ブロンド少女は過激に美しく
撮影中に100歳の誕生日を迎えた巨匠マノエル・デ・オリヴェイラ監督がエサ・デ・ケイロスの短編小説をモチーフに映画化。とある男が列車で隣の席に座った婦人に、自らの衝撃的な体験を告白する様子を回想を中心に描いている。主演は監督の孫のリカルド・トレパ。驚きの結末に注目。>>公式サイト
あらすじ・作品情報へ ←みなさんの応援クリックに感謝デス
『ブロンド少女は過激に美しく』だなんて一見何か勘違いしてしまいそうなタイトルだけれど、ポルトガルの巨匠マノエル・デ・オリヴェイラ監督の作品です。そもそも原題は『SINGULARIDADES DE UMA RAPARIGA LOURA』。もちろんポルトガル語なんですが、「ブロンド少女の特異さ」という意味で、エサ・デ・ケイロスの1873年の短編を元に現代に置き換えて作られたのだそう。個人的には結末まで観ても、過激というより特異、風変わり、要は“変わってる”という感じを強く受けました。僅か64分の中で淡々と語られるある男の恋愛話なのですが、やや時代がかった映像やセリフに思えるのは、オリヴェイラ監督の100歳という年齢から来る世界観なのでしょうか。
そもそも列車の中で出会った見知らぬ婦人にマカリオ(リカルド・トレパ)が思い余ったような表情で「『妻にも友にも言えないような話は、見知らぬ人に話すべし』と言います。私の話を聞いて頂けますか?」と話しかけるのが始まり。物語は終始この婦人にマカリオが語った内容を映像で見せてくれるというものでした。リスボンの伯父の店の会計士として働いていたマカリオは、向かいの窓に見える美少女ルイザ(カタリナ・ヴァレンシュタイン)に一目惚れしてしまいます。友人のつてを使って彼女と知り合うよう手はずを整えるあたりの若い男の気持ちは私にもとても良く理解できます。しかも「一目会ったその日から、恋の花咲くこともある」ではないですがいきなり両思いだというのだからラッキー。
しかし、そこからすぐ「よし!彼女と結婚しよう。」となるのが先に書いた通りあまり今っぽくない。しかも彼女にプロポーズするより先に叔父さんの許可を求めるんですね。何か日本以上に家と家の結びつきを重んじるかのように感じました。ところが何故か叔父さんは、どうしても結婚するならクビだし、この家を出て行けとまで激怒します。どうしてこんなに怒るのか、これはハッキリと劇中では描かれていないものの、最後まで観ていて感じた限りでは、「自分の力で何もなし得ていない者が結婚を口にするなど100年早い!」そんなところではないかと思います。それが証拠に失業した彼が商社の仕事でカーボヴェルデに赴き“一財産作った”後に改めて彼の結婚を許していますから。
ちなみにカーボヴェルデはリスボンから南南西、アフリカ西岸にある諸島で1975年までポルトガル領だったところ。もちろん話自体はそこまで昔ではないものの、この一財産とはユーロじゃなくて、きっと旧通貨のエスクードなのかなぁなとど思えてしまうレトロな雰囲気を感じてしまいます。ただいずれにしろ話そのものはここまで非常に単調。私がこの作品が面白いと思えるのはこの後のラストシーンがあるからなのです。全てが順風満帆に進むかと思わせておいてのルイザのこの行為。(ネタバレ →結婚指輪を買いに行った宝石屋で何と指輪を万引き! )結婚を控えた女性として、確かにこれは“特異”というか“変わってる”というか…。(ネタバレ →結局マカリオは怒って婚約破棄 )それまでの淡々さが嘘のように観客の驚きを誘った後、いきなりまた淡々と走り去る列車の姿でエンディングを迎える。
このギャップのある演出が実に秀逸でこの作品の印象をがらっと変える効果を持っていると思います。俗っぽい話をすると、結果的にはとある男の失恋話なので、これを聞かされていたご婦人はどう思ったのでしょう、そこが気になりました。(笑)本作の日本公開には同時上映があります。これはジャン・リュック・ゴダールの1954年の作品で『シャルロットとジュール』という13分の短編モノクロ映画。当時兵役中だったジャン=ポール・ベルモンドの声をゴダール監督自身がアフレコしているそうで、アパートの一室という単一シチュエーションで繰り広げられる男女の会話劇がユニークでした。ヒロインのアンヌ・コレットがチャーミングですが、この方、既に女優業は引退されているそうです。
個人的おススメ度3.5 今日の一言:『コロンブス 永遠の海』は寝た。 総合評価:71点
↑いつも応援して頂き感謝です! 今後ともポチッとご協力頂けると嬉しいです♪
『ブロンド少女は過激に美しく』予告編
| 固定リンク
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: ブロンド少女は過激に美しく :
» 『ブロンド少女は過激に美しく』 サイレントの作法? [Days of Books, Films]
マノエル・デ・オリヴェイラ監督は『ブロンド少女は過激に美しく(原題:Singul [続きを読む]
受信: 2010年10月14日 (木) 16時52分
» ブロンド少女は過激に美しく [Said the one winning]
監督 マノエル・デ・オリヴェイラ出演 リカルド・トレ... [続きを読む]
受信: 2010年10月14日 (木) 21時01分
» 「ブロンド少女は過激に美しく」に驚く [大江戸時夫の東京温度]
映画『ブロンド少女は過激に美しく』は、現在101歳のポルトガルの巨匠マノエル・ド [続きを読む]
受信: 2010年10月15日 (金) 00時14分
» ブロンド少女は過激に美しく/リカルド・トレパ [カノンな日々]
劇場予告編を観て気になってた映画なんですが、本編64分という中編作品(14分の短編作品を同時上映)なんだそうで、そういう作品が上映されるのも珍しいしこれは何かあるのかもと観に行ってみました。ポルトガルの文豪エサ・デ・ケイロスの短編小説をこの撮影中に100歳の誕生日...... [続きを読む]
受信: 2010年10月26日 (火) 22時42分
» ブロンド少女は過激に美しく [佐藤秀の徒然幻視録]
公式サイト。エサ・デ・ケイロス原作、ポルトガル映画タイトル:SINGULARIDADES DE UMA RAPARIGA LOURA、英題:Eccentricities of a Blond Hair Girl。マノエル・デ・オリヴェイラ監督、リカルド・トレパ、カタリナ・ヴァレンシュタイン、ディオゴ・ドリア、ジュリア・ブイセル...... [続きを読む]
受信: 2010年11月 1日 (月) 20時37分
» ブロンド少女は過激に美しく [ダイターンクラッシュ!!]
