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2010年11月10日 (水)

ふたたび swing me again

Swing_me_again_2 かつてはらい病と呼ばれ、50年以上もの隔離生活を強いられたジャズマンが、人生の最後にかつての仲間たちに再会するための旅に出る、やり残した夢を実現するために…。主演は『シュアリー・サムデイ』の鈴木亮平と財津一郎の若手ベテランコンビ。バンドメンバーに藤村俊二、犬塚弘、佐川満男といったベテランが、ミュージシャンの渡辺貞夫も出演している。監督は塩屋俊。
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50年越しに取り戻したもの

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映画の冒頭でハンセン病に関する簡単な説明が出ます。そう、この作品は単なるジャズ映画ではなく、ハンセン病で50年以上にも渡って隔離されたとあるトランペッターが、その人生の最後にやり残したことを為すために、旅に出る様を描いたロードムービーでした。もとはらい病と呼ばれたハンセン病、その病状から社会的差別を受け、あまつさえその患者を隔離することを許した法律「らい予防法」。この法律は1953年に制定されましたが、1998年に「らい予防法違憲国家賠償請求訴訟」が起こされ、2001年に原告全面勝訴の判決が確定しています。そう、私の世代だけではなく、今20代の若い人たちにもこれは歴史ではなく記憶。病に苦しみ、差別に苦しみ、挙句の果てには患者の家族までもが差別を受ける。都会はともかく、判決確定から約10年が経過しても、地方では今だ誤った認識による差別が存在することを作品は描いています。

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主人公の貴島大翔(鈴木亮平)はジャズにハマっている大学生。彼女とも順調で、特にどうということもない極普通のありがちな大学生です。そんな彼の家庭にある日死んだと言われていた祖父・健三郎(財津一郎)が帰ってくることに。そこで父・良雄(陣内孝則)は健三郎がハンセン病で隔離されていたことを告げるのでした。序盤の象徴的なシーンだったのは、大翔が現代の若者らしくその病に関して無知なこと。彼女に無邪気に祖父のことをしゃべるのですが、車で送り届けた時に映る彼女の家が古いお屋敷であり、それはまさにハンセン病に対する誤った差別が厳然と残っていることのメタファーです。実際問題、決まっていた姉の結婚が流れたり、大翔が振られたりといった差別が起こり始めるに到っては、母・律子(古手川祐子)が健三郎を家に閉じ込めておこうとする気持ちも解らなくもありません。もちろん決してそれを肯定してはいけないと思いますが。

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健三郎の世話を頼まれた大翔が何気なく見せた1枚の古いレコード、それはかつて健三郎が病に倒れる前に結成していたバンドのもの。このレコードの影響で自分もトランペットを始めたのだという大翔、50年の月日を越えて祖父と孫の絆が繋がった瞬間です。同時にそこに挟まっていた1枚の古い写真を見て、健三郎は当時の仲間との約束を思い出すのでした。それは神戸にある老舗のジャズクラブ「SONE」でのステージでライブをすること。かくして大翔は、かつてのバンドメンバーを訪ねる旅に付き合うことになります。徐々に打ち解けていく2人、あれだけ気難しい健三郎にしても孫ともなるとやはり可愛いものなのなんだろうと思って観ていたのですが、彼の大翔への想いは私たちが想像しているよりずっと大きなものだったのです。即ちそれはバンドのピアニスト・野田百合子(MINJI)通称ユリッペと健三郎の悲しい恋がもたらした50年後の結果でもあったから。

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相思相愛で結婚し、健三郎のハンセン病が判明した時、ユリッペのお腹には大翔の父・良雄がいたのです。しかし健三郎の入院後、ハンセン病患者と接触した彼女は屋敷の離れに隔離され、愛する息子を抱きしめることも出来ず…。要するに健三郎は音楽、愛する妻、そして愛する息子、果ては人間関係も含め全てを奪われたのです。百合子の墓が実家の墓ではなかったことに疑問を抱いた大翔に対してつぶやくように言う「そういう時代だったんじゃ。」は余りにも大きくて重いのでした。しかし私が観ていて最も悲しかったのは、同じ患者仲間とともに場末のスナックを訪れるシーン。心無い客が「国の金で飲めるんだから良いご身分だ。俺もらい病になりゃよかった。」と言い放つのです。裁判の勝訴により患者には賠償金が支払われています。それを揶揄したものですが、いきり立つ大翔に対して健三郎は「もうええ。もうええんじゃ。」と逆になだめるのでした。

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彼らは社会から蔑まれ差別されることに慣れてしまった…。いや慣れはしないでしょうけれど、このくらいの嫌味は今まで数え切れないほど経験してきた、というより全てを失ってきた。だからこそその程度ではもう動じないのです。余りに悲しく切なすぎるじゃないですか。さて、健三郎と大翔が訪ね歩くかつてのバンドメンバーたちにも当然ながら50年の歳月は流れています。痴呆症のはずが、あの古い写真を見て記憶を取り戻すタツ(犬塚弘)、孫と暮らし健三郎が隔離された後の百合子の様子を教えてくれたマサル(佐川満男)、今では大会社の会長を務めているユキオ(藤村俊二)。男たちの想いはどれだけ年月を経ても色褪せることなく、昔以上にその輝きを増しているのが嬉しいところ。そして、実際にこの役を演じている俳優も、超の着くベテランたち揃いで、それ故にその人生経験から紡ぎ出している登場人物のセリフは有無を言わせない説得力を持って響きます。

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クライマックスの演奏シーンへの導入は中々に憎い演出ではありますが、嬉しいのが「SONE」の曽根田オーナー役として渡辺貞夫が登場すること。音楽に無知な私ですら知っているほどの超大物サックスプレイヤーが登場し、尚且つその圧倒的なパフォーマンスを披露してくれる。これは実際凄かった!バンドのメンバーではご存知クレイジーキャッツのベーシスト犬塚弘だけが楽器が出来るものの、後のメンバーは全て演技。個人的には財津一郎のトランペットは中々真に迫るものがあったけれど、藤村俊二のトロンボーンはちょっと頂けなかったかな…。とはいえ最初にも書いたとおり、単純に音楽映画ではない以上これで十分だと思います。健三郎が大翔に渡したトランペット、それは文字通り健三郎の命のようであり、百合子の下に旅立つ彼は、皮肉にもこれでようやく50年以上前に失った全てを取り戻したことになるのでしょう。

個人的おススメ度4.0
今日の一言:地味だけれど秀作です…
総合評価:80点

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『ふたたび swing me again』予告編

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受信: 2010年11月10日 (水) 17時10分

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受信: 2010年11月11日 (木) 17時27分

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