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2010年9月30日 (木)

アイ・コンタクト

Photo 2009年の夏に台北で開催された聴覚障害者のためのオリンピック「第21回夏季デフリンピック」に初出場したろう者女子サッカー日本代表チームに密着したドキュメンタリー。監督は、『プライド in ブルー』の中村和彦。試合だけでなく、選手たちの素顔に迫り、ろう教育の実状をも描き出している。無音のサッカーシーンは衝撃を覚える。
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観て知って欲しい、彼女たちの事を。

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「アイ・コンタクト」この言葉を初めて聞いたのはいつだっただろう?そう言えばサッカー日本代表の監督に初の外国人監督としてハンス・オフト氏が就任した時だったように記憶しています。目線を合わせるだけでお互いのプレーの意図を瞬時に理解しあったり、意思表示をする手段でサッカーでは基本中の基本。そしてそれはろう者のサッカーでは通常以上に重い意味をもつものでした。選手の一人は言います。「選手は誰でもピンチになったりガッカリしたりすると俯いて下を向いてしまう。健聴者はそれでもいいかもしれないけれど、聞こえないろう者はどんな時も顔を上げていなくてはいけないんです。」と。つまり下を向くことは回りを見ていないということ、声をかけても聞こえない以上それではますます選手は孤立してしまう…。チーム競技でこれは致命的ですよね。例えばこんなこともあります。ゴールキーパーは一番後ろから戦況を客観視しています。

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故にディフェンス時に選手に指示を飛ばすのはGKの役目でこれをコーチングと呼びます。コーチはGKにもっと指示を出さなきゃだめだと注意をしますが、彼女は言います。「試合に集中したらみんな前しか観てない。そんな人たちにどうやって指示を飛ばすの?」と。なるほどろう者のサッカーならではの悩みに驚かされたのですが、しかし、同じことは健聴者の私たちにも言えるのではないでしょうか。むしろ声をかければ届くのがあたりまえの環境で、私たちは自分以外の周りの人間をしっかりと見つめているでしょうか。少なくともサッカーでは中々出来なくても、普段の彼女たちは驚くほど人をよく見ています。というより見ていないとコミュニケーションが取れないから。本作はろう者のオリンピック「デフオリンピック」サッカー日本代表女子チームの選手たちを通じて、ろう者の率直な気持ちや、抱える問題点に関して綴った作品です。

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それにしても言われなくては解らないこととは多々あるもので、本作を観ることで初めて気がついたことがいくつかありました。例えば「聞こえることと、話せることは別の事」だということ。補聴器を使うことでかろうじて人の話を聞き取れたとしても、言葉にして口話でそれに返答することは彼女たちにとって当たり前のことではないのです。映画に登場する選手たちの中には驚くほど普通に話す方もいます。しかしだからといって健聴者と同じようにコミュニケーションが成立するかと言えばそうではない、だから彼女たちの中には口話が出来ても家族に対してしか使わない人もいます。他にも、日本手話と日本語対応手話の違い、そしてろう者でも必ずしも手話を学んでいる訳ではないこと、更には手話と口話を同時にするのは難しいという子もいました。この年まで自分がそういったことを知らなかったことを恥ずかしく思います。

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とある選手は言います。「友達と会話をしたい。話に割って入ろうと思えばできる。でも聞こえないと口の形からだけではいつその人の話が途切れるのかが解らない。だからむしろ話しかけて欲しい。」これなどは本当に目からうろこでした。聞こえないから話しかけられない、そんな風に短絡的に考えていましたから。さて、この作品「もう1つのなでしこジャパン ろう者女子サッカー」というサブタイトルが付いているだけあって、後半三分の一は彼女たちの試合に密着していました。正直言って彼女たちのサッカーの実力は大したことはありません。デフリンピックではグループ予選でイギリスやロシアに大敗を喫し、一年前に発足したばかりのタイ代表チームには流石に大勝。5位6位決定戦でデンマークと対戦することになります。試合開始のホイッスルと同時に全く無音になる演出には流石に驚きました。テレビの人間には決して考え付かない演出です。

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プレーの様子がダイジェストでスクリーンに流れる数分間、ずっと無音。彼女たちは普段こんな世界でプレーしているのか…。そりゃもちろん現実世界のノイズは入りますが、彼女たちの気持ちの万分の一でも感じて欲しいと言う監督の狙いでしょう。試合終了のホイッスルと共に甦る音声。試合は惜しくも敗れますが、全力を尽くした彼女たちからもらった感動にろう者も健聴者も関係ないのは言うまでもありません。最後に彼女たちはろうで良かった事、そして自身の結婚に関して一言ずつ話してくれます。「嫌なことは聞こえないから良い」なんていった感じで驚くほどポジティブな彼女たちなのですが、逆に言えば彼女たちがそうしなくても普通に付き合えるようになれるのが理想かなとも思ったり。実はそれはそんなに難しいことではなくて、月並みな言い方ですが少しだけ相手の立場に立ってあげれば良い事なんですよね、「アイ・コンタクト」で。

個人的おススメ度4.0
今日の一言:次のオリンピック目指してがんばれ!
総合評価:75点

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『アイ・コンタクト』予告編

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