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2010年10月12日 (火)

死刑台のエレベーター(1957)

1957 ヌーヴェル・ヴァーグの先駆けとなった作品で、巨匠ルイ・マル監督が25歳の時に撮ったデビュー作。当ブログでは以前『地下鉄のザジ』を紹介した。土地開発会社につとめるジュリアンは社長布陣フロランスと組んで社長の殺害を計画する…。出演はフランスの名優ジャンヌ・モローとモーリス・ロネ。マイルス・デイヴィスによる即興演奏によるムーディーな音色に引きこまれる。
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緻密な脚本とムーディーな音楽

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吉瀬美智子主演でリメイクされる本作、世の中粋な計らいをする劇場があるもので、シアター・イメージフォーラム(渋谷)では同時に1957年のオリジナル版が公開されていました。という訳で、オリジナルとリメイクを連続して観てしまおうという豪華かつ贅沢な個人企画を立てての鑑賞です。久方ぶりのモノクロ作品ですが、オープニングと同時にスクリーン一杯に映し出されるジャンヌ・モローの顔に思わず魅入ってしまいます。何てクールビューティ。受話器に向かって「ジュテーム…」とささやく甘い声、そしてそれを受けるのはモーリス・ロネです。何ともムーディーなBGMにのせて愛を告げあう2人からは往年の名画の雰囲気がビンビンに伝わってきます。実はジャンヌ・モロー扮するフロランスはモーリス・ロネ扮するジュリアンが勤める会社の社長夫人。早い話がこの2人は浮気をしているという訳。

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で彼女は「私の事を愛しているなら邪魔臭い社長を殺しちゃって!」とジュリアンに命じると。自殺に見せかけた社長殺しは上手くいったのだけれども、この時ちらっと映る黒猫が何やら先行きを案じさせる上手いアクセントです。黒猫の呪いなのか、順調に会社を出てコンパーチブルの座席に座りふと上を見ると…あれ?社長室へ向かうのに使ったロープがバルコニーに残ってる!これはまずいと車の鍵を付けっぱなしで会社に戻ったのが運命の分かれ道でした。どケチで知られる社長は土曜日に金曜の夕方5時半には会社の電源を全部落としてしまう。ああ、哀れそのタイミングでエレベーターに乗っていたジュリアンは見事に閉じ込められるはめに。実は観る前の想像と違ったのは、ジュリアンが結局は物語の大半をエレベーターに閉じ込められているということでした。つまり主人公の方割れが殆ど動きを見せないままに、周囲が動くことで彼の人生が決まってしまう訳です。

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即ちこの時外に停めておいたジュリアンのコンパーチブルを花屋の売り子ベロニック(ヨリ・ベルダン)とチンピラのルイ(ジョルジュ・プージュリー)が盗むことで事態は思わぬ展開を見せるのでした。2人は盗んだ車からジュリアンのコートや小型カメラ、拳銃といった本作のキーアイテムをゲットします。ちなみに、この後の物語としてはエレベーター内のジュリアン、街をさまようフロランス、そしてベロニックとルイたちという3シチュエーションがパラレルに進行します。彼らがカッコいいコンパーチブルを乗り回している間、彼を捜して町をさまよい歩くフロランス。社長夫人といういわゆるセレブな女性にも関わらず、自分の足を棒にして焦りを隠すこともなく一心不乱に歩き回る様からは、ジュリアンへの強い愛情が伝わってきました。一方ジュリアンも何とか脱出してフロランスと落ち合おうと必死。そこで床下を開け、ワイヤーを伝って降りようとします。

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ところが!突如として動き始めるエレベーター。上からエレベーターが降りてきながら途中で止まる、その轟音と彼の恐怖にゆがむ表情からは、フランスだけに正にギロチンを連想させます。ある意味この場面も「死刑台のエレベーター」と言えるでしょう。さて、お気楽にドライブを楽しむルイは、後ろから彼らをぶち抜いていくスポーツカーに対抗心を燃やし、そのスポーツカーを追いかけます。実はそのスポーツカーがメルセデス300SL。本作が作られた1957年は戦後僅か12年、若いルイとしても戦勝国であるフランス人としてはドイツの象徴メルセデスに負けるわけにいかなかったのでしょう。この微妙なルイの苛立ちが後に大事件を引き起こすのですから、歴史と人間の関わりとはかくも面白いものかと思わざるを得ません。しかも乗っていたのはドイツ人夫妻の観光客でした。この向こう気の強い若者が気に入ったそのドイツ人夫妻は彼らを食事に招待します。

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ベロニックは無邪気に喜び、手に入れた小型カメラで記念撮影までし始める始末。モーテルに現像を頼み、再び楽しい夜を過ごすのでした。実にさりげないこのワンシーンは後から重要な意味を持ってきます。もちろん、この時は想像だに出来ないのですが。それはどういうことか。夜中、起き出したルイはメルセデスを盗んで逃げようとするのです。見つかると、何と彼は車からゲットした拳銃でそのドイツ人を射殺してしまうのでした。あらら?ちょっとまてよ…ジュリアンのコンパーチブルはドイツ人殺害現場にある…しかも現場にはジュリアンの拳銃、そして宿帳はジュリアンの名前…状況証拠だけなら真っ黒けじゃないですか!また脚本的に絶妙なのが、よりによってこのタイミングでジュリアンがエレベーターから脱出できるという展開。ここから先に今まで撒かれていた伏線が一気にクライマックスへと収斂する様はお見事としか言いようがありません。

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つまりドイツ人殺しで逮捕されたジュリアンにはアリバイがないんですね。しかもエレベーターの中にいた事を知っているのは本人のみですから。何故一人でエレベーターに乗っていたのかを説明したら社長殺しがばれるというこのジレンマ。観ている我々もそれは百も承知なだけにこのあとの展開に釘付けです。じゃあ彼の無実はどう晴らすのか。そこで登場するのがフロランス。彼女はベロニックが昨日コンパーチブルに乗っていたことから彼女を見つけ、ジュリアンの嫌疑を晴らすべく警察に知らせます。もちろん彼女としてはこのままでは死刑になってしまうジュリアンを救おうと必死な訳ですが、後から考えると結局この時点で彼女もジュリアンも破滅への片道切符を手にしたのです。ルイは自分たちが犯人である唯一の証拠、あの小型カメラで撮った写真の存在に気付き、それを回収しにモーテルへとバイクを飛ばすのでした。これに気付きルイを追うフロランス。

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そして…。警察は既にその写真の存在に気付いていたのでした。ルイは証拠を突きつけられ逮捕されますが、しかし同時にそのカメラに残っていたネガを現像すると、ジュリアンとフロランスの仲睦まじい姿が徐々に浮き出てくる…。このじわっと浮き出てくるのが、物語の真相が明らかになる過程とだぶる素晴らしい演出です。ドイツ人殺しは死刑、愛する人を死刑から救うためには、自らも含めた罪を明るみに出さなくてはならない皮肉。ついでに言えば死刑台に送られることになったのが“ルイ”だというのもこれまた皮肉です。計算しつくされた脚本、ムーディーな音楽お見事な作品でした。

個人的おススメ度4.0
今日の一言:さてリメイク版はどうかな?
総合評価:81点

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『死刑台のエレベーター(1957)』予告編

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受信: 2010年10月22日 (金) 12時55分

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受信: 2010年12月 9日 (木) 12時11分

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