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2010年9月27日 (月)

メッセージそして、 愛が残る

Photo_3 原作はギョーム・ミュッソの人気小説。人の死が解るという男の出現に戸惑いながらも、徐々に成長しやがてその運命を受け入れる男の姿を描いたちょっとダークファンタジーなヒューマンドラマだ。主人公を演じるのは『モリエール 恋こそ喜劇』のロマン・デュリス。その妻を『ハート・ロッカー』のエヴァンジェリン・リリーが、そして謎の男をジョン・マルコヴィッチが演じる。監督はジル・ブルドス。
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生の尊さを振り返る根源的作品

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ちょっとダークファンタジーがかっている作品でした。しかし物語のテーマはとても純粋でシンプル。即ち我々は今生きていることを大切にし、充実した生を過ごさなければいけないのだと言うこと。ではそのために必要なのはどういった心構えなのか。本作は主人公ネイサン(ロマン・デュリス)とともに私たちもそれを学んでいく、そんな作品でした。といいつつもオープニングは女の子が沼の桟橋が壊れ水に落ち、助けを呼びに行った男の子が道路に出た瞬間車に撥ね飛ばされるという余りにも心臓に悪いことこの上ないシーンからスタートします。質問の声に臨死体験を語る男の子、プロローグとしては謎に満ちたものですが、物語後半でその意味が判明してくるのでした。

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ある日、ニューヨークでエリート弁護士をしているネイサンの元に突如ケイ(ジョン・マルコヴィッチ)と名乗る男が現れます。とたんに漂う怪しい雰囲気。ケイの物静かな佇まいと、ジョンの独特の個性が合わさって、ともすればエスパーのような、或いはエイリアンのような存在感を醸し出しているのだけれど、実は彼はロスのとある病院のれっきとした医局長。彼はネイサンに警告を発しに来たのでした。登場するだけでスクリーンに目を釘付けにさせてしまうあたり流石は個性派俳優ジョン・マルコヴィッチの面目躍如といったとことでしょうか。ところが相手役ネイサンのロマン・デュリスも負けていない。この人、今回はヒゲを蓄えているのと、短髪なので解りにくかったのですが、『モリエール 恋こそ喜劇』のモリエール役を演じた人でした。

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今回は現代人ですが、ケイと比べるといかにも常識の枠に囚われているけれど、次々と起こるその常識の枠外の出来事を必死に自分の中で消化し受け止めようとします。故にその時々のネイサンの気持ちの変化は大きいのですが、都度移り変わるその変化が実に良く解る演技でした。最初に書いた通り、今生きていることを大切にし、充実した生を過ごさなければいけない、このことを実際に理解し行動するには先ずしなければならないことがあります。それは人の死を受け入れること。物語ではケイがネイサンの死に関して警告に来るのですが、最初は当然ながら「何を馬鹿なことを!」といった感じ。しかし最初は全く赤の他人である男の死を、次にネイサンの大学時代の恋人の死を予言され、それぞれ拳銃自殺と銀行強盗の発砲と言う形でそれは実現します。

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しかしその形自体は問題ではありません。つまり人は覚悟の上でだけでなく、覚悟の間もなく死を迎えることがあるのだということ。交通事故かもしれないし、飛行機事故かもしれないし、はたまた歩いていたら上から物が落ちてきてかもしれない。ケイの導きでそのことに徐々に気付いていくネイサン。その様子は師が弟子を導き修行を重ねるかの如くでした…。それにしても、言われてみれば至極当たり前で、理屈としては私たちも普通に理解できます。しかし、実際に自分の死が近いという事実を突きつけられたらどうでしょうか…。それを素直に受け止められるほど達観して生きろと言うのは無理な相談でしょう。当然ネイサンも必死で死に対して抗います。そかしそんな彼にケイは言うのでした。人の死の運命は変えられないと。

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だから残り僅かな生を充実して生きてもらうために彼らメッセンジャーは存在しているのだと―。実はこれが一つの重要なメッセージだと言うのはラストになるまで解りません。自分の死を受け入れネイサンは残された生を精一杯“生きる”ために全てを投げ打って、別れた妻と娘の下へと向かいます。彼の脳裏に浮かぶのは家族が幸せに包まれていたあの頃の情景。森の中で過ごす家族の幻想的でどこか浮世離れしたその情景に台詞はないけれど、見る者の心に訴える美しくも儚い夢の映像でした。彼は自ら壊してしまったあの情景をもう一度取り戻そうとしていたのかもしれません。妻クレア(エヴァンジェリン・リリー)が撮影を試みる月下美人の花は年に一度だけ咲き、その命は僅か一晩。短い時間で精一杯美しく咲き誇るその花の生き方は、全て私たちにも共通する象徴なのです。

