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2010年10月16日 (土)

冬の小鳥/여행자

Photo 『シークレット・サンシャイン』のイ・チャンドン監督が脚本に惚れ込みプロデュース、監督はこれがデビュー作となるウニー・ルコントという韓仏合作映画。実際にフランスに養女として引取られたルコント監督自身の体験をベースに、父親に捨てられた少女が悲しい毎日を送りながらも徐々にその事実を受け入れ、未来に向かって再生していく様子を描いた感動作だ。主人公の女の子ジニをキム・セロンが演じる。
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大人にならざるを得なかった少女

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素晴らしい作品でした。昨年の東京国際映画祭でアジアの風部門で最優秀アジア映画賞を受賞した作品、公開を心待ちにしていました。上映開始とともに映し出されるジニとその父。9歳の少女の視線で映し出される映像には父親の顔が映っていません。しかしお出かけをし、ご飯を一緒に食べ、父の飲む酒をおねだりするジニの弾けるような、まさに天使のような幸せ一杯の笑顔からは、彼女がどれほど父親が大好きなのかということがストレートに伝わってきます。もちろん彼女はこの後、自分に降りかかる運命など知る由もありません。この強烈なまでのオープニング、これだけで物語の間ずっと私たちはジニの想いを直接的に感じることが出来るのです。予告編やポスターからこのジニ役キム・セロンちゃんの可愛らしさは際立っていましたが、この溢れんばかりの表現力は衝撃的でした。ちなみに父親役は何とソル・ギョング。

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彼はジニを施設に預ける時にちょっとだけ顔を見せるだけなのですが、何と言う贅沢なキャスティングでしょうか。さて、いきなり何も知らされずあれほど大好きだった父に捨てられたジニ。実はこのジニは本作の監督、ウニー・ルコント自身がモデルです。監督自身が9歳のときに韓国の養護施設からフランスへと養女に出されたのだそうで、言ってみればこの作品は彼女の自叙伝とも言えるんですね。なるほど、観ていてジニの気持ちの変化が手に取るように解るのは、監督の実体験がベースだったからなのです。とはいえ繊細で壊れそうな9歳の少女の気持ちをこれだけ丁寧に描き出したルコント監督の演出は素晴らしいとしか言いようがありません。施設に入れられて、しばらくはずっと馴染めないジニ。大好きな、優しいお父さんが私を捨てる訳がない。きっと私を迎えに来てくれるはず。そんな気持ちから、彼女は子供たちの中で孤立していきます。

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食事も採らず、誰とも口をきかない彼女。ジニは頭の良い子です、ですから自分が捨てられたのだということは薄々解っていた筈、理屈としては。しかし、認めてしまったら本当に一人ぼっちになってしまう。崩れそうな自分を支えるためには、ひたすら自分の殻に篭り、自分の小さな希望を守り抜くしかないのです。夜中に鍋にこびり付いたオコゲを剥がして泣きながらほお張るジニの姿に胸が一杯になりました。そんな彼女に転機が訪れたのは、偶然にも仲間のスッキ(パク・ドヨン)が夜中にこっそり洗濯をしている姿を目撃してから。実は11歳の彼女は既に生理が来ていたのですが、それがばれると養女の引取り手がいなくなるため、こっそり自分で洗って誤魔化していたのです。秘密の共有が2人の距離をぐっと近づけたのでしょうか、ジニはスッキにだけ徐々に心を開いてゆきます。この頃からジニの表情に変化が見え始めるのでした。

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ある日、スッキとジニは傷つき死に掛けた小鳥を見つます。2人は大人には内緒でこっそり餌をやり面倒を見てあげることにするのでした。この頃からスッキはアメリカ人の養女になってアメリカに行きたいという夢を話すようになります。子供らしく未来への希望に溢れた瞳で活き活きと語るスッキに対して、ジニは相変わらず「私はここに残る。」の一辺倒。いまだ断ち切りがたい父への愛が覗かれるのですが、オープニングのあの幸せな満面の笑みを見た私たちからすれば彼女の気持ちが痛いほど良く解ります。しかし、とある雨の日を境に彼女の気持ちの変化が加速するのでした。それはあの小鳥。外で秘密に世話をしていた小鳥を、施設の中に入れてあげたものの、雨に濡れて弱った小鳥はそのまま死んでしまいます。2人は土に埋めてお墓を作ってあげるのですが、この小鳥はとりもなおさず彼女たちの象徴でした。

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親鳥からはぐれた小鳥が生きられずに死んだ、このある種冷徹な事実がジニに与えた影響は大きかったのでしょう。あれほど「私はここに残る」と言っていた彼女が、スッキに「私と一緒なら来るでしょ?」と問われると、頷くようになるのです。さて、本作は基本的に子供の視線・思考をベースに置いて作られていますが、観ている私たちには当然大人としての視線・思考が存在します。それは普通に考えて想定できる悲劇的な結末に対して、心理的な備えが出来るということであり、それが大人として生きるという意味でもあります。即ちスッキが無邪気に「私が(養父母に)ジニも連れて行ってくれるように頼めば大丈夫だよ。」と語る言葉から、私たちは後に訪れる残酷な結末がある程度予想できるということ。しかし、当然ながら9歳のジニにはそれは無理な相談です。唯一心を開いていたスッキがいなくなったジニ、やり場のない苛立ちは残酷な行為を呼ぶのでした。

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他の子供たちに当り散らし、折角もらった人形を壊しまくる姿は、我が子を殺す親のようにも見えます。更に院長から元の家の住所には既にジニの家族は住んでいないということを聞かされた時、彼女の中で今まで大切に大切に守ってきた小さなそして唯一の希望が砕け散ったのでした。小鳥を埋めたお墓を掘り返し自分を埋めるジニ。それは父親が大好きだったジニの死、つまり過去の自分との決別を意味するのかもしれません。9歳の少女でありながら、この時彼女は大人になったのではないでしょうか。いや、大人にならなければ生きていけないことを悟ったのだと思うのです。遂にジニ自身が施設を旅立ちフランス人の養父母の下に旅立つ日、それまではいつも仏頂面で記念写真に写っていたけれど、久しぶりに笑顔を浮かべて写る彼女。フランスの空港の到着ゲートから出てくるジニの目からは未来への希望と不安が見て取れました。

個人的おススメ度4.5
今日の一言:キム・セロンちゃん、将来有望です
総合評価:84点

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『冬の小鳥』予告編

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