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2010年11月14日 (日)

100歳の少年と12通の手紙

10012 『地上5センチの恋心』のエリック・=エマニュエル・シュミット監督が自身の書いた原作を映画化した作品。白血病に冒され余命僅か12日となった少年が、残された1日を10年に見立てて生を全うする感動のドラマだ。主人公オスカーには新人のアミール、主人公と共に残された12日間を共に過ごす心優しい女性ローズを『メルシィ!人生』のミシェル・ラロックが演じた。
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子供だけど人生の先輩、オスカー

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白血病で余命僅か、しかも主人公は年端も行かない子供と来てはいわゆる典型的な難病モノ作品だと思ってしまっても無理のないところ。しかしながら本作は思いのほかに明るい作品でした。それは何故か、一重に主人公オスカー(アミール)の目線で物語が描かれているからです。何しろこのオスカー、物語の冒頭で自分の余命が僅かであることを知ってしまいます。実は医師のデュッセルドルフ先生が両親に余命告知をしている様子を覗き見してしまったんですね。ショックの余り今日の所はオスカーと顔を合わせられないと泣き崩れる母。父はそんな母を支えながら結局その日はそのまま病院を去ります。オスカーにしてみたら、死ぬのは自分であって一番ショックなのも自分。なのに両親は自分にその事実を隠そうとしている…。結局彼はこの日から大人と口を利かなくなります。

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ところが。唯一の例外がローズ(ミシェル・ラロック)でした。病院にピザの配達に来た彼女は誰彼構わず悪態をつきまくり。オスカーに対してだって遠慮なく毒づきます。しかし彼にとってはそんな彼女が新鮮に映り、彼女にだけは心を開くのでした。何も話せないとオスカーの状態が全くわからない。困ったデュッセルドルフ先生はローズにオスカーの話し相手になってくれるように依頼します。かくしてオスカーの人生最後の12日間はローズと言う親友を得ることで始るのでした。しかもこのローズ、最初から12日間の付き合いだと宣言してしまいます。それは即ちあなたの余命は12日間だと告げているのと同じですよね。しかし、彼は両親や周りの大人と違って、むしろ嘘をつかない彼女を益々信頼するようになります。そこでローズが提案したのが、1日を10年と考えて生活すること。

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即ち残りの12日間で人生を全うしようという意味です。子供らしい柔軟な受け止め方でその提案を呑むオスカー。要するに“ごっこ”でしかないけれど、彼にとっては文字通り人生の全てを賭けた“ごっこ”です。そしてもう一つは毎日必ず神様に手紙を書くこと。初恋、結婚、妻との別れなど、濃密な人生をオスカーは経験し、それを手紙にしたためては神様にお願いをするのです。この手紙の中身がどうしようもなく純粋で切ない…。大人になっていくつもりでも当然子供な訳で、オスカーなりに一生懸命想像力を働かせて精一杯生きた証がそこにあるのです。「大人の2人がすることは一通りしたよ。でも舌を入れたキスだけはしてないんだ。子供が出来ちゃうから。」20歳のオスカーのこんな可愛らしい言葉を優しい愛で受け止めるローズ。

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実はローズは最初この以来を受けたときには、12日間毎日ピザの注文をするという交換条件が目当てでした。しかし徐々に彼女も変わって行きます。しまいには生焼けのピザを指摘されでも「急いでいたの。」なんて言い残しオスカーの病室に向かう始末。しかし12日間で人生を全うしようとするからには、必ず何度か挫折がオスカーを襲います。そんな時に彼を支えたのがローズのプロレス話でした。彼の前でローズは元プロレスラーでチャンピオンだということになっているのですが、彼女が現役時代の試合の様子を語って聞かせるとき、オスカーの想像したその様子が映像としてスクリーンに映し出されます。およそ難病モノには似つかわしくないコミカルなプロレスシーン。観客は父であり母でありデュッセルドルフ先生や看護士、それに病院の友達。色鮮やかに楽しく描かれる試合の様子はその都度オスカーの悩みを救うのです。

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それは彼とローズの心の交流そのものに他なりません。ただそれだけでは単純に余命僅かな子供の相手をしている優しい女性なだけ。ローズは彼を子供ではなく一人の人間として対等にみて話をしていました。だからこそ辛い現実も突きつけます。一日で成長して花を咲かせて枯れてしまう砂漠の花。彼女はそれをオスカーに見せるのでした。即ちオスカーは普通の人の感覚でいえば一日で花を咲かせて枯れてしまう人間な訳です。しかし花は種を残し、そしてまた次の花が咲く。オスカーの存在は両親やローズやデュッセルドルフ先生たち病院の仲間に必ず何かを残すはずで、その意味であなたの魂は永遠なのだと諭しているようにも思えます。人は周りの人に忘れられた時が本当の死だといいます。もしかしたらこれはローズや両親が、オスカーを2度死なせはしないという誓いの意味もあったのかもしれません。

