隠された日記 母たち、娘たち/Mères et filles
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時を越えた女性たちの生き様 |
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初日に観に行ったのですが、序盤の展開のあまりの眠さでそのまま半分以上寝てしまったため、とてもレビューなど書けず再鑑してきました。今度は睡眠もたっぷり、事前に食事することもなく臨むもやっぱり序盤は眠くなる。流石に眠りこそしませんでしたが、それでも頭を振りまくり、ガムを噛みまくって耐えしのぐ始末。うん、きっとこの作品の序盤は少なくとも私にとっては面白くないということなのでしょう。美しく愛らしいあのカトリーヌ・ドヌーヴも今は昔、今回は何やら良い体格の大阪オバチャン風な母親役です。もっとも劇中での存在感はさすがですけども。基本的にオドレイ役のマリナ・ハンズを中心に話が進んでいくのですが、気が強く自立した女性、しかしその心の奥には母親ルイーズへの愛情と恨みが降り積もっているという役どころを難なくこなしていました。物語はオドレイが仕事先のカナダからフランスに帰国したところから始まります。


母マルティーヌは評判の内科医で見るからにやり手。しかしお土産に渡したデジカメには文句をつけ、何だか2人の間にはうすら寒い空気が漂っています。聞いているとどうやらオドレイがカナダに行ってしまったのを、親を捨てて出て行った娘と捉えているらしい…。オドレイの方も仕事上のチャンスだったからだといいつつも罪悪感は抱えている。実は彼女は妊娠していて、先行きに不安を覚えての帰国だったのだけど、とてもじゃないが母にそんなことを相談する雰囲気じゃなく…。居たたまれなくなった彼女は、海辺にある祖父の家に滞在してそこで仕事をすることに決めるのでした。そして彼女がこの家のキッチンの戸棚から祖母ルイーズの日記を見つけたことから話が本格的に動き始めるのです。日記には自分の悩みや子供たちへの気持ちが綴られていて、本作はそれが徐々に読み進められていくようにある謎に迫っていくのでした。


その謎とは祖母の失踪した理由のこと。実はマルティーヌの話では祖母ルイーズはある日突然彼女と弟のミシェル(ミシェル・デュショーソワ)を置いて出て行ったということになっています。しかし、彼女たち自身の記憶でも、実際に私たちが観る映像でも、ルイーズは非常に聡明な女性でありとてもそんなことをするようには見えません。彼女が家を出て行く、即ち子供たちを捨てるという結果になってしまった過程を当時の日常生活とともに描くことは、マルティーヌの人生や母に対する想い、そしてそんなマルティーヌの娘であるオドレイの母に対する想いとこれまでの人生をも明らかにすることに他なりません。何故なら彼女たちは一つの想いで連綿と繋がる女性たちだから。面白い演出だったのが当時のルイーズとオドレイが時間を越えて会話をするシーン。当然幻想なのですが、折に触れて何かを示唆するオドレイの話は、この物語の謎にせまるヒントにもなっています。


ルイーズの生きた時代は女性の社会進出など考えられない時代。しかしそんな環境にあっても彼女は自立した女性でありたいと願っていました。しかし夫(=祖父)はそれを許さず、彼女を日がな一日自宅に縛りつけておこうとします。これは彼女が悪い訳でも夫が悪い訳でもなく、単純にルイーズが生まれてくるのが早すぎたという不運でしかないのですが、それだけに彼女は自分が成し得ないことを娘のマルティーヌに託すのでした。要は祖母の想いを背負って成長したマルティーヌは、ごく自然に自分の娘オドレイにも同じ想いを託した訳で、何のことはない結局マルティーヌとオドレイは本来非常に良く似た母娘なのです。オドレイの体調不良に気付いたマルティーヌが彼女を受診させ自宅に送り届けた時、自分の母の日記を初めて読むことになるのですが、それは祖母・母・娘が時空を隔てて同じ場所に集う貴重なシーン。そしてそこで全てが明らかになります。


ただ、結末はわかったのですが、過程が私にはちょっと?でした。要は夫の締め付けに我慢の限界が来たルイーズは、銀行口座からお金を全て下ろし家を出ようと覚悟を決める訳です。しかし恐らくは銀行からの知らせがあったのでしょう、早々に夫にその覚悟はばれてしまうのでした。当然激怒する夫。「金はくれてやるからこの家を出て行け!」などと言われて結局彼女はそのまま出て行ったのです……と思いきや、シーンが変わると車に乗った夫と子供たちを見送るルイーズの姿が…。あれ?その場ですぐ出て行ったのではなかったの?出て行こうとしたけれど、おろしたお金と日記をしまった戸棚に夫が寄りかかっていてそれを持ち出せない、仕方がないと諦めて出て行った――だからこそ、オドレイがそのお金と日記を発見できた、そう思っていたのですが。どうもその辺の流れが良く解りません。もっともそれすら本当の結末を聞くとどちらでも良く思えます。


マルティーヌが父から聞いた話、ルイーズの日記の内容を照らし合わせて導かれた答えは、祖父が祖母を殺して埋めたというものでした。もちろんそれに関する描写は一切ないので、全ては登場人物たるオドレイの想像だと言い切ることも可能です。しかしきっと本作で重要なのはそこではなく、母の自分に対する本当の想いを知ったマルティーヌが、オドレイに捨てられたというわだかまりを解消し、それによってオドレイも未来に向かって生まれ来る我が子とともに歩いてゆこうと心を決めることにあるのでしょう。ルイーズが娘に託した本当の想いが孫のオドレイにまで伝わった瞬間がそこにはありました。
個人的おススメ度3.5
今日の一言:エッフェル塔柄のドレスはちょっと…
総合評価:71点
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『隠された日記 母たち、娘たち』予告編
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