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2010年11月22日 (月)

黒く濁る村/이끼

Photo 2007年にウェブに掲載されたユン・テホ原作の人気漫画を映画化。父の訃報を受け取った青年が訪れたやまあいの山村。しかし村長を筆頭にそこに住む住人たちはどこかがおかしい…。村に隠された秘密とは一体何なのか。主演は『殺人の追憶』のパク・ヘイル。共演に『最後の贈り物』のホ・ジュノ、チョン・ジェヨン、ユ・ジュンサンらが出演。監督は『シルミド/SILMIDO』カン・ウソク。
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これで村は綺麗になったのか?

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事前の予告編で受けていたイメージと大分違うと思ったら、元はウェブに掲載されていた人気漫画が原作でした。何しろ主演のパク・ヘイルといえば傑作『殺人の追憶』の印象があまりにも強いため、その上でのやまあいの山村を舞台にしたミステリーとくればどうしても期待してしまいます。韓国映画にしてはどちらかといえば濃くないライトな感じ、殺人も何件かありますが、別に目を覆うというほどのものもなく、悪く言えば人間の情念の奥深くを抉るまでの描き方はしていませんでした。とはいえ雰囲気は結構ダーク。登場する俳優たちの纏う異常な空気感や、あからさまに怪しいけれどそれが何なのかが解らないもどかしさは、何だか横溝正史のミステリー風でもありました。ここから先はネタに若干触れて書きますので、これから鑑賞の方はご注意下さい。

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1978年頃、とある山村にあったサムドク祈祷院、ここが全ての始まりでした。ここで信者の信頼を集めていたのがユ・モッキョン(ホ・ジュノ)。それが面白くない院長が懇意にしていたチョン・ヨンドク刑事(チョン・ジェヨン)にユ氏を逮捕させてしまいます。この当時の刑事は韓国映画だと漏れなくどうしようもない奴等。国家権力を持たせたチンピラと同じで取調べと称して殴る蹴るなど当たり前。ところが、このユ氏のカリスマがまた大したもので、入れられた牢屋では犯罪者たちが、そしてしまいにはチョン刑事までも彼の魅力の虜になってしまうのです。相手をじっと見つめるその目、怒るでも哀れむでも笑うでもないその目の迫力は今回のホ・ジュノの一番の名演技でしょう。こうしてユ氏とチョン刑事が手を組み、理想の村を作り上げてから30年。ようやくここからが本題だったりします。父・ユ氏の訃報を受けた息子ユ・ヘグクが村にやってきます。

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いきなり30年後なんで、物語序盤の登場人物が一気に老けているのに軽いショック。チョン刑事などはすっかり額が後退し白髪頭で今は村長に…ってあれ?どこかで観たな…と思ったら『ダレン・シャン』で渡辺謙が演じたミスター・トールにソックリじゃないですか!逆に韓国映画の名脇役といえばこの人キム・サンホは、むしろ30年前のフサフサ黒髪状態が異質で、老けメイクではなくて普通に戻っただけという…(苦笑)さて、それはさて置きヘグクが村に着いたその日から何か様子がおかしい。やたらと自分を村から追い出そうとする様子からは、父の死因に関して何かを隠しているようにすら感じる…。もちろん秘密はあるのだけれど、それがここから徐々に明らかになっていくのでした。父の家からチョン・ソンマン(キム・サンホ)の家に繋がる秘密の通路のそんざい、村で紅一点イ・ヨンジ(ユソン)の元を夜な夜な訪れる村長を筆頭とした取り巻きの男たち。

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このヨンジはある意味キーマンでもあります。村人でありながら、ヘグクを助けたりと、他の3人の取り巻きとは一線を画する行動が妙に怪しい。もっとも回想シーンをみると、彼女は元々ユ氏に助けられた少女で元々村長寄りではなかったことが解るのですが。それがどういった意味を持つのかはこの時点では解りません。さて、たかが村長にしては、警察も病院の先生も異常なほどに彼を敬っている…。っとまあ、観ている側としてはかなり謎がばら撒かれ、それがどう解決されるのかというミステリー特有の期待感を煽られまくるわけです。ところが、残念なのは村人として登場するキャラクターたちが余りに安直に自ら自分たちの不審さをヘグクに晒してしまうこと。あまつさえヘグクが因縁のあるパク・ミヌク検事に村長の調査を依頼してしまった時点で、村長たちが動けば動くほど破滅への道をまっしぐらなのが確定。いわゆる墓穴を掘るとは正にこのことです。

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取り巻きである3人の一人チョンはヘグクを襲い崖から落ちて死亡、ハ・ソンギュはヘグクを捕らえるものの、家に火をつけられて逃げ遅れて焼死、キム・ドクチョンはヘグクとパク検事に村長に命じられてきたことをゲロって村長に殺される…。次々と人が死んでいくものの、そうまでして村長らが守りたかったものは何なのか?これまた過去の回想を見る限り、村長たちはかなり悪どい方法で金を稼いできたのだけれど、私には彼らが具体的に何をやったのかが良く解りませんでした。恐らくユ氏のカリスマで信者に土地を寄付させ、そうして得た金で金貸しのようなことをして稼いでいたようなことを匂わせてはいるのですが。いずれにしてもここまで観ていてどうにもすっきりしない。それは、主人公ヘグクが求めているのは父の死の真相なのに、明らかになっていく秘密は村長たちが不正に蓄財していたことに関する秘密だから。

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もちろん、それは父の死の真相に近付くと自動的に見えてきてしまうものなのだけれど、しかしそれを欲していたのはむしろパク検事ではないのか…。物語の本線から考えたらヘグクの父の死の真相こそが一番のテーマであり謎であるはずが、いつの間にかずれてしまっている。それはパク検事の存在がそうさせているのです。実はヘグクとパク検事の関係は、検事を左遷に追い込んだ側と追い込まれた側という描き方だけしかされていません。そもそもヘグクは一体何者なのか。この辺りの情報がどうも欠けている気がしてならないのですが、原作ではどうなっているのでしょう。一応最後に父の死の真相は明らかになりますが、それは自殺だったというものでした。そしてそれは30年前にユ氏がサムドク祈祷院を離れる時に起こっていた事件に起因していたのです。しかし今更証拠も何一つ残っていない、おまけに一方の当事者は死んでいる…。これが意味する答えは一つ。

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村長たちが守りたかったのはやはり不正蓄財に関する秘密だったと思うのです。では何でこんな混乱が生じてしまったのか。このチグハグさの答えは一番最後のワンシーンが握っているのではないでしょうか。“父の訃報を報せる電話の声がヨンジのものであると気づくヘグク。そしてヨンジの意味深な笑み。”村はまだ黒く濁っていそうな気がします。

個人的おススメ度3.0
今日の一言:原作漫画とキャラクターがソックリ!
総合評価:65点

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『黒く濁る村』予告編

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受信: 2011年7月17日 (日) 20時51分

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パク・ヘイルさん主演。160分越えの作品ですが、なかなか面白かった。閉鎖的な田舎町 [続きを読む]

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