだ先は何故かバーガーショップ。別にそれも何の説明も無いのだけれど、お店の横に大きくハンバーガーの絵が書いてあるからそうなんだろう。


それに限らず本作はまるでサイレント映画かと思わせる程に台詞のない作品で、全てを言葉ではなく目に見える形で語ろうとする辺りが流石は道化師夫婦が自ら監督出演している作品だなあと。台詞がなくても登場人物の大げさでコミカルな動きは見ているだけでニヤニヤと頬が緩んでしまう。ともあれお店に残って最後の掃除をしていたフィオナ(フィオナ・ゴードン)はうっかり店の冷凍庫に閉じ込められてしまいます。内側から開かない冷凍庫ってのもどうかとは思うけれど、そんな現実的な事を考える暇も無いほどにフィオナの大げさな動きが観ていて楽しい。一方でフィオナの旦那ジュリアン(ドミニク・アベル)と子供たちは、彼女が帰ってこなくても普通に寝て、普通に朝食を食べている…。


台詞の説明がないので、「あ、帰りは遅いってことになってるのかな。」「朝はいつも先に食べててってことになってるのかな。」とか色んな想像が働くのだけれども、何のことはない、フィオナが戻ってないことに気づいてなかっただけらしい。(笑)それにしても想像力を働かせながら映画を観る作業がこんなに楽しいとは思わなかったです。というか、通常は想像力を働かせようにも、物語はどんどん進んでしまいますが、本作の場合は割とゆったりした流れのせいで、落ち着いて考える余裕があります。さて、翌朝冷凍庫から助け出されたフィオナですが、何故か唐突に氷への憧れを抱くように。「何で?」まあ何でもいいのかも。それこそ理由は語られませんから想像するのがこの作品の正しい見方でしょう。


紆余曲折を経てフィオナはとある海辺の町に流れ着きます。何故かフィオナを家に住まわせるおばあさん、町の人たちも彼女にとっても親切。何度も言いますが、現実的じゃないのです。でもその非現実的な中で描かれる人物たちの奇妙な行動や極僅かな台詞が実に面白い。そんな町の人たちの中で彼女を氷山(アイスバーグ)に連れて行ってくれるのが、寡黙な船長ルネ(フィリップ・マルツ)。彼の小さな船の名前が「タイタニック号」って、それじゃもう先が見えてるジャン!と恐らく観客全員が突っ込んだと思われます。(笑)出航する2人とそれを追いかけるジュリアンの様子がここから描かれますが、結構悲惨な状況に陥るジュリアンが、コントの如く復活してはフィオナに迫ろうとする様は愛情の強さの分だけ余計に滑稽に映りました。


コントといえば、嵐の中船を操るフィオナの背景や、船の中から見る窓の景色はあからさまに合成なのがバレバレ、しかも振付ける雨や波もいかにも手作り感がありありなのは往年のドリフターズのコントを思い出しました。結局、体を張ったコメディにはアナログ的な曖昧さが良く合うのだということなんでしょうね。真剣に大げさな演技をしつつ、その背景が良い意味でいい加減だとそれだけで笑っちゃいますし。さて、当然ながらクライマックス?では船に氷山が。フィオナは念願がかなったわけですが、当然感動の渦…ではなくオチはキッチリと笑わせてくれます。そう、最初に登場したイヌイットの女性とその隣に立っているご主人は……。初めて見るタイプのコメディ映画でしたが、とても気に入った一作です。
個人的おススメ度3.5
今日の一言:そして『ルンバ!』に続く!
総合評価:72点
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『アイスバーグ!』予告編
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