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2010年8月17日 (火)

小さな村の小さなダンサー

Photo 文化大革命中に米国へと亡命した実在の名バレーダンサー、リー・ツンシンの自伝『毛沢東のバレエダンサー』を映画化。中国の貧しい農村出身の少年がその才能を開花させていく過程を描いている。主演のリー・ツンシン役にバーミンガム・ロイヤル・バレエのプリンシパル、チー・ツァオを起用。他にも『四川のうた』のジョアン・チェン、カイル・マクラクランらが出演している。
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バレエものが好きな人には特におススメ。バレエに興味がない人にとっても、近代中国史の中でも暗黒の時代である文化大革命期の中国の様子が良く解るという意味で有意義な作品です。元々は米国に亡命した実在の名バレエダンサー、リー・ツンシンの自伝を映画化したもの。それだけに、特に少年期の生活の様子は、当時バリバリの共産主義を喧伝していた中国の実態を伺い知れることができて興味深いです。さて、物語自体はリーがアメリカに到着したところからスタート。前半はアメリカでの生活を短く挟みながら、突然北京舞踏学校の研修生の選抜試験を受けさせられ、長じて米国短期留学をすることになるまでを描いています。そして後半は米国での成功とダンサー・エリザベスとの恋愛・結婚、米国への亡命を経て更なる大成功を納めていく様子が描かれていました。

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前半で特に印象深かったのは、やはり文化大革命真っ只中でのバレエと国家の関係です。そもそも本作の原題は『Mao's Last Dancer』、直訳したら「毛沢東の最後のダンサー」という意味。元々子供の頃は毛沢東の親衛隊と言われる紅衛兵になるのが夢だったリーは、紅衛兵の変わりにバレエで中国の国威発揚の役割を果たすために北京舞踏学校入学のための選抜試験に抜擢されます。彼が15歳の時に毛沢東は亡くなりますが、恐らく原題の意味するところは、彼が最後の毛沢東世代に属しているからということでしょう。それにしても、共産党の役人が教室に入ってくるなり、教師がまずは東方紅を生徒に歌わせるあたりがもうリアル過ぎ。映像自体も弱冠ボケているような、昔のフィルムを思わせる趣があって、まるで記録映像を見ているのではないかと錯覚すらしてしまいそうです。

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北京舞踏学校ではリーは劣等生でしたが、そんなリーを励ましたのがチェン先生。本当に芸術としてのバレエを愛し、早くからリーの才能を見抜いて可愛がった恩師です。江青の前で舞台を披露するリーたち、素晴らしい出来だったにも関わらず難しい顔をして言った言葉が「何故銃がでないのだ?」。即ち毛沢東の革命を讃える演目でなかったのが気に入らないのですね。「芸術は政治の道具ではない」などと正面切っては言える訳はありませんが、演目に政治性を含めることにやんわりと反対するチェン先生が反革命分子として目を付けられてしまうのがこの時代の中国。結果として出来上がった新しい演目は、これがもうモロに共産党万歳な演出であり、今の私からみても「もはやこれはバレエじゃない。」という代物でした。もっともバレエを意識しなければある意味滑稽で面白いともいえますが。

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文革が終了し、改革解放路線のもとでヒューストン・バレエ団が北京舞踏学校に招かれますが、ここでバレエ団の芸術監督を務めるベン(ブルース・グリーンウッド)に見出されることでリーは三ヶ月かんの米国留学へと旅立つことになります。ここからが後半。後半でまず面白かったのは、なんといっても抑圧された社会(本人は決してそうは思ってないが)に生きて来たリーが、自由の象徴である米国文化に触れて感化されていくところです。頑なに自己抑制を働かせようとするリーの心をほぐしたのは、同じバレエダンサーのエリザベス(アマンダ・シュル)でした。重要なのは芸術に必要なのは“自由”であると言うことにリーが気がつくと言うこと。彼の中のバレエに対する既存の価値観が音を立てて崩れて行きますが、それはむしろ彼に新たな成長をもたらします。

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プリンシパルの代役で舞台を務め大成功を収めたリーは一躍スターに名を連ねることになりますが、こうなってしまったらもう今更抑圧された世界に戻ることなどできる訳がありませんよね。エリザベスと結婚し市民権を得て米国に残ろうとするリー。実は鑑賞前から彼が米国に亡命したことは知っていましたが、しかしながら、在ヒューストン中国総領事館人質事件、簡単に言ってしまえば国際問題にまで発展してしまうとは思いもよらず。中国との摩擦を避けたいベンはリーに帰国するように言い、しかしエリザベスを始めリーの友人は残りたいなら残るべきだと言う。アメリカ人同士でもそれぞれの思惑が交錯するのに、そこに中国政府の思惑やが絡んでくるからややこしい。結果的にはもちろん亡命は成功しますが、代償として二度と帰国が出来なくなってしまいます。

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バレエダンサーとしての彼の大成功はこの時点で約束されたようなものですが、同時に軽々と宙を舞う彼の足に目に見えない重い足枷がはめられてしまったのでした。しかし皮肉にも彼が活躍すればするほど、中国政府にとっては好都合。彼が大きな代償を支払って手に入れた“自由に表現できるバレエ”によって、彼は自身が望むと望まざるとに関わらず“毛沢東の最後のダンサー”になっていたと言えるかもしれません。もっとも結果的にこの大活躍によって、両親との再会や故郷に錦を飾ることが出来るようになるのですから、「人間万事塞翁が馬」とは良く言ったものです。リー役を務めた英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団のプリンシパルであるツァオ・チーのダンスはとにかく素晴らしいの一言!それだけに彼が踊るのをもっと長く見ていたいと思ってしまうのは贅沢?。

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きっと監督も出来るだけ長く見せようとして、バッサリとカットできなかったのでしょう。そのために、バレエシーンの時間の経過が変に短く感じてしまいました。そこの演出がちょっと惜しいところですが、中国の近代史的な面とバレエの面の両面共に面白いと感じられた作品です。

個人的おススメ度4.5
今日の一言:カイル・マクラクランを観たのは超久しぶり!
総合評価:86点

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『小さな村の小さなダンサー』予告編

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受信: 2010年8月17日 (火) 17時15分

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1961年、中国山東省の小さな村の11歳の少年リー・ツンシンは、親元を離れ北京の舞踊学校に入学する。 毛沢東夫人で元女優の江青は、各地から選んだ少年少女に、文化政策としてバレエの英才教育を施していたのだ。 厳しいレッスンから落ちこぼれてしまったリーは、ある日、古典バレエのテープを見て感動するのだが…。 実在のバレエ・ダンサーの物語。... [続きを読む]

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» 小さな村の小さなダンサー(2009)♪MAOS LAST DANCER [銅版画制作の日々]
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オーストラリアでベストセラーとなった、リー・ツンシンの自伝を映画化した感動作。中国の貧しい村出身の少年が幼くして両親と別れ、バレエダンサーとしての才能を開花させる過程をドラマチックに描く。本作の主演を務めるのは、バーミンガム・ロイヤル・バレエのプリンシ...... [続きを読む]

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