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2010年10月11日 (月)

乱暴と待機

Photo 劇作家・本谷有希子の戯曲を映画化。とある平屋の住宅街を舞台に一組の夫婦と一組のカップルの奇妙な四角関係が繰り広げられる。出演は『ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~ 』の浅野忠信、『逃亡くそたわけ-21才の夏』の美波、『パーマネント野ばら』の小池栄子、『十三人の刺客』の山田孝之。監督・脚本・編集の三役を『パンドラの匣』の冨永昌敬が務める。
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あなたは奈々瀬を好き?嫌い?

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実に奇妙でユニークな群像劇です。厳密に言えば違うけれど、木造平屋建ての市営住宅が舞台という大きな意味ではシングルシチュエーション。観ている時は知らなかったのですが、元々舞台だったということで、成る程それで納得といったところです。全編に漂うこの何とも風変わりな空気感は中々言葉で説明しづらいものがあるのですが、その原因となっているのは物語に登場する4人の男女。とにかくこの4人のキャラがとても立っていて、実は本作はそんな彼らの風変わりな日常を見ていくだけなのだけれど、コレが実に面白い。劇中で浅野忠信扮する山根英則は妹・緒川奈々瀬(美波)の日常を天井裏から覗くのが趣味になっているのだけれど、我々観客はその山根ごとこの世界を覗き見ているといった感じ。そもそも番上貴男(山田孝之)と番上あずさ(小池栄子)夫妻がこの市営住宅に引っ越して来たところから物語は始まります。

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スナックを経営するあずさは妊娠中、貴男は無職のプータロー。実はこの夫婦だけ見ていると、貴男はしょーもない男ではありますが、そんなにおかしいわけではないんです。あずさも姉さん女房らしくチャキチャキ貴男を仕切ってますし。ところがこの2人の前に現れる謎の兄妹が強烈なキャラクターなのでした。奈々瀬(美波)はあずさの高校時代の友達。とにかく人に嫌われることを極度に恐れる性格で、例えば男がセックスさせてくれなきゃ嫌うと言えばさせちゃうってぐらい。人の心を読んではへらへらとゴキゲンを取るという普通だったらぶち切れるぐらいイラつく女なのだけれど、何故か健気で可愛らしく見えてしまうのは、原作の設定もさることながら美波の可愛らしさもあると思う。ところが、そんな奈々瀬をあずさは無茶苦茶嫌ってるのです。何故かといえば、高校時代に彼氏を寝取られてるから。要はあずさの彼氏は奈々瀬にやらせてくれなきゃ嫌うと言ったんですね。

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つまり奈々瀬はいわゆる女に嫌われる女タイプと言う訳。したがって覗き観している我々とても女性はもしかしたら奈々瀬にイラつくかも。そんな奈々瀬に惹かれてしまう貴男、何回かのデートを重ねるうちに遂に奈々瀬とやっちゃうのでした。ただ男からすると、仕事が中々決まらない、姉さん女房に仕切られまくって、常にプレッシャーに晒されている、そんな時に可憐(に見えて)で自分に従わせられる女が目の前に現れたら浮気してしまう気持ちも解らなくはありません。何だか「だから男はバカなんだよ!」という女性陣の声が聞こえてきそうですが…。面白いのは、奈々瀬が貴男と寝てしまった理由。奈々瀬はあずさに「貴男に近づいたらあんたを嫌う」と脅されるわけです。それは当然自分の男だから。しかし同時に貴男からは「やらせてくれなきゃあずさを嫌う」と妙な脅しが。

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つまり「貴男があずさを嫌う=あずさと貴男が上手く行かなくなる=あずさは奈々瀬をきらう」という物凄い三段論法が成立してしまう訳。それでもこんな事は良くないという奈々瀬に対する貴男のセリフ「その辺は積極的に麻痺して行こうよ。」には大笑いでした。さて、先にも書きましたが、そんな2人のやり取りを天井裏からじっと見ていた山根。こいつがまた奈々瀬に引けを取らないほど面白い。常にぶっきらぼうなセリフ棒読み口調の浅野忠信の演技は監督の演出なんでしょうか。実は単に文語調で喋っているだけなんですけどね。だからここに書いても全く面白くありません。「奈々瀬、俺はマラソンに行って来るぞ。」なんて劇中頻繁に出てくるセリフもあるんですが、これを読んで笑える人はいないでしょう。この山根は奈々瀬から「お兄ちゃん」と呼ばれていますが、物語開始早々にあずさのクチから奈々瀬に兄はいないということが明かされます。

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じゃあなんなのか。実は山根は奈々瀬に復讐するために一緒に住んでいるのですが、奇妙としか言いようが無いこの関係も徐々に解明されていきます。いずれにしても「永遠の愛は疑ってしまうけど、永遠の憎しみなら信じられる。」という奈々瀬の想いに応える山根、そしてこの余りにも屈折した奇妙な2人の恋愛とそこに自らはまりに行く貴男、更にそれを必死で押し留めようとするあずさ、この四角関係から目が離せません。まあ客観的に考えると、実はあずさは4人の中では一番普通人で、時に過激な行動に出るけれど、その気持ちには至極共感できる存在だったりします。つまり知らず知らずのうちに航路をそれてしまうのを防ぐ灯台のごとく、極一般的な現実の基準点としての存在なんですね。彼女がいるからこそシュールな笑いが楽しめる、そういう意味では小池栄子は主演の2人以上に光っていたと思います。

個人的おススメ度4.0
今日の一言:情けない山田孝之ってイイ
総合評価:76点

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『乱暴と待機』予告編

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