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2010年12月11日 (土)

ウォール街(1987年)

Photo_2 1987年公開作品。ウォール街を舞台にマネーゲームで一獲千金を狙う男たちを描いたエコノミックドラマだ。主演のマイケル・ダグラスは本作でアカデミー主演男優賞を獲得している。共演に若き日のチャーリー・シーン、そしてその実父マーティン・シーン、ダリル・ハーンらが出演。監督はアカデミー監督賞2回のオリヴァー・ストーン。まもなく続編『ウォール・ストリート』が日本公開だ。
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2011年2月4日に続編『ウォール・ストリート』が日本公開予定ということで事前に復習も兼ねて鑑賞。本作の公開は1987年というから日本では丁度バブル期にあたりますが劇中は1985年の設定です。この物語の主人公は若き証券マン、バド・フォックス(チャーリー・シーン)。野心家の彼が個人投資家のゴードン・ゲッコー(マイケル・ダグラス)に取り入り金融界で成功していく様子を描いてゆきます。株式投資や不動産投機、或いは企業のM&Aは今でこそ一般的ですが当時の日本ではまだまだ。この映画の公開されたバブルに入ってから初めて世に広まっていったように記憶しています。それにしても、証券会社の当時としては恐らく最新式のパソコン、そしてゲッコーの持っているとんでもなく巨大な携帯電話に四半世紀の時の流れを感じずにはいられません。

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しかし、作品のテーマは至極真っ当で、オリヴァー・ストーン監督が本作で言いたかったの現代にも通じること、即ち金が全てであるといった倫理観に対する警鐘に他なりません。更に言えばバドの父親カール(マーティン・シーン)はブルースター航空で24年も働く典型的なブルーカラーであり、その背中を見て育った息子が、自分はホワイトカラーとして成功してやろうと目論む、ある種この時代の典型的な父子の生き方の違いも表していたのではないかと思います。とはいえ序盤のバドは冴えない証券マンでしかありません。ただし冴えないといっても年収5万ドルと言っていましたから、プラザ合意前のレートだと日本円で約1100万円位。定年間近の父親の年収より少し大目の年収であることを考えても、十分高収入ですね。

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このあたり、日々株式投資で大もうけしている富豪たちを相手にし、己では手に出来ない莫大なお金を動かす仕事をしているバドと、コツコツ働き「金なんてその日食える分だけあればいい」というカールとの意識の差が如実に出ていて面白いです。そんなバドが数ヶ月かけて面会に成功したのがゲッコーでした。バドは父から聞いたブルースター航空の内部情報を彼に話しますが、ゲッコーはバドの野心に若き日の自分を見出し、彼の面倒を見るようになるのでした。物語の中盤は、ゲッコーの庇護の下で莫大な金を稼ぎ出すようになるにつれて、バドの中の倫理観が崩壊していく様を刻々と描き出してゆきます。例えば一番最初にゲッコーにブルースター航空の内部情報を教えた時には、彼は自分では株を買いませんでした。それはもちろんインサイダー取引になってしまうから。

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しかし、ゲッコーの教えもあって次第に情報そのものを非合法な手段で手に入れ、尚且つインサイダー取引と知りながらも株の売買に手を染めて行きます。新しいアパートに引越し、美しい恋人を手にいれ、会社では出世する。面白いもので、人間の驕り高ぶりはその顔や服装、態度に出るんですね。傍から見ていてもバドがどんどん嫌なやつに成り下がっていく様子がわかります。ところが、株価と同じで上がり続ける運気など存在する訳もなく。バドは父の働くブルースター航空を買収し立て直すことをゲッコーに提案し組合を説得に入りますが、カールだけは甘い言葉の裏側にあるゲッコーの本質を見抜いていました。本作におけるカールは正にオリヴァー監督の代弁者であり、ここで彼はバドに「売り買いじゃなくモノを創る人間になれ」という名セリフを残します。

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当たり前ですがこの2人は実の親子だけ合って顔もそっくり、それだけに当時23歳の実の息子を諭す演技は説得力十分。同時にそれに納得しないでオヤジは古い人間だ!と思い込むチャーリーの演技も説得力十分。(笑)結局この後、実はゲッコーにはブルースター航空を立て直すつもりなどないどころか、解体して売却するつもりだったことが判明するのと、カールが心臓発作で倒れると言う2つの事実が重なることで、バドはようやく自分の浅ましさに気がつくという流れ。幼い頃から父の背中を見て育った男の子は、その背中をいつか乗り越えようとするものです。時として誤った道を選ぶことはあっても、基本的にオヤジの背中は男の子の人生の教科書、オヤジが真っ直ぐな人間なら、本質的には息子も真っ直ぐなのだと思うのです。

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資本主義社会の中ではゲッコーの言う「欲は善です。」というのはある面の真実。劇中彼が株主を前にした演説は、資本主義経済の本質を鋭く抉った名スピーチで、本作のみならず映画史に残る名シーンです。日本でもITバブル華やかなる折に似たようなこと、「お金を稼ぐことは悪ですか?」と言った人がいましたが、それ自体もちろん悪ではないです。しかしその行き着いた先が今のアメリカ社会な訳で。それが完全無欠だと考えるならば何も言うことはありません。しかし、少なくとも日本の社会風土の中ではその社会を良しとはしないでしょう。先人の反省の上に立ってそこを修正した社会を作り上げることは、後に続く者に対する私たちの責務です。結局バドはインサイダー取引容疑で逮捕されるのですが、最後にゲッコーがその取引に関与した発言を録音し、彼も巻き添えにします。

『ウォール・ストーリー』ではそのゲッコーが出所してくる所から物語が始まるのだとか。世界的不況のなか、今度はどんな物語が展開されるのか楽しみです。

個人的おススメ度4.0
今日の一言:最近のチャーリーはTVドラマ中心だそうな
総合評価:81点

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『ウォール街(1987年)』予告編

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