ようこそ、アムステルダム国立美術館へ/Het nieuwe Rijksmuseum
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ホント、何時になったらオープンするの? |
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当初は2004年にスタートし、2008年には再オープンするはずだったアムステルダム国立美術館の改築工事。なんと2010年8月現在では工事が中断しています。かろうじて本館隣のフィリップス棟で400点程を公開しているそうですが、一体どうしてこんなことになってしまったのか。本作はその理由のいくつかをカメラで切り取って見せてくれるドキュメンタリーフィルムです。もっとも、逆に言えばここまで長引かなかったら商用映画としては成立しないのではないか。だとすれば撮影していたウケ・ホーヘンダイク監督の先見の明?は大したものだなどと思っていたのですが、実は元々は改築工事の記録を依頼されていたのだそうで。監督にとってはラッキーなのかアンラッキーなのか。


そもそもこの美術館の大本にあたるものは1800年にできており、1885年に現在の場所に移ってきた際にピエール・カスパースという建築家によって建てられたもの。本館を貫く形で通路が走り、そこをアムステルダム市民は自由に行き来出来るという作りになっていたのでした。で、そこがまず問題になります。今回の設計を担当するクルスとオルティスは、そこも十分に考慮した上で、カスパース当時では技術的に不可能であったデザイン設計を提出します。門外漢の私からすると、用件は十分に満たしているように見えるのですが、これに噛み付いたのがサイクリスト協会。このあたり日本人にはちょっとピンときませんが、オランダは国民一人当たりの自転車保有台数が世界一という自転車大国なんですね。


簡単に言えば「自転車の通路がこんなに狭くちゃヤダ!」ってな訳です。住民集会の席ではご老人が「美術館は豪華な通路を観に行くんじゃなく絵をみにいくもんだ!」などと改築工事そのものを批判したりしていましたが、ある意味で芸術がしっかりと根付いたお国柄なのだと感心させられもします。ですが、皮肉にも建築家の2人はスペイン人。(苦笑)それはともかく彼らにしたら、一番工夫が必要で配慮をしなくてはいけない部分に、斬新かつ機能性にも富んだデザインを採用したことでコンペを勝ち抜いたのに、その部分を真っ向否定されてしまうのは不本意極まりありません。「それなら最初から私たちを選ばなければ良かったのだ」というのは、まさに本音でしょう。


更に、役所に対する申請の漏れや、研究センタービルが美術館の外観にそぐわないだとか、とにかく後から問題が出るわ出るわ。ただこうして着工が出来ない間も学芸員たちはオープンに向けて着々と準備を進めており、カメラはその様子にも密着しています。新しい部屋のどこに何を飾るのか、倉庫に保管されている膨大な量の絵画の中から選抜するシーンは、普段部外者は立ち入れない場所の保管風景を観ることができます。そもそも、“絵画史的に無価値”だと言われる絵も所蔵してたりすることがちょっと意外だったりしましたが。更に今回新設されるアジア館の目玉とも言うべき「金剛力士像」。これの買い付けに館長が来日して交渉するしシーンなども織り込まれていました。


この交渉自体も2年ほどかかったらしく、改めて「金剛力士像」が美術館に到着した時の堪能学芸員の感動の表情が実に印象的。もっとも、モノにもよるのでしょうがこういった像が海外に流出してしまっても良いものなの?なんて疑問も浮かんだり。さて、工事のほうはと言えば、やっとこさデザインが固まりいよいよ建築業者の入札。が、2社あったのが1社撤退して1社での入札となり、当然ながら競争がなければべらぼうな入札価格になる…。そんなことは素人でも解るのに何故ほったらかしなのか。遂には大臣まで巻き込んでの検討会議にまで話は大きくなるのでした。実はお話としては、そんな最中に館長のデ・レーウが辞めるというところで終わっています。


表向きはある程度改築が軌道に乗ったから、あとはのんびりウィーンの家で過ごしたいということらしいですが、額面どうりとは思えないのは私だけではないはず。しかしながら現在進行形の話ですから、どこかで区切りをつけなくてはいけない訳で、映画を終えるタイミングとしては良いところと言えるでしょう。ひたすら主張しまくる人、オープンを待ちきれずに辞める人、暇そうにしている工事の人、我関せずで自分の仕事に没頭する人…。様々な人間ドラマ、人間模様がそこにはあり、それが全て現実なのだというところ、正に「事実は小説より奇なり」を地で行く面白さです。
個人的おススメ度4.0
今日の一言:現在の状況はどうなってるのかな?
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『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』予告編
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