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しかし、全てを受け入れたはずのネイサンの目に映ったのは…光り輝くクレアの体でした…。そう実は彼がメッセンジャーであり、メッセンジャーはその能力と引き換えにもっとも大切な命を失うのです。自らの死より辛い最愛の人の死をどう受け入れるのか…。ケイによって明かされる最初の臨死体験シーンの謎。全てを聞いたネイサンは今度こそ本当に全ての死を受け入れます。それは即ち赤の他人であろうと、大学時代の親友だろうと、自分であろうと、最愛の人であろうと、全て生は等しく尊く、だからこそ残された時間を精一杯生きなければいけないのだということ。若干宗教めいた感じもしなくはないですが、人の気持ちの触れにくい部分を上手く描き出した秀作でした。

個人的おススメ度3.5
今日の一言:マルコヴィッチさん怪しすぎます
総合評価:73点

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『メッセージそして、 愛が残る』予告編

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受信: 2010年9月27日 (月) 21時11分

» 〜『メッセージ そして、愛が残る』〜 ※ネタバレ有 [〜青いそよ風が吹く街角〜]
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受信: 2010年9月27日 (月) 23時56分

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受信: 2010年9月29日 (水) 15時48分

» 『メッセージそして、愛が残る』(2008)/ドイツ... [NiceOne!!]
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受信: 2010年10月 2日 (土) 04時16分

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もしも死期が近いとしたら公式サイト http://www.cinemacafe.net/official/message-movie/ギヨーム・ミュッソ著作の小説の映画化ニューヨークで弁護士をしている [続きを読む]

受信: 2010年10月 3日 (日) 10時05分

» メッセージ そして、愛が残る [佐藤秀の徒然幻視録]
公式サイト。原題:AFTERWARDS。ギョーム・ミュッソ原作、ジル・ブルドス監督、ロマン・デュリス、ジョン・マルコヴィッチ、エヴァンジェリン・リリー、リース・トンプソン。冒頭は「怪談新耳袋 怪奇」の後編「ノゾミ」と少し似ている。池に白鳥が一羽、「白鳥の歌」の映像化....... [続きを読む]

受信: 2010年10月 3日 (日) 20時56分

» メッセージ そして、愛が残る [映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子公式HP]
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受信: 2010年10月 7日 (木) 00時16分

» メッセージ そして、愛が残る [心のままに映画の風景]
ニューヨークの法律事務所に勤める敏腕弁護士のネイサン(ロマン・デュリス)は、息子を乳幼児突然死症候群で亡くしたショックから、妻クリ... [続きを読む]

受信: 2010年10月 8日 (金) 15時50分

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受信: 2010年10月25日 (月) 23時07分

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 『メッセージ そして、愛が残る』を、日比谷のTOHOシネマズシャンテで見てきました。 (1)かなり重厚な物語です。  毎日忙しく働く弁護士の男 [続きを読む]

受信: 2010年10月27日 (水) 06時36分

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受信: 2010年10月30日 (土) 10時06分

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受信: 2010年11月16日 (火) 15時03分

» メッセージ そして愛が残る [迷宮映画館]
あの世とこの世のはざまにいるような雰囲気がぴったりの役者さんたち・・・。 [続きを読む]

受信: 2010年12月11日 (土) 08時32分

» メッセージ [新・映画鑑賞★日記・・・]
【AFTERWARDS/ET APRES】 2010/09/25公開 ドイツ/フランス/カナダ PG12 107分監督:ジル・ブルドス出演:ロマン・デュリス、ジョン・マルコヴィッチ、エヴァンジェリン・リリー、リース・トンプソン、グレンダ・ブラガンザ 遠く遠く愛を探して、いま君へと帰り着く。...... [続きを読む]

受信: 2011年6月 7日 (火) 12時45分

» メッセージ そして、愛が残る [こんな映画見ました〜]
『メッセージ』(DVD題名)---AFTERWARDS  ET APRES---2008年(ドイツ/フランス/カナダ)監督:ジル・ブルドス 出演:ロマン・デュリス、ジョン・マルコヴィッチ 、エヴァンジェリン・リリー 人の死期を予見する謎めいた男の出現に困惑しながらも、その運命...... [続きを読む]

受信: 2011年9月21日 (水) 22時58分

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