君に届け

累計発行部数1100万部を突破した椎名軽穂の大ヒット少女コミックの実写映画化。２００９年にはテレビアニメ化されている作品でもある。人一倍素直で思いやりがあるのにその暗さから孤立していた少女が友達やクラスの人気者の男子と触れ合ううちに成長していくピュアラブストーリー。主演は『フィッシュストーリー』の多部未華子と『奈緒子』の三浦春馬。監督は『おと・な・り』の熊澤尚人。
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ちゃんと言わなきゃ届かないよね！

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なんでも超人気少女マンガだそうだ。ついでにアニメかもされコチラも大人気らしい。しかし当然ながら未読で未見。従って本作にも殆ど期待していなかったのだけれど、青春学園もの好きとしては押さえておいたほうがよかろうと気軽に鑑賞してきたのですが……いや、コレはイイ！思ったよりずっと良かった。鑑賞後は浮世の汚さに穢れきった心が洗われたような気持ちになりました。（笑）主人公は今をトキメク多部ちゃんこと多部未華子と三浦春馬。多部ちゃん演じる黒沼爽子はとても素直で優しくて良い子なのだけれど、その暗さ故にいつも一人ぼっち。物語序盤でどうしてそうなってしまったのかをキチンと見せてくれるお陰で、原作やアニメを知らなくてもスッと物語に入っていけるのが親切で嬉しいところです。

その長い黒髪を垂らして上目遣いに人を観る様子が映画『リング』の“貞子”ソックリなことから皆に貞子と呼ばれているのだけれど、普通に考えたら虐めなのにこの子はそうは受け取っていない。それどころか、貞子は霊を呼べるなんて噂話に「本当は霊なんか呼べない。クラスの皆の期待に応えられなくて申し訳ない。」なんて思っちゃう程お人好しというかバカ素直。でも極たまに見せる笑顔がとっても可愛いのです、まあ多部ちゃんなので当然ですが。しかし今回解ったのは、緊張した時に爽子は怖い顔になるという設定なのだけれど、多部ちゃんてあんなに怖い顔になるのかってこと。確かに丸顔ではあるし、元々どことなくマンガチックな女の子ではあるけれど…。で、そんな貞子もとい爽子が高校入学の時にばったり出会ったのが風早翔太（三浦春馬）。

いや～、もうこいつが驚異的に爽やか君。原作は読んだことないけれど、いわゆる漫画のなかで学校中の人気者として描かれる爽やかイケメン好青年のイメージそのまんま。ところが三浦春馬がやるとこれが全く嫌味にならない。というかハッキリ言えば三浦春馬のイメージがそもそもそのまんま風早とダブってると思うのだけれどいかがでしょう？話としては風早くん、あった瞬間に恋に落ちるのだけれど、１２８分の上映時間の間中々その気持ちを伝えられないのです。タイトル『君に届け』の主な意味はここにありました。しかしそれだけでは単なるラブストーリーなだけ。本作の面白いのはその『君に届け』が学園生活を送る中の色んなシチュエーションで現れている所なのです。例えば劇中で爽子の友達になる吉田千鶴（蓮佛美沙子）と矢野あやね（夏菜）。

せっかく彼女たちと仲良くなったのに、爽子は他のクラスの女の子が彼女たちや風早が爽子と一緒にいると評判ががた落ちだなんて噂しているのを気にして急に彼女たちを避け始めます。友達になりたい、一緒に居たい、そんな気持ちだってちゃんと相手に言わなきゃ届かない。恋愛も友情も同じことなんですね。ちなみに千鶴役の蓮佛美沙子、『ハナミズキ』や『いけちゃんとぼく』なんかにも出演している美少女ですが、どーも美形で元気という役が良く似合っていて個人的には好感度◎。結局この悪い噂を流していたのは、風早の事を好きな胡桃沢梅（桐谷美玲）。爽子を孤立させて風早から引き離そうって魂胆ですね。もっとも結局ばれてしまうのですが、この一連は大人しい爽子が頑張りを見せる感動的なシークエンスです。余談ですが桐谷美玲は新垣結衣に似過ぎですね。

他にも千鶴の恋愛話もでて来たりして、意外にも中々風早と爽子のラブストーリーにはなりません。最もならないから中々届かないんですが。胡桃沢の告白を断ったあたりから徐々に風早の気持ちが徐々に強くなって行きます。学校の行事にかこつけてデートに誘ってみたり、色々策をめぐらす風早くん。うーん、気持ちはよーく解ります。私も死ぬほどあの手この手を考えましたから。しかし大抵上手く行かないものなんですね。折角出かけようとしているのに千鶴に邪魔されたり…。しかし悪気がないだけに何も言いようがない。しかも悪いことは重なるもので、爽子がバス通学に変わり、放課後に一緒に帰ることすら出来なくなります。だんだんと風早くんの焦りのゲージがレッドゾーンに近付いていくのがスクリーンからもよく伝わってきます。

男子ならみんな経験があるでしょう。ゲージがＭＡＸになったら結果はどうあろうと告白するしかありません。しかし！ちょっとこの展開には驚いたのですが、爽子の答えは「ごめんなさい。」。あれ？大好きって言ってなかった？このあたりの微妙な女心は女性なら良く解るのでしょう。ただ、解った上で千鶴達は彼女に自分の気持ちをちゃんと届けるように言うのです。そうですよね、結果はどうあれお互いの気持ちをしっかり相手に届けること、それが何より大切なのですから。爽子が風早くんに告白するまでのシークエンスは、出来すぎなぐらいの話の展開ですが、むしろ本作の流れからしたら自然です。それにしても本作は登場人物が基本的に皆良い人で、その意味で言ったらリアリティはないです。その代わり観ていて終始心地良いそんな作品でした。

個人的おススメ度4.0
今日の一言：ARATAさんのあんな役始めて見た（笑）
総合評価：76点

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『君に届け』予告編