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オスカーが逝ってしまった時にデュッセルドルフ先生の言葉「私たちの方こそ彼に見守られていたんだ。」は胸に響きました。私たちはいつの間にか彼を見守るローズの視線になっていたように思います。しかし後から考えると、たった12日間でしたが精一杯人生を生きることの素晴らしさを教えてもらった気がします。何にだって真剣に向き合って自分に正直に生きること。いかに私たちが時を無駄に過ごしているのかが突きつけられる思いではないですか。子供らしい瑞々しい感性に彩られたこの作品は、ひたすら涙涙の難病モノとは一線を画し、見ている私たちに清清しさすら感じさせてくれます。

個人的おススメ度4.0
今日の一言:日本でもこういう作品が作れないかなぁ
総合評価:78点

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『100歳の少年と12通の手紙』予告編

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受信: 2010年11月14日 (日) 08時25分

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受信: 2010年11月14日 (日) 16時00分

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受信: 2010年11月14日 (日) 16時12分

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受信: 2010年11月14日 (日) 18時18分

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受信: 2010年11月27日 (土) 10時34分

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» 100歳の少年と12通の手紙 [Diarydiary!]
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受信: 2011年2月14日 (月) 15時05分

» 100歳の少年と12通の手紙。 [ブロ☆はじ。《β版》]
http://tb.treview.jp/TV/tb.cgi/15006007/0/65917/XHZqUkVr/1297040495 [続きを読む]

受信: 2011年2月16日 (水) 06時29分

» 映画「100歳の少年と12通の手紙」 [Andre's Review]
Oscar et la dame rose フランス 2009 2010年11月公開 劇場鑑賞 近くの劇場に別の作品を観に行った際に、同じスクリーンで2本連続で公開されていて、せっかくの機会なので鑑賞することにしました。 小児病棟に入院中の10歳の少年オスカー(アミール)は、医者が両親に自分の命がそう長くないことを告げているのを聞いてしまい、不自然に彼に気を使う周囲の大人たちに対し心を閉ざし口をきかなくなり、医師(マックス・フォン・シドー)に病院の廊下で出会った気風の良い宅配ピザの女性ローズとな... [続きを読む]

受信: 2011年3月 5日 (土) 01時02分

» 100歳の少年と12通の手紙 [迷宮映画館]
とってもキリスト教的という、オスカーはイエスですな。 [続きを読む]

受信: 2011年3月24日 (木) 18時01分

» 『リトル・ランボーズ』『100歳の少年と12通の手紙』を早稲田松竹で観て、感想をライトに抑えるふじき☆☆☆,☆☆ [ふじき78の死屍累々映画日記]
早稲田松竹こども主役映画2本立て。 いやあ、この劇場、使わない癖に舞台が立派だ。 最新鋭のテクノロジーが凝縮されてる類の映画館ではないけど、 外の光が上映中の場内に届 ... [続きを読む]

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» 「100歳の少年と12通の手紙」「プチ・ニコラ」感想 [ポコアポコヤ 映画倉庫]
フランスの少年映画2つ。それぞれ3つ☆   [続きを読む]

受信: 2011年6月20日 (月) 13時05分

» 映画評「100歳の少年と12通の手紙」 [プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]]
☆☆☆(6点/10点満点中) 2009年フランス映画 監督エリック=エマニュエル・シュミット ネタバレあり [続きを読む]

受信: 2011年9月21日 (水) 10時49分

» 100 歳の少年と12通の手紙 Oscar et la dame rose [映画!That' s Entertainment]
●「100 歳の少年と12通の手紙 Oscar et la dame rose」 2009 フランス、Pan Européenne Production,Studio Canal ,105min. 監督・原作:エリック・=エマニュエル・シュミット 音楽:ミシェル・ルグラン 出演:ミシェル・ラロック、アミール、マックス・フォン・シドー、ミレーヌ・ドモンジョ他 <評価:★★★★★★★☆☆☆> <感想> 難病モノは苦手なんで、どうなるかと思ったけど、ファンタジーなのね。 如何にもフランス... [続きを読む]

受信: 2011年11月19日 (土) 13時44分

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