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2010年8月 2日 (月)

フェアウェル さらば、哀しみのスパイ

Photo 20世紀最大級といわれるスパイ事件“フェアウェル事件”の映画化。国家のために西側に機密情報を流したKGB大佐と、一民間人でありながらそれを受け取るフランス人技師の葛藤を描いた人間ドラマだ。主演は『ウェディング・ベルを鳴らせ!』など世界的な監督として知られるエミール・クストリッツァ、共演にギョーム・カネ。監督は『戦場のアリア』のクリスチャン・カリオン。
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大佐の願いは実ったのか?

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昨日に続いてのスパイモノ。しかし本作は実際にあった“フェアウェル事件”の映画化です。おりしもロシアのアンナ・チャップマン事件が起きた後だけに実にタイムリーと言えるかもしれません。『ソルト』と同じくCIAとKGBが登場するものの、エンタテインメントとしてのアクションムービーと、実話としてのヒューマンドラマとの差には非常に興味深いものがありました。この事件に関して私は全く知らなかったのですが、ソ連を崩壊させ東西冷戦を終わらせたと言われるほどに大きなスパイ事件だったのだとか。舞台は1981年、ブレジネフ政権下のソビエト連邦。町の様子が今観るのとそう大きな差を感じさせないのは気のせいでしょうか…。主人公は西側諸国との発展の差に危惧を抱き、息子の将来のために国家機密を西側に流すことを決めたKGBのグレゴリエフ大佐。

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西側が彼に就けたコードネームがタイトルにもなっている「フェアウェル」で“さらば”と言う意味です。この役を役者としてよりもカンヌでパルム・ドールを2回も獲得しているエミール・クストリッツァ監督が演じているのがミソというか、ある意味象徴的に感じました。そもそも監督は旧ユーゴスラビアのサラエボ出身。ソ連の崩壊を受ける形で監督のお国ユーゴスラビアもいくつかの国に分離独立し、今では消滅してしまっているのですから。さて面白いのはその国家機密を受け取る側が、フランス人技師のピエール(ビョーム・カネ)というど素人だということ。もっともあまりにど素人過ぎて当局の監視網から外れていたがために、この作戦は成功したといわれています。

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実際最初は相手がど素人であることに怒った大佐でしたが次第に意気投合。ピエールに教えた、車で外出する時につく尾行をつかないようにさせる方法、曰く「監視していても大抵は何もない。だから尾行につく者は退屈で不満をためていることが多い。そんな彼らに贈り物をして優しくすれば自然と監視は緩む。」これなどは聞いていて正に納得、ベテランスパイの知恵を聞かせてもらったようでユニークです。こうして2人の情報のやり取りが始まるのですが、その受け渡しの仕方も「ゴルゴ13」あたりで良く見かけるような極オーソドックスなもので、その辺が時代と共にリアリティを感じさせます。後々CIAの小型カメラなんかも登場しますが、今ではデジカメでチップ一枚の受け渡しですよね。

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それにしてもスペースシャトルの設計図やフランスの原潜の航路図、エアフォースワンの設計図にホワイトハウスの暗証番号まで丸裸だったとは驚き。これじゃダダ漏れじゃないですか。個人的には「スペースシャトルが大気圏再突入に耐えられない」なんて内容は、実際にコロンビア号の事故が起こっているだけに余計そう感じます。大佐は最初に書いたとおり愛国者ゆえに国家機密を流すという“哀しみのスパイ”。ですから亡命も希望しなければ、報酬もソニーのウォークマンだとか、ロックバンド“クイーン”のカセットテープだとか、フランス語の詩集といったありふれたモノだけ。しかしウォークマンは日本の、クイーンは英国の、そして詩集はフランスのといった豊かな西側の象徴に他なりません。

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最初のうちは順調だったものの、ピエールの妻に事が露見したことから状況は変わって行きます。スパイにとして常に危険と隣り合わせの生活というストレスに耐えられなかったのでしょう。かくしてピエールは次の情報を最後にスパイをやめることを大佐に伝えます。そしてそんな大佐の下には「X部隊」に関する情報が…。それは西側諸国に潜む大物スパイたちのリストであり、それを流した大佐は当局に拘束されることになるのでした。ピエールたちは日頃から親しくしているKGB職員の情報で国外脱出を試みますが、このシークエンスはかなり心臓がドキドキ。何しろ妻と子供2人も含めた一家全員ですし、ギリギリのタイミングがもたらす緊張感はたまりません。

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派手な立ち回りなど一切ありませんし、全編を通して実に地味な作品。しかし、大佐、ピエールの人間性、それぞれの家族への想いはしっかりと描かれています。CIA長官役を務めるウィレム・デフォーがその全貌を明らかにするラストは、米ソ冷戦時代の一筋縄ではいかない諜報戦の裏側を垣間見ることが出来るのと同時に、それに翻弄される人間、所詮コマとしか扱われていない人間の悲哀が伝わってくるのでした。

個人的おススメ度3.5
今日の一言:クストリッツァ監督はまりすぎ…
総合評価:72点

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『フェアウェル さらば、哀しみのスパイ』予告編

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受信: 2010年8月 3日 (火) 05時31分

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受信: 2010年8月23日 (月) 13時46分

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受信: 2010年8月28日 (土) 06時44分

» フェアウェル さらば、哀しみのスパイ [とりあえず、コメントです]
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受信: 2010年9月 2日 (木) 21時47分

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受信: 2010年9月14日 (火) 20時56分

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2010年9月26日(日) 14:10~ キネカ大森3 料金:1000円(Club-C会員料金) パンフレット:未確認 『フェアウェル さらば、哀しみのスパイ』公式サイト 1981年、KGBの大佐が、ソ連を変革させるために、KGBの極秘情報を西側に流しまくる。 それを受け取るのは、民間企業の実はスパイの上司から命を受けた素人の技術者。 実話ベースであり、レーガン、ミッテラン、ゴルバチョフといった面々も登場。サッチャーとブレジネフは名前だけ。 タイトルから熱い友情物か?と勘違いしてしまいそうだが... [続きを読む]

受信: 2010年9月27日 (月) 17時46分

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受信: 2011年3月 3日 (木) 09時56分

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☆☆☆(6点/10点満点中) 2009年フランス映画 監督クリスチャン・カリオン ネタバレあり [続きを読む]

受信: 2011年6月18日 (土) 08時57分

» フェアウェル さらば、哀しみのスパイ [RE940の自作DVDラベル]
2009年 フランス 114分 監督:クリスチャン・カリオン 出演:エミール・クストリッツァ ギョーム・カネ アレクサンドラ・マリア・ララ インゲボルガ・ダプコウナイテ フィリップ・マニャン 東西冷戦末期の1980年代、経済的発展において西側諸国に大きく水をあけられながら、なお閉鎖的な体制を敷く祖国ソ連の現状に絶望したKGBの大物幹部。彼は、息子たちには新鮮で自由な空気を吸わせてやりたいと、国家機密をあえて西側に漏洩することを決意。この彼の行動が遂には1991年...... [続きを読む]

受信: 2011年6月29日 (水) 21時34分

» フェアウェル さらば、哀しみのスパイ [こんな映画見ました〜]
『フェアウェル さらば、哀しみのスパイ』---LAFFAIRE FAREWELL  FAREWELL---2009年(フランス)監督:クリスチャン・カリオン 出演:エミール・クストリッツァ、ギョーム・カネ、アレクサンドラ・マリア・ララ、インゲボルガ・ダプコウナイテ、ウィレム...... [続きを読む]

受信: 2011年10月 8日 (土) 23時26分

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