« THE LAST MESSAGE 海猿 | トップページ | 食べて、祈って、恋をして »

2010年9月17日 (金)

ナイト・トーキョー・デイ

Photo 『エレジー』のイザベル・コイシェ監督が『バベル』の菊地凛子を主演に送る異色のラブストーリーだ。昼は築地魚河岸で働き夜は殺し屋という2つの顔をもつ主人公が、ターゲットと禁断の恋に落ちてしまう。恋のお相手ダビッドに『パンズ・ラビリンス』のセルジ・ロペス、他に田中泯、中原丈雄、榊英雄という日本人俳優も出演。コイシェ流の東京の風景に注目したい。
>>公式サイト

東京の現実、TOKYOの現実

 あらすじ・作品情報へ 

にほんブログ村 映画ブログへ 人気ブログランキングへみなさんの応援クリックに感謝デス

01

『エレジー』で素晴らしく鮮烈な作品を見せてくれたスペインの女流監督イザベル・コイシェの作品です。世間的にはどうも評価が低いようですが、まあ確かにそれも無理ないとは思わせる作品でした。個人的にはこの手の映像表現はとても好きなのですが、外国人の目、というよりコイシェ監督の目を通じて描かれた東京ならぬTOKYOの情景は、例えば場所そのものは日本であってもどこか何かが違うと思わせる絵作りで、それがちょっと違うのじゃないかと受け取る人もいるのではないかと思うのです。どことなく『エンター・ザ・ボイド』のギャスパー・ノエ監督が描くTOKYOに繋がるかのような描き方でもありました。もっともさすがにノエ監督ほどまでにはトンデませんけれど。

02 03

何しろ初っ端から寿司の女体盛り。全くどこからこんなろくでもないことを聞きつけてきたのか。それとも監督は一度実際にやってみたかったんでしょうか?(笑)「人肌に乗せられた寿司など生暖かくて食えたもんじゃないだろうに…。」と思いきや、その辺は大物実業家・長良(中原丈雄)が全くそのままの台詞を言ってくれたり。彼が外国人を接待しているというのがこのオープニングのシーンです。一方で主人公のリュウ(菊地凛子)は築地のマグロ市場ではたらく女。コントラストの強い映像で映し出すマグロの解体シーンは当然寿司との繋がりを意識しているのでしょうけども、なるほど親日家のコイシェ監督の持つ日本のイメージはこういうところにもあるのかと思わされます。

04 05

それにしても菊地凛子のクッキリとした目鼻立ちと長い黒髪は、コイシェ監督の映像に良くフィットしていて、その存在そのものが監督の中の日本人を体現しているようにも思えました。最近のニュースではスパイク・ジョーンズ監督とお付き合いしているとのことですが、確かにミスユニバース・グランプリの森理世のような欧米人の好む東洋人顔ですしね。さて、ところが凝った映像とは裏腹にストーリー自体は意外とありがちで単純。最初に登場した長良の娘は自殺するのだけれどその夫・スペイン人のダビ(セルジ・ロペス)だけが普通に生活を続けている。それは当たり前の事だけれどそれが気に入らない長良、彼の部下はボスの気持ちを忖度して殺し屋にダビの暗殺を依頼します。

06 07

その依頼する相手がリュウ。そう、彼女は表の顔は築地市場で働く女、裏の顔は殺し屋という女なのです。一見おおっ!という設定ですが、この後ターゲットのダビに近づいたリュウは彼を愛してしまい殺せません。依頼をキャンセルすると部下は自分でダビを殺そうとするも、ダビを庇ったリュウが代わりに撃たれて死ぬ。ただそれだけ。ですからいわゆる殺し屋の物語を期待すると肩透かしを食らいます。むしろこの作品で観るべきはは、その極簡単なストーリーの流れをコイシェ監督がどのように表現するか。例えばユニークなことに本作はとある録音技師(田中泯)が語り部となって話を進めていきます。録音技師は彼女に密着し録音する中で彼女に関して様々な情報を語るのでした。

08 09

それはリュウがラーメンをすする音だったり他愛もないおしゃべりだったり。更にそうした彼女に関わる音だけでなく、映像には様々なノイズが乗ってきます。リュウが街を移動することは即ち映像やノイズも含めた監督自身のTOKYO巡りとも言えるのかもしれません。行く先がただの飲み屋だったり、花やしきだったりと言うところに日本人が興味の対象とするのとはまた違った目線が感じられて面白い。リュウはダビに誘われて、彼が昔妻と定期的に来ていたというラブホテルに入るのですが、そこは何と電車の中を模した部屋。当然ながらそこで繰り広げられる2人の情交。ただし私はこのシーンの菊地凛子の計算尽くな、いかにもアートでございといった芝居があまり好きになれませんでした。

10 11

セルジ・ロペスが菊地凛子の体にむしゃぶりつく芝居は、本来人間が持つ獣性や衝動、もっと言えばこんな部屋でプレイすることのアブノーマル性を表現できているのですが、それに対する彼女は気取り過ぎに思えます。もっとも『エレジー』を観た時にも感じたのですが、コイシェ監督の描くセックスシーンはエロスよりも限りなく美を感じるもので、思えばダビと老教授デヴィッドの荒々しさも共通しています。ただ菊地凛子には申し訳ないけれど、彼女をペネロペ・クルスと比べるのは流石にちょっと辛いものがありますが…。いずれにしても東京の現実に飽きた私たちにとっては、この作品のTOKYOの現実は新鮮な驚きとなって映るのではないでしょうか。

