脇役物語~Cast me if you can
『釣りバカ日誌』シリーズを始め、数々の作品に出演してきた名脇役・益岡徹の長編映画初主演作品。同時に緒方篤監督の長編デビュー作でもある。万年脇役の中年俳優がウディ・アレンの映画のリメイクで主演に抜擢されるも思わぬ事件でそれを降板させられる。なんとか主演に返り咲こうとあの手この手を試みるのだが…。共演に永作博美、津川雅彦、松坂慶子らが出演している。 |
味のある脇役たちが一番面白い |
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ハッキリ言うとこの映画の一番素晴らしい点は主演に益岡徹をキャスティングしてところ。そもそもの設定として、主人公の松崎ヒロシは万年脇役ばかりの中年俳優。これはもう数々の作品に脇役として出演し「名脇役」と呼ばれるに相応しい益岡徹そのものとしか言いようがありません。本人はインタビューで「いやいや…面映いです(笑)」などと謙遜しているけれど、故山田辰夫さんなどを見ても解るとおり、様々な役を何でもしかも上手くこなせるだけの演技力がなければこれだけ多くの作品に出演し、尚且つ広く名前を知られることなどあるはずがないのです。更に今回は“脇役”に若手新人女優アヤ役で永作博美が、そしてヒロシの父で大物劇作家の健太役に津川雅彦がくるというこの配置の面白さ。それぞれが芸達者なだけに実に魅力的な登場人物なのでした。
しかし、脚本は一見手の込んでいるように見えて…そう面白いわけでもない。一応コメディドラマではあるものの別に笑える要素もそんなにあるわけじゃないし。要は「万年脇役ということはどんな役でも幅広く演じられると言うことで、だから街を歩いていても色んな人と勘違いされる。」ということがベースになって話は進んでいきます。もっともこれをアヤが評すると「名優は瞬時にいろんなキャラに変身できるから名優なんでしょ」ということになるらしいのですが。例えばスーパーの前で倒れた自転車を起していたらおばちゃんにスーパーの店員に間違われ、舞台の会場で少女が迷子で困っていたのを助けようとしたら誘拐犯に間違われる。そして買った花束を忘れた妙齢の婦人を追いかけてそれを渡すと、婦人の不倫相手と間違われる…。
この不倫相手が黒岩トシ子(松坂慶子)という大物議員の妻だったから大変!せっかく決まっていたウディ・アレン映画の日本版リメイクの主役を降ろされてしまうことになるのです。コメディ映画の物語の発端などこのぐらい下らなくても良いのでしょうが、流石に「名脇役=勘違いされやすい」の法則はちと違和感があるでしょう。物語的にはアヤを好きになってしまったヒロシの恋愛の感情と、大物劇作家の息子なのに万年脇役というある種自虐的な感情を両輪として、主役を取り戻すためにあの手この手を尽くして奔走するヒロシを描いて行きます。ところが、アヤとの関係性も父親との関係性も今ひとつ中途半端でヒロシがその時々にどうしたいのかが見えてきにくい。何でかと言えば、とにかく話としては主演を取り戻すための計画と実行の部分がお話のメインになってしまっているから。
もっとアヤに対して、健太に対してヒロシの気持ちがどういうものなのかを片手間ではなく、しっかり伝わるように見せて欲しいのです。それぞれに対して特別な想いを抱いているのはヒロシだけなのですから。更に言うと、アメリカに演劇留学する程に熱心なアヤと万年脇役のヒロシの間で“演じる”と言う部分に関してどういった共鳴があったのかがとても希薄。にも拘らず、紆余曲折を経て不倫の誤解が解けヒロシが再び主役に抜擢された時、彼はアヤを主役に推薦して自分が降板すると言う道を選択するのです。伏線としてキャスティングプロデューサーのジェーン(イーデス・ハンソン)とアヤが顔見知りで彼女が留学することまで知っていたなんてシーンは用意されていますが、これもまた余りにも不自然で無理筋ってものでしょう。
個々人の芝居の上手さとテンポの良さで何となく観れてしまうものの、せっかくの魅力的な登場人物たち自身の係わり合いの描き方が甘い。言い換えると完全に俳優に助けられた作品と言えます。地味に引きの絵だけで登場するホームレス役の柄本明は遠目なのにすぐ解る存在感、トシ子の年の差不倫相手のマサルは柄本佑、ついでに映画の女プロデューサー役に角替和枝と何とここは家族共演。ヒロシがよく行くカフェのいつも乱暴なサービスをするウェイトレスに江口のりこ、ヒロシの所属事務所の社長が佐藤蛾次郎と、これでもかと言わんばかりに“名脇役”が登場して、いつもの如く個性的な演技を見せてくれるところがある意味一番面白いし笑えるところだと思います。そうそう、アクション・オン・フィルム国際映画祭の最優秀オープニング賞を獲得した本作のオープニングアニメーションは確かによく出来ていました。
個人的おススメ度3.0
今日の一言:永作博美が不惑とはねぇ!
総合評価:60点
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『脇役物語』予告編
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