象のなみだ
『お姉ちゃん、弟といく』、『ユリ子のアロマ』と注目作を発表し続ける吉田浩太監督の自主制作映画。妊娠を突きつけられた男の同様を、自らの実体験を元に描いたモキュメンタリーだ。恐ろしいまでにリアルなシチュエーションと感情表現に思わず目が釘付けになる。主演は『ほんとうにあった怖い話 怨霊 劇場版 』の近藤綾乃と伊藤寛。 |
何と生々しくリアルな男と女だろう |
あらすじ・作品情報へ
←みなさんの応援クリックに感謝デス
僅か20分の短編にこれほどまでの感情のうねりを詰め込むとは恐るべし。本作は『お姉ちゃん、弟といく』、『ユリ子のアロマ』で倒錯的な性を描いた吉田監督の自主制作映画。オープニングの激しいSEXシーンは寸止めエッチの異名を取る同監督の面目躍如ではあるが、非常に艶かしくリアル過ぎるほどだ。むしろ俳優2人がよくココまでやってくれたと感心する程。描かれているのは極ありふれたカップルなのだが、ラブホテルを出て動物園に遊びに行くとそこで女は男に「妊娠したかもしれない…」と告白する。これはもう男にとっては驚天動地の出来事なのだ。そこから先の2人はややオーバーアクションながら、その大混乱振りが物凄く良く解る。
そもそも本作が吉田浩太監督自らの実体験に基づく作品でだからと言ってしまえばそれまでだけれど、撮り方にも工夫が見られて面白い。最初のうちは普通に男女の様子を撮影しているだけなのだが、途中動物園のトイレで妊娠検査薬を試すために2人して駆け込むところで、女の方がまるで芸能人のようにカメラのレンズに手をやり「これ以上は撮らないで!」の意思表示をするのだ。そこで我々はこの作品がモキュメンタリーだと気付く。大騒ぎの個室の外で「何事?」と首をかしげるオバチャンが面白い。「でも子供は欲しいな。」「そんな簡単なことじゃないんだよ?」「お前の気持ちはどうなんだよ!」、ボロボロ泣きながら語り合う2人の心情は余りに直球でそれだけに心に響く。
「象のなみだ」のタイトルの由来は作中で明かされ、それがエンディングへの上手い伏線になっている。恐らく妊娠検査の結果は陰性ではないかと想像するのだが、子供を産む決意をして笑顔を浮かべるも、それに気付いていない女の顔と現実のギャップがまたブラックでシュールだ。
個人的おススメ度4.0
今日の一言:吉田監督のエロが実に好み…
総合評価:75点
| 固定リンク
最近のコメント