« [リミット]/Buried | トップページ | クレイジーズ »

2010年11月 8日 (月)

ソフィアの夜明け

Photo_2 第22回東京国際映画祭コンペ部門で東京サクラグランプリ、最優秀監督賞と最優秀男優賞の三冠を獲得したヒューマンドラマ。現代のブルガリアを舞台に、未来の見えない一組の兄弟の葛藤する様を描き出している。監督は本作がデビュー作となるカメン・カレフ。主演のフリスト・フリストフは本作撮影終了間際に不慮の事故で急死した。
>>公式サイト

それぞれの現在・過去・未来

book あらすじ・作品情報へ book

にほんブログ村 映画ブログへ 人気ブログランキングへみなさんの応援クリックに感謝デスsunshine

01_2

ブルガリア映画は殆ど聞いたことがないですが、年間の映画製作本数が僅かに7~8本なのだそうだ。そんな寡作なお国の作品ながら昨年の東京国際映画祭で東京サクラグランプリ、最優秀監督賞と最優秀男優賞の三冠を獲得したのが本作。元々社会主義国だったブルガリアは2007年にEUに加盟し、いわゆる資本主義社会の荒波に晒されています。そんな中、先の見えない未来に不安を抱えながら、それを乗り越えようと葛藤するというテーマ自体はそれほど珍しいものではありません。本作の主人公・イツォ(フリスト・フリストフ)もそんな一人。アーティストを目指しつつも、それで食べていける程甘い世界ではなく、ドラッグに溺れ、木工技師として働く傍らにメタドンによる治療を受けている最中です。しかし、本質的な不安を取り除くことが出来ない分、今はドラッグの代わりに酒でそれを紛らわす毎日を送っていました。

02_2 03_2

このイツォ役のフリストフは本作のクランクアップ直前に不慮の事故で亡くなったそうですが、監督は元々彼をベースに映画を撮ろうと考えていたと語っています。実際劇中に登場する恋人・ニキ役のニコリナ・ヤンチェヴァは本当の恋人。そんな設定も相まってか、ドラマであるはずがまるでドキュメンタリーを観ているかのような気にさせられます。そう、感覚的にはイラン映画『ペルシャ猫を誰も知らない』を観ているような感じでした。さて、イツォには長く会っていないゲオルギ(オヴァネス・ドゥロシャン)という弟がいます。彼もまた毎日に不満を抱く生活を送っていました。ただしかし、イツォと違うのはそれがより具体的ではあるものの、未熟な少年らしい不満だということ。継母の自分への干渉が我慢ならない彼はネオナチのグループへと加入します。これはもう殆ど反抗期とでも言うべき様態なのですが、本人はいたって真剣。

04_2 05_2

ゲオルギのこの作品に置ける役割は非常に大きく、彼らのグループがあるトルコ人一家を路上で襲撃したことで、その場に偶然居合わせたイツォとゲオルギの再会をもたらし、更にはイツォと一家の娘ウシュル(サーデット・ウシュル・アクソイ)を引合わせることになるのです。突然実家を訪れるイツォ。ゲオルギの行為を咎めに来たのかと思いきや、両親には何も言わずに黙って家を出てゆきます。だだっ広いビル建設予定地、遠くに古びた団地が見える場所で弟を優しく諭すイツォ。まるで未来と過去が交差するかのような場所に立つ2人はゲオルギが昔のイツォで、イツォが未来のゲオルギのようでもありました。「真似するのは頭だけにしとけ。」まるでお前の悩みは全部解っているというような包み込むような口調の言葉には兄貴としての優しさが溢れています。さて、イツォは襲撃されたトルコ人一家の父親を見舞いに病院を訪れるのですが、そこで出会ったのがウシュル。

06_2 07_2

一目で惹かれあう2人。それは正に運命的な出会いだったのかもしれません。初めてのデートの夜、夢中で喋るウシュルの言葉を笑みを浮かべながら聴いているイツォ。彼女は言います。自分は変わったのだと。悩めるイツォにとっての灯台のような彼女、果たして彼は過去のウシュルであり、ウシュルは未来の彼足りえるのだろうか…。残念ながら彼を嫌ったウシュルの父親が帰国を早めたことで、2人の希望に満ちた逢瀬は2度と訪れることはありませんでした。何も手につかなくなるイツォ。医者で己が不安をぶちまけるも結局は自分で乗り越えるしかない訳で、そんなことは彼自身が一番良く解っています。しかし、優しく手を差し伸べてくれる存在は誰しも必要であり、普通であればそれは両親であったり恋人であったり伴侶であったりするのですが、彼には誰もいなくなってしまったのです。恋人だったニキはむしろ自分のために彼が必要だという存在でしたから。

08_2 09_2

イツォがソフィアの街を彷徨い、夜明け近くに大通りに姿を現します。この通りはソフィアの目抜き通りで、昼間は路面電車や大勢の人々が行き交う道路。今はたった一人彼だけが歩いている。向かう当てもなくただとぼとぼと前に進むのみ。何とも彼の今を象徴的に描いたシーンです。ところが、突然登場した道端のとある老人から荷物を運ぶのを手伝うように言われるのでした。イツォだけでなく観ている私たちまで、まるで夢の中の世界からいきなり現実に引き戻されたような感覚に陥ります。少なくとも今この時は老人にとって必要とされる存在の彼。もしかしたら老人は未来のイッツォであり、イッツォは過去の老人なのかもしれません。物語は彼がゲオルギのようにキッチリとした立ち直りを見せるまでは描きませんが、しかし、希望の光が見えてきたことは間違いないのではないでしょうか。