個人的おススメ度3.0
今日の一言:オッシー迷惑かけ過ぎ。
総合評価:64点

にほんブログ村 映画ブログへ 人気ブログランキングへ
↑いつも応援して頂き感謝です!
今後ともポチッとご協力頂けると嬉しいです♪

『ナイト・トーキョー・デイ』予告編

|

« THE LAST MESSAGE 海猿 | トップページ | 食べて、祈って、恋をして »

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ナイト・トーキョー・デイ:

» 『ナイト・トーキョー・デイ』(2009)/スペイン [NiceOne!!]
原題:MAPOFTHESOUNDSOFTOKYO監督・脚本:イザベル・コイシェ出演:菊地凛子、セルジ・ロペス、田中泯、中原丈雄、榊英雄鑑賞劇場 : 新宿武蔵野館公式サイトはこちら。<Story>築... [続きを読む]

受信: 2010年9月17日 (金) 18時25分

» ナイト・トーキョー・デイ [映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子公式HP]
Mapa de los sonidos de Tokio/ Map of the Sounds of Tokyo (Coleccion Andanzas)殺し屋とその標的の許されない恋というと過激で情熱的に思えるが、この物語はどこかポエティックで不思議なムードが漂っている。築地の魚市場で働きながら、凄腕の殺し屋として闇の仕事を請け...... [続きを読む]

受信: 2010年9月18日 (土) 23時59分

» 「ナイト・トーキョー・デイ」メランコリックNIPPON [ノルウェー暮らし・イン・London]
外人目線で描いた現代TOKYO。 日本人でも見たこと無いような、間違っちゃいないけど本当なの?というNIPPONが描かれている。 ロンドンでも日本に先駆けて6月から公開していた作品。 メランコリックなのは、雰囲気だけで・・・・・... [続きを読む]

受信: 2010年9月23日 (木) 19時48分

» ■映画『ナイト・トーキョー・デイ』 [Viva La Vida! <ライターCheese の映画やもろもろ>]
のっけから女体盛りのシーンで始まる映画『ナイト・トーキョー・デイ』。 スペインのイザベル・コイシェ監督が菊地凛子を主演に迎え、東京の街を舞台にしたスペイン映画です。 築地市場、ラブホテル、ネオン、花屋敷、音をたててすするラーメン、音姫のあるトイレなどなど、“... [続きを読む]

受信: 2010年10月 9日 (土) 11時19分

» ●『ナイト・トーキョー・デイ』● ※ネタバレ有 [〜青いそよ風が吹く街角〜]
2009年:スペイン映画、イザベル・コイシェ監督、菊地凛子、セルジ・ロペス、田中泯、中原丈雄、榊英雄出演。 [続きを読む]

受信: 2010年10月11日 (月) 11時34分

» ナイト・トーキョー・デイ [パピ子と一緒にケ・セ・ラ・セラ]
「死ぬまでにしたい10のこと」、「エレジー」のイザベル・コイッシェ監督が「バベル」の菊池凛子を主演に迎え、全編を東京で撮影したラブストーリー。共演は「パンズ・ラビリンス」のセルジ・ロペス。物語:築地の魚市場で働く女性・リュウは、殺し屋という裏の顔を持って....... [続きを読む]

受信: 2010年11月13日 (土) 23時27分

» 「ナイト・トーキョー・デイ」 [みんなシネマいいのに!]
 昼は築地の市場で働き、夜は殺し屋の女が、標的の男と恋に落ちる…。  主演は「バ [続きを読む]

受信: 2010年12月19日 (日) 18時40分

» ナイト・トーキョー・デイ [新・映画鑑賞★日記・・・]
【MAP OF THE SOUNDS OF TOKYO】 2010/09/11公開 スペイン R15+ 98分監督:イザベル・コイシェ出演:菊地凛子、セルジ・ロペス、田中泯、中原丈雄、榊英雄 音の溢れる街で繰り広げられる、孤独な大人のラブ・ストーリー 夜の築地魚市場で黙々と働く一人の女、リュウ。...... [続きを読む]

受信: 2011年7月 6日 (水) 22時53分

» ナイト・トーキョー・デイ [RE940の自作DVDラベル]
2009年 スペイン 102分 監督:イザベル・コイシェ 出演:菊地凛子 セルジ・ロペス 田中泯 中原丈雄 榊英雄  愛した男は標的だった……。「死ぬまでにしたい10のこと」のI・コイシェ監督が、国際派女優・菊地凛子を主演に迎え、東京を舞台に描くサスペンス・ラブストーリー。どこまでもクールな無表情の中に、標的の男性と恋に落ちたヒロインの苦悩を浮かび上がらせた菊地の好演が光る。「死ぬまでにしたい10のこと」のI・コイシェ監督が東京ロケを敢行、築地市場やラブホテルなど、外...... [続きを読む]

受信: 2012年6月 2日 (土) 10時17分

» 映画評「ナイト・トーキョー・デイ」 [プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]]
☆☆★(5点/10点満点中) 2009年スペイン映画 監督イザベル・コイシェ ネタバレあり [続きを読む]

受信: 2012年6月 3日 (日) 17時50分

» 『ナイト・トーキョー・デイ』 [cinema-days 映画な日々]
ナイト・トーキョー・デイ 孤独な殺し屋が依頼された ターゲットを愛してしまう... 【個人評価:★★ (2.0P)】 (自宅鑑賞) 原題:Map of the Sounds of Tokyo [続きを読む]

受信: 2012年6月17日 (日) 09時22分

« THE LAST MESSAGE 海猿 | トップページ | 食べて、祈って、恋をして »