ルー=ガルー
『魍魎の匣』の原作で、人気作家・京極夏彦の「ルー=ガルー 忌避すべき狼」をアニメ映画化。国家の完全モニタ下におけるヴァーチャルなコミュニケーションが確立した近未来を舞台にしたSFサスペンス。4人の少女たちがとある事件をきっかけに監視社会を打破する様子を描く。『テイルズ オブ ヴェスペリア ~ The First Strike ~』のプロダクション I.Gが制作。監督は「BLOOD+」の藤咲淳一。 |
アイディアは良いのだけれど… |
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京極夏彦が原作で、しかもプロダクション I.G制作のアニメーションとあらば観ておかなくてはなるまいという訳で鑑賞。それにしても登場人物が一人を除いて全て女性、それもメインは14歳の少女たちとあって、聞こえてくる声はもうキャピキャピのロリロリだらけ。流石にいい年して恥ずかしいかも…と思ってしまった程、いわゆるアニメアニメした作品でした。更に、キャラクターデザインやアニメーションのテイストは正に想像通りプロダクション I.Gらしかったものの、そのストーリー的にはどうも丁寧さが足りない、いかにも端折ってまとめましたといったような不満が残るものでした。舞台は近未来、全ての人間たちをカメラで監視する社会です。
主人公の葉月(沖佳苗)を始め、皆が手にしているのは薄いカード状のモニタ。これ一枚で電話からセキュリティ、GPSほか生活に必要な全ての機能が賄えているようで、ある意味現代社会のケータイの進化版といったところです。大まかな話の流れとしては、葉月とその友達、歩未(五十嵐裕美)美緒(井上麻里奈)そして美緒の友達の麗猫(沢城みゆき)の4人が、同級生の祐子(植竹香菜)が何者かに殺された事件の犯人を捜すうちに国家の陰謀に巻き込まれ、最終的には閉塞的な監視社会を打破するために戦うという話。小さい間口が大事件に発展していくと言うパターンは定番なのですが、メインストリームは解るもののその周辺を取巻く人間関係や、個々人の背景が良く解りません。
例えば少女たちの親は一切出てこないけれど、どういう関係になっているのか。葉月たちは研修センターで班分けされているようだが、学校とは違うというその体制は一体どういうことなのか。実際には公園のような所で彼女たちは出会っているが偶然だったのか。合成食品を開発したSVCと監視国家はどう関係しているのか。祐子は自分で描いたイラストをネットに上げたせいで事件に巻き込まれるが、そもそもの少女連続殺人事件とどう関係しているのか。……っとまあ諸々どうもスッキリしないのです。もちろんボーっと観ている分には、女の子たちがキャッキャ言いながら楽しそうにはしゃいでいたり、ピンチに陥ったりとそう退屈する訳ではないのですが、細部が解らないとどうしても釈然としない。
しかも、話を見ていくとルー=ガルーとは歩未のことらしい。彼女は自分のことを人殺しだと言い、何の感情も表さず人を殺せる人間として描かれているのだけれど、実際の物語は葉月の目線で進んで行くため、誰を中心に観たら良いのか、これまたどうも違和感を感じてしまう訳です。紆余曲折の末、葉月と歩未はSVCの本社ビルに向かうのですが、そこに登場するのが県警の石田管理官(青山穣)。要はSVC創始者を父に持つ石田が少女連続殺人事件の黒幕らしいのだけれど、そもそもエリートとはいえ一介の警察官と監視国家、更に少女連続殺人事件がどう関係するのかがサッパリ。もっとも最後まで観て行くと、あっと驚く秘密が隠されてはいるのですけど。
結局のところ、余りにも説明不足過ぎて今実際に目にしたことしか解らない状態に陥ってしまっています。歩未がルー=ガルーであることと、監視国家を作り上げたSVCとその黒幕に因果関係は全くないのならこのタイトルは一体何だったのか…。やはりこの手の作品はOVAかテレビの連続でやったほうが良い気がします。なにやらダイジェスト版でうまく丸め込まれてしまったような印象でした。
個人的おススメ度2.5
今日の一言:圧倒的に男性客が多かったよ(苦笑)
総合評価:55点
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