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2010年8月 5日 (木)

トルソ

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『歩いても 歩いても』の撮影を担当した山崎裕の初監督作品。男性の胴体部分だけの人形・トルソを愛する独身女性と、奔放に生きる妹という対照的な女性像を繊細に描いた人間ドラマだ。出演は『殯(もがり)の森』『愛の予感』などの渡辺真起子と『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』などの安藤サクラ。徹底的にディテールに拘った映像表現が生むリアリティに驚く。
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トルソに癒されトルソを殺す

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実に生々しい生身の女性を感じる作品でした。監督が『歩いても 歩いても』などを担当した名カメラマン・山崎裕氏だけあって、かなりディティールに拘って撮影をしたそうですが、映像を通じてもたらされる細かい生活感や人間像のリアルさは、男として何だか覗いてはいけないものを見ているような感覚にすらさせます。登場するのはヒロコ(渡辺真起子)とミナ(安藤サクラ)と“トルソ”。このトルソとは本来は男女の胴体部分だけの彫像でデッサンなどに使用されるものなのだけれど、本作で登場するトルソは簡単に言えば男性でいうところのダッチワイフに近い存在です。ただ、一般的にダッチワイフが男性にとって性的な欲求を解放するものであるのに対して、ヒロコにとってのトルソはちょっと違いました。

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彼女にとってのトルソは誰気兼ねなく自分を解放できる存在であり、性的なものも含めた言わば恋人のような存在なのです。彼女のトルソは彫像ではなくゴム製で、そこに息を吹き込むシーンはまるで是枝裕和監督の『空気人形』を思わせるものでした。あの中で板尾創路扮する秀雄はダッチワイフに名前をつけて単なる性具以上の存在として、文字通り共同生活を送っています。もっともさすがに男の秀雄ほどの変態性をヒロコに感じることはありませんが…。今時のOLというよりは結構マメで家庭的な彼女は、毎日自炊をし、ちょっとしゃれた料理を作り、ベランダで香草を育て、冷蔵庫にはペットボトルではなく自分で作った麦茶が冷えている…。要は生活そのものを自分の世界の中で完結させていると言えるのです。

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だからこそトルソを相手にセックスもするし、トルソと一緒に海で遊んだりもする。傍から見たら裸でトルソを抱えて海ではしゃいでいるヒロコはどう考えたってオカシイ人なのですけども、彼女の中では自己完結しているのだから仕方ない。結局感じたのは、その気持ちが外に向かう一般人と内に向かうヒロコの間にどれほどの違いもないのではないかということでした。そんなヒロコのところに妹のミナが転がり込んできます。どうやら彼氏のジロウに女が出来たらしい。自分だけで完結している世界に例え妹といえども入り込まれるのは好ましいことではないのは良く解ります。もっといえば恋人トルソと好きな時に自由にお付き合いできなくなってしまう…。

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そうは言っても、もちろんそんなことをミナに言う訳にはいきません。渋々ながらも共同生活が始まります。しかし良く解らなかったのがミナが一体ヒロコにとってどういう存在なのかということ。もちろん妹なのですが、ヒロコの実父は母と彼女を残して失踪し、亡くなった今の父との間に出来た子がミナ、つまり彼女は種違いの妹でした。更にミナの彼氏のジロウは元々ヒロコの彼氏だった…。その辺の人間関係に関しては詳細は描かれていませんが、一つ明らかなのはミナがジロウの子を妊娠させられたという事。ミナは「お姉ちゃんがあんな男を紹介したからだ!」とヒロコを責めますが、そりゃどう考えたってお門違いというものですよね。

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ところが実家に帰省したシーンで思わぬ事実が発覚します。ヒロコはミナの実父から性的虐待を受けていたのでした。ミナがヒロコの元彼に妊娠させられたことを考えると何やら作為的とは言わないまでも、運命の皮肉を感じざるをえません。「あったことをなかったことにして生きるって、結構つらいもんだよ…」ぼそっとつぶやく彼女の言葉、人と関係を保って生きることは即ち大なり小なり傷つくことです。人はそれに気付かない、或いは気付いても自然に癒しながら毎日を生きてゆきます。しかし未だに癒しきれない傷を抱えている彼女が悩んだ挙句に出した結論が、自分の世界で全てを完結させることだったのではないか、そんな気がします。

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ミナは自分の夢を諦めても子供を産み育てる決意をしました。彼女なりに出した結論で彼女は自分の傷を癒そうとしているのです。その決意に圧倒されるヒロコ。ラストシークエンス、トルソの胸に付いたナイフの傷跡は二度と癒されることはありませんが、ヒロコの心の傷跡はどうにか癒されつつあるようです。もしかしたらトルソは過去の殻に閉じこもった自分の象徴であり、彼女はそれを殺すことで文字通り殻を破ったのかもしれません。いずれにしても化粧をして合コンに望む彼女の姿には、活き活きとした女性力を感じました。

個人的おススメ度4.0
今日の一言:渡辺さんのバストが綺麗だった…
総合評価:77点

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『トルソ』予告編

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» *『トルソ』* ※ネタバレ有 [〜青いそよ風が吹く街角〜]
2009年:日本映画、山崎裕監督、渡辺真起子、安藤サクラ、蒼井そら、ARATA、石橋蓮司、山口美也子出演。 ≪【大阪アジアン映画祭2010】にて鑑賞、上映前に山崎裕監督の舞台挨拶、上映後に観客とのQ&A、サイン会≫... [続きを読む]

受信: 2010年8月 5日 (木) 18時47分

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