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2010年10月 7日 (木)

七瀬ふたたび

Photo 筒井康隆の作家生活50周年記念映画にして、累計430万部、ドラマ化4度を誇る同名大ベストセラー小説の初映画化。超能力者の苦悩や葛藤、そして彼らの抹殺を企む謎の組織に立ち向かう火田七瀬を描いたSFドラマだ。主演は『猿ロック THE MOVIE』の芦名星。共演に『すべては海になる』の佐藤江梨子、『ラブコメ』の田中圭、吉田栄作、平泉成と若手とベテランが揃う。監督は小中和哉。
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原作への興味が薄れる映画

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原作は未読。筒井康隆の「家族八景」から始まる七瀬三部作の2作目なのだけれど、実は「家族八景」だけ読了しています。従って本編のざっとした流れは把握していますが、それにしても余りにもチープかつお手軽な作品で、単純に超能力者の葛藤を描いた作品として、お世辞にも良い出来とは言えません。ポスターで観る火田七瀬役の芦名星は気品のある美人。個々人の原作のイメージと合うかどうかはともかくとても魅力的で、筒井康隆本人が「芦名星はもっとも七瀬らしい七瀬である」とコメントするのも納得なのですが。ちなみに本編上映前に10分間の短編『七瀬ふたたび ~プロローグ~』という作品が上映され、タレントの中川翔子が監督を務めています。その昔テレビドラマ版を演じた多岐川裕美も出演していて、中々に凝った映像となっていました。

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で本編。原作に忠実に描かれているとのことですが、だとしたら原作が面白くないのか。大ベストセラーであることを考えたらそうではないのでしょうが、この本編を観て原作が読みたくなるかと問われれば否です。主人公・火田七瀬はテレパスで人の心が読める女性。とある事件の犯人として追われており、同じテレパスである山沢ノリオ(今井悠貴)、そしてテレキネシスの能力者であるヘンリー・フリーマン(ダンテ・カーヴァー)とともに逃げていました。ところが事件の犯人として追われているのかと思いきや、実は全ての超能力者抹殺を企てる謎の組織に追われているというのが本作のメインストーリー。追いかける組織のリーダー狩谷(吉田栄作)は七瀬たち能力者の居場所を感知できるらしいけれど具体的な能力は不明です。

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先ず根本的な問題として超能力の表現が上手くない。例えば七瀬が心を読んでいる時の相手の思考などはナレーションで聞かせ、映像で見せ、文字で表現する、という複数並行になっています。これは同時複数の思考の奔流が七瀬の頭に流れ込む様子を文字や映像を重ね合わせる表現を採る事で原作に忠実にあらんとしたのでしょう。しかし意図は解るのですが余りにバカ正直過ぎ。小説では心を読む部分は括弧に括られ一文ごとに書かれた文章になっていますが、それならば複数あっても普通に読めば解りますし、解らなければ読み直せばいい。しかし映画の場合は、音声と文字を含んだ映像という重なりは、情報量として多すぎるんです。結果として何を言っているのかがあやふやになってしまう。心を読んだ内容を理解することに頭を使わせないで欲しいのです。

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やたらと凝り過ぎかと思えば漁藤子(佐藤江梨子)のタイムトラベルは体が光ってあっさり終わりと今度は凝らなさ過ぎ。そして極めつけはヘンリーの能力・テレキネシスのお粗末な表現。その力で敵の頭を叩き潰すシーンではあからさまに何かの被り物を潰した状態にもうドン引きです。いかにも予算がないんだなぁと同情すらしてしまいました。結局、岩淵了(田中圭)の予知が一番オーソドックスながらもまともだったように思います。ところでこの岩淵了は七瀬の事が好きなのに、出会った時にずっと七瀬に心を覗かれていたことを恥じて彼女を避けているという設定。原作未読なのでよく解りませんが、なぜ読まれた事をそこまで延々と引きずるのかがきちっと描かれていないので、本当にただそれだけが理由なのだとしたら余りに深みのない登場人物です。

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さて、謎の組織に襲われ逃げる七瀬たち。浚われたノリオを助けるために敵のアジトへ向かいます。近づく決戦の時を前に七瀬は藤子に言うのでした。「あなたの能力は戦いには向いてない。だからここで待ってて。」いや、テレパスも十分向いてないと思いますが。(苦笑)湖の対岸のアジトまでテレキネシスで七瀬を飛ばすシーンは、今時流石にそりゃないだろうというクロマキーレベル。学生の自主制作映画じゃないんだからもうちょっとちゃんとやりましょうよ。そしてそのまま最強の敵・狩谷と対決に…。最強の敵といわれても、やったことは七瀬たちの場所を何らかの手段で感知したことと、ノリオの心の声を擬態して彼女を罠にはめたことぐらい。彼の能力が不明なことで彼の危険度や強さがイメージしにくいため、折角の決戦シーンも何だかいま一つのめり込めません。

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狩谷の心の奥底に入り込み、隠されていた想いを表面化させる七瀬。もっともそりゃ気持ちとしては嫌でしょうが、それで何かの攻撃になっているとするのは無理がありすぎじゃないの?なんて思っていたら、突然発火して殺されてしまう狩谷…。七瀬にはいつからパイロキネシスも備わっていたのでしょうか?超能力者を題材にした作品は幾らもありますが、今まで観た中でもかなり酷い部類に入る作品。芦名星が美人であること以外何も観るべき所がないと言ってもよいと思います。

個人的おススメ度2.0
今日の一言:七瀬じゃなくてメーテルかと思ったよ…
総合評価:45点

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