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2010年11月23日 (火)

うまれる

Photo_2 タイトル通り「うまれる」ということに対して広く訴えかけるドキュメンタリー。単純に子供が産まれることだけでなく、親になるということ、家族とは、或いは産めない・産まないといったことまで含めて幅広く取り上げている。監督・企画・撮影は豪田トモが務めるが、非常に多くの賛同者とともに作り上げた作品だ。ナレーションを俳優のつるの剛士が務めることでも注目されている。
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同じ時期に似たような作品が重なりました。先日レビューした『玄牝』と同じく大きな意味では出産をテーマにした作品です。しかしながら、『玄牝』はいかに産むか、人間本来の生命のあり方とはということに関して、とある一人の医師に密着し、ことの是非を問うのではなくただ淡々と事実を真っ直ぐ描き出した作品でした。本作は産むことそのものも含め、例えば堕胎・不妊・流産といった産まない・産めないこと、産むことがその夫婦にもたらす何か、家族の根源とは…といった幅の広い事象に関して描き出している作品といえます。また、表現の手法としても『玄牝』が河瀬直美監督の手による映像そのもので全てを語るのに対し、本作はつるの剛士のナレーションや、直接現場にタッチしていない専門家の意見も含めて語ってくれています。

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そういう意味で、本作のほうがいわゆるテレビのドキュメンタリー番組に近いものがあるでしょう。言うなれば映像の力と番組の力とでも言うような。さて、本作に登場する夫婦は全部で4組。伴 真和(まさかず)・まどか夫妻、松本哲(あきら)、直子夫妻、関根雅(まさし)、麻紀夫妻、東(あずま)陽子夫妻です。作品では個々人にの心情や生活のかなり深い所まで密着しています。それは一般の方にいきなり取材を申し込んでもココまで打ち解けることは出来ないだろうと言うほどで、まさに企画・撮影も務めた豪田トモ監督が2年にも渡る交流を図った結果でした。個人的にピンマイクが胸元にモロに見えているのはどうかと思ったけれど、それも音声さんなしで撮影に臨んだ結果なのだだそう。映像に表れているのはごく一部で、きっとそれ以外に膨大な量の撮影素材があるハズです。

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松本夫妻は18トリソミーという障害を持って産まれた虎大(とらひろ)くんのご両親。この病気、通常は流産してしまうことが多く、例え産まれても1年以内に亡くなることが多い。事前にそれが解っていても迷わず虎大くんを産み、奇跡的に退院に漕ぎ着けたものの、先行きは決して明るい訳ではありません。しかし、それが嘘のように幸せそうな夫妻。出産予定日に死産が判り、しかしそれでも「椿」という名前をつけて小さな骨壷を大切に愛おしむ関根夫妻は必死に悲しみから立ち直り、やがて妻・麻紀さんのお腹には新たな命が宿ります。客観的に観たらどちらも不幸に見えますが、私にはうまれてきた虎大くんもうまれてこれなかった椿ちゃんも、着実に両親に何かを残していたように思えました。それは生命が生まれ出る奇跡と喜び。

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つまりお母さんのお腹の中に生命の灯がともった瞬間、それも“うまれる”ということに他ならないのです。しかしその瞬間すら叶えられなかったのが東陽子さん。9年間にも及ぶ不妊治療の末に子供を諦めたのでした。彼女は不妊治療の病院、ミオ・ファティリティ・クリニックの管理部長でもあり、実際に自分と同じ立場の女性を数多く見てきています。新生児室の窓越しに赤ちゃんを見つめる彼女の表情は何とも言えず哀しいものでした…。クリニックには自らの卵子を冷凍保存している彼女が言った「ずっと冷凍されて寒かったろうから、最後は私のお腹の中に戻して暖めてあげて最後にしたい…」という言葉は聞いているこちらも辛いものです。うまれることが叶わなかった彼女ですが、そんな彼女が同じ立場の女性のために働いていることは本当に尊敬に値することです。

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伴夫妻は今回登場する夫妻の中では形の上では一番幸せです。真和さん優しい夫で身重の妻を気遣い、まどかさんは元気な赤ちゃんを産む。私が特に印象的だったのはご主人の真和さん。実際にお腹に赤ちゃんを宿す母親と違い、実感と言う意味ではいま一つ判らない様子が同じ男として共感できます。死にそうなくらいの陣痛の痛みに晒される妻を見ても何も出来ないと暗澹とする…、助産婦さんに「傍にいるだけでいいんだよ。」と言われても実際に産んでいる妻をみて気が気でないのは当然でしょう。産まれた直後、助産婦さんに「お父さん!」と呼ばれても自分の事だと気付かない真和さん。お母さんはお腹にその生命が宿った瞬間からお母さんだけれども、お父さんは赤ちゃんと一緒にうまれてくるのだなぁと実感した瞬間でした。

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うまれるということは命のリレーなのだと登場した医師は言います。両親・祖父・曽祖父…連綿と続く命のリレーはそれだけで奇跡以外のなにものでもありません。私が鑑賞した時、劇場にお子さん連れで来ていた一家がいました。お子さんたちが映画から何を感じ取ってくれるのか。自らがいまここに存在していることの奇跡を喜んで欲しい、そんな風に思うと同時に、私をうんでくれた両親に感謝したい気持ちになりました。

個人的おススメ度4.0
今日の一言:『玄牝』の吉村先生も出てます。
総合評価:73点

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