2010年11月5日(金) 19:00~ TOHOシネマズシャンテ3 料金:0円(フリーパス) パンフレット:800円(買っていない) 『ブロンド少女は過激に美しく』公式サイト フリーパス9本目。 ポルトガルの100歳の爺さんの映画。64分と短い。 それだからか、ゴダールの短編「シャルロットとジュール」というのがオマケ。 「シャルロットとジュール」は、ゴダールらしい、男が延々と喋り続けているものだった。 喋り続ける男は、若き日のジャン=ポール・ベルモンドなのだが、声はアフレコでゴダールだそう... [続きを読む]
受信: 2010年11月 7日 (日) 00時11分
» 『ブロンド少女は過激に美しく』(2009)/ポルト... [NiceOne!!]
原題:SINGULARIDADESDEUMARAPARIGALOURA/ECCENTRICITIESOFABLONDE-HAIREDGIRL監督・脚本:マノエル・デ・オリヴェイラ原作:エサ・デ・ケイロス出演:リカルド・トレパ、カタリナ・ヴァレンシュタイン、... [続きを読む]
受信: 2010年11月10日 (水) 01時35分
» 『シャルロットとジュール』/『ブロンド少女は過激に美しく』・・・ ※『ブロンド〜』はネタバレ有 [〜青いそよ風が吹く街角〜]
二作品併映:?『シャルロットとジュール』1958年:フランス映画、ジャン=リュック・ゴダール監督、ジャン=ポール・ベルモンド、アンヌ・コレット、ジェラール・ブラン、ジャン=リュック・ゴダール出演。 ?『ブロンド少女は過激に美しく』(ポスター写真)2009年:ポルトガル+スペイン+フランス合作映画、リカルド・トレパ、カタリナ・ヴァレンシュタイン出演。... [続きを読む]
受信: 2010年11月28日 (日) 16時34分
» 省略と跳躍。『ブロンド少女は過激に美しく』 [映画雑記・COLOR of CINEMA]
「妻にも友にも言えないような話は、見知らぬ人に話すべし…」ゆれるカーテン、夕べの鐘、くるくると廻される扇、クイッとあがる踵、リスボンの街。先日(12月11日)103歳の誕生日を迎えたマノエル・デ・オリ... [続きを読む]
受信: 2010年12月18日 (土) 14時44分
» ブロンド少女は過激に美しく [Art-Millー2]
ブロンド少女は過激に美しく
原題:SINGULARIDADES DE UMA RAPARIGA LOURA
原作:エサ・デ・ケイロス
監督:マノエル・デ・オリヴェイラ
キャスト:
リカルド・トレパ
カタリナ・ヴァレンシュタイン
ディオゴ・ドリア
ジュリア・ブイセル
レオノール・シルヴェイラ 他
2009/ポルトガル・フランス・スペイン
オフィシャルサイト
《妻にも友にも言えないような話は、見知らぬ人に話すべし・・・》と、秘密めいた話だが、それはなんともお粗末な顛末で... [続きを読む]
受信: 2011年1月10日 (月) 21時42分
» ブロンド少女は過激に美しく♪(2009) [銅版画制作の日々]
ECCENTRICITIES OF A BLONDE-HAIRED GIRL
邦題よりも原題である、「ブロンド少女の特異さ」の方がマッチしているようですね。
オチにびっくり!まさかこんな顛末だとは、、、、。
京都シネマにて鑑賞。今週末で終了となるので、急いで観に行って来ました。撮影中に何...... [続きを読む]
受信: 2011年1月19日 (水) 23時09分
» 【映画】ブロンド少女は過激に美しく [【@らんだむレビューなう!】 Multi Culture Review Blog]
『ブロンド少女は過激に美しく』(2009年・監督:マノエル・デ・オリヴェイラ)
ブログを再開したものの、やはりどうも調子が戻らない。そんな気分を反映してか、“巨匠”オリヴェイ [続きを読む]
受信: 2011年3月27日 (日) 23時15分
» 『ブロンド少女は過激に美しく』『ショパン』をギンレイホールで観て、最低2本だなふじき☆,☆ [ふじき78の死屍累々映画日記]
◆『ブロンド少女は過激に美しく』
五つ星評価で【☆爺さんはどけ】
100歳の爺さんが撮った中編映画。
つまんない。
「ブロンド少女」は綺麗だけど、それだけだ。
よかったね ... [続きを読む]
受信: 2011年6月13日 (月) 01時36分
» ブロンド少女は過激に美しく/ショパン 愛と哀しみの旋律 [あーうぃ だにぇっと]
6月12日(日)“ブロンド少女は過激に美しく”@ギンレイホール。
日曜午後の回で観劇したのだが空いていた。
人気薄のようだ。 [続きを読む]
受信: 2011年6月20日 (月) 21時03分
最近のコメント