個人的おススメ度4.0
今日の一言:フリストの事故の原因てなんでしょう?
総合評価:80点

にほんブログ村 映画ブログへ 人気ブログランキングへ
↑いつも応援して頂き感謝です!
今後ともポチッとご協力頂けると嬉しいです♪

『ソフィアの夜明け』予告編

|

« [リミット]/Buried | トップページ | クレイジーズ »

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/197507/37574793

この記事へのトラックバック一覧です: ソフィアの夜明け:

» 『ソフィアの夜明け』はスケールが巨大な挑戦状だよ。 [かろうじてインターネット]
 今回は去年の東京国際映画祭で最優秀賞となる東京サクラグランプリを受賞したことでも話題の『ソフィアの夜明け』の感想です。  観に行った映画館は青山のシアター・イメージフォーラム。映画サービ...... [続きを読む]

受信: 2010年11月 9日 (火) 02時56分

» ソフィアの夜明け~イースタン・プレイ(第22回東京国際映画祭出品名)~ [Piattの私的映画生活]
    どうも邦題がピンとこない。     昨年(2009)の東京国際映画祭(略称TIFF)で満場一致でサクラ・グランプリ、主演男優、監督賞など主要     賞を総なめにした話題作「イースタン・プレイ」と言った方が分かるだろうか…     ようやくこの作品が... [続きを読む]

受信: 2010年11月 9日 (火) 09時22分

» 『ソフィアの夜明け』・・・ ※ネタバレ少々 [〜青いそよ風が吹く街角〜]
2009年:ブルガリア映画、カメン・カレフ監督&脚本&プロデューサー&編集、フリスト・フリストフ、サーデット・ウシュル・アクソイ出演。 [続きを読む]

受信: 2010年11月14日 (日) 23時50分

» 『ソフィアの夜明け』(2009)/ブルガリア [NiceOne!!]
原題:EASTERNPLAYS監督:カメン・カレフ出演:フリスト・フリストフ、オヴァネス・ドゥロシャン、サーデット・ウシュル・アクソイ、ニコリナ・ヤンチェヴァ、ハティジェ・アスラン鑑賞... [続きを読む]

受信: 2010年11月17日 (水) 11時24分

» ソフィアの夜明け [佐藤秀の徒然幻視録]
役所広司、黒木メイサ求め飛んでイスタンブール 公式サイト。英題:Eastern Plays。カメン・カレフ監督、フリスト・フリストフ、オバネス・ドゥロシャン、サーデット・ウシュル・アクソ ... [続きを読む]

受信: 2010年12月16日 (木) 22時50分

» ソフィアの夜明け(2009)☆★EASTERN PLAYS [銅版画制作の日々]
 主人公イツォを演じたフリスト・フリストフは撮影終了直前に他界したそうです。 エンドクレジットには、フリスト・フリストフに捧ぐと出ま... [続きを読む]

受信: 2010年12月29日 (水) 23時13分

» カメン・カレフ監督インタビュー:映画『ソフィアの夜明け』について [INTRO]
現在公開中の「ソフィアの夜明け」は、第22回東京国際映画祭コンペティション部門で東京 サクラ グランプリを受賞し注目を集めた作品だ。年に7本しか映画が作られないブルガリアで本作を完成させたカメン・カレフ監督に話をうかがった。 2011年1月8日(土)よりキネカ大森ほか、全国順次公開中!... [続きを読む]

受信: 2011年1月 8日 (土) 00時44分

» ソフィアの夜明け/フリスト・フリストフ [カノンな日々]
2009年の第22回東京国際映画祭で「東京サクラグランプリ」「最優秀監督賞」「最優秀男優賞」の三冠を達成した作品です。監督を務めたのは本作が長編デビュー作となるブルガリアの新 ... [続きを読む]

受信: 2011年2月12日 (土) 22時08分

» ソフィアの夜明け [迷宮映画館]
初、ブルガリア映画。それにしちゃ、悲しすぎる。 [続きを読む]

受信: 2011年2月24日 (木) 13時09分

» ソフィアの夜明け/彼女が消えた浜辺 [あーうぃ だにぇっと]
3月20日(日)@ギンレイホール ほぼ10日ぶりに映画を観る。 映画を観るような気分でもなかったが、他のことをする気にもならない。 今回の演しものは「ソフィアの夜明け」と「彼女が消えた浜辺」の2本。 結論からいって、今のような気分の時に観るような映画じゃなかった。... [続きを読む]

受信: 2011年3月20日 (日) 23時18分

» ソフィアの夜明け [とりあえず、コメントです]
ブルガリアの首都ソフィアを舞台に、人生を彷徨う若者たちの姿を描いた作品です。 見逃していたのですけど、ギンレイホールで上映されていたのでチャレンジしてみました。 全体的に漂う救いの無い空気の中で、 それでも少しずつでも前へ向かいたいと思う主人公の姿が印象的でした。 ... [続きを読む]

受信: 2011年4月 2日 (土) 12時48分

» ソフィアの夜明け <2009/ブルガリア> ★★★ [★Movies that make me think★]
Eastern Plays 2009/83min/ブルガリア ドラマ 監督/脚本:カメン・カレフ 出演:フリスト・フリストフ、オヴァネス・ドゥロシャン、サーデット・ウシュル・アクソイ 受賞: 2009 第22回東京国際映...... [続きを読む]

受信: 2011年5月14日 (土) 13時54分

« [リミット]/Buried | トップページ | クレイジーズ »