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2010年12月27日 (月)

デザートフラワー

Photo ソマリア出身の世界的トップモデル、ワリス・ディリーの半生を綴った自伝本「砂漠の女ディリー」を映画化。遊牧民の家族から一人逃げ出し、ヨーロッパでスーパーモデルとして成功する反面、幼少時に経験したFGM(女性性器切除)に深く傷ついた自分の経験から、その廃絶運動に立ち上がる姿までも赤裸々に描き出す。主演はホンモノのスーパーモデルのリヤ・ケベデ。監督はシェリー・ホーマン。
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ただの成り上がり物語じゃない

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ソマリアの遊牧民出身の13歳の少女ワリス・ディリー(リヤ・ケベデ)が、家族から逃げ出しヨーロッパでスーパーモデルになるまでの半生を描いた作品。ただ思うに、本作では彼女の成功物語は本当に話したいことを描くための流れにすぎないのかもしれません。というのも、本作は単純にワリスが成功して良かった良かったという話ではなく、彼女が幼い頃に受けたFMG(Female Genital Mutilation:女性器切除)をカミングアウトし、その廃絶運動を展開する姿まで描かれているのです。127分の尺の中では、正直成功物語に関しては内容が薄いです。とはいえ、原作を書いたワリス本人、そして女性監督シェリー・ホーマンは、むしろFMGによって深く傷つけられたワリスの気持ち、それに立ち向かう決意をした彼女こそ本当に描きたかったことなのかもしれません。

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物語は遊牧民として生活する13歳のワリスから始ります。父親の命令で親子どころが祖父と孫ほど離れていそうな親戚の男とお金と引き換えに結婚させられそうになり、一人砂漠へと逃げ出す彼女。紆余曲折の末にイギリスのソマリア大使をしている親戚を頼ってロンドンに渡るのでした。邪魔者扱いされながらも成長した彼女ですが祖国で内戦が起こり、帰国を拒否した彼女はホームレスに…。ずっと大使館でしか生活していなかったからでしょうか、英語は殆ど話せず、困り果てていたところで出会ったのが親友マリリン(サリー・ホーキンス)。で、この後バイト先のバーガー・ショップで一流カメラマンのドナルドソン(ティモシー・スポール)に見出されたことでワリスはトップモデルの道を駆け上がっていくことになります。

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出来ればもうちょっとこの過程でのワリスの心の動きを丁寧に描いて欲しかったところ。クラブで声をかけてきたハロルド(アンソニー・マッキー)に恋心を抱くこと、彼女が不法滞在だったということ、そして永住権を得るために好きでもない男と結婚したこと、この3つが主なエピソードなのですが、何れも彼女の心の内がダイレクトに伝わってきたとは言い難いのです。ワリス役を演じたのは、自身もスーパーモデルのリヤ・ケベデ。映画出演経験はあるものの、基本的には本職俳優ではありませんからそこまで要求するのは酷か…。成功を掴むために彼女自身がどれほどの強い想いを持ち、どんな努力をしたのか、観ている限りではもって生まれた容姿だけでのし上がってしまったようにしか観えないのです。とはいえ最初に書いた通り重要なのはこれらの部分ではないのかもしれません。

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異常に貞操観念が強い彼女がマリリンと性器を見せ合い自分が普通ではないのだと悟るシーンは、最初は何が起こっているのか解らないのですが、とにかく彼女の深い哀しみだけは伝わってきます。ここまでの、そしてここから先も成功物語の部分では大して訴えかけるものがないのですが、FMGに関してだけは別。これはリヤも女性であり、彼女の祖国エチオピアでも同じことが行われているだけに、役や演技を超えた強い想いがあるからなのでしょう。不勉強でFMGの存在を知らなかった私は、例えばワリスが婦人科で診察を受けたときに「損傷の修復は出来ない」と言われてもさっぱり。なにせことがことだけにモロに映像で見せる訳にもいかないですし。やっと解ったのは彼女が雑誌のインタビューに対して全てをカミングアウトした時でした。

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彼女の人生が変わったのは、バーガー・ショップでドナルドソンに見出されてからか?という問いに、「そうじゃない。3歳の時だ。」と答える彼女。泣き叫ぶ3歳の幼女にFMGを施すシーンはもう目を覆わんばかりの衝撃です。インタビュアーが俯いたまま顔を上げられない様子が映し出されますがそれは私たちとて同じこと、今思い出しても心が締め付けられるように苦しい…。外性器の殆どを切り取られた彼女が言った「私にあるのはマッチ棒1本ほどの小さな穴」と言う言葉には絶句するしかありません…。有名になった彼女は、国連の舞台で世界に対してFMGの廃絶を訴えます。ワリスが病院で診察を受けた時、通訳として呼ばれたソマリア人の看護師の男が言ったのは「白人に股を開いて見せたのか。」「しきたりに従え。両親が悲しむ」でした。

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イギリスの病院で働いているということは、当然ある程度の学力や欧米社会での常識も持っているはず。しかしそれでいて尚、FMGを肯定する言葉を発する…。そりゃ今でもアフリカでこの野蛮な風習がなくならないはずです。文化の一つであったとして、たとえそれを望んで受ける女性がいたとしても、感情的にはまだともかく科学的に体に害をもたらす行為なのは明白。しかしそれを広く啓蒙できなければ、即ち知られなければ無くなるはずも無い。難しい問題だけれども、これは実際にFMGを受けたワリスが言うからこそ説得力があるのです。久々に痛烈な現実を見せられた秀作でした。ただ惜しむらくはFMGによって深く傷ついた彼女の心が、モデルの仕事をして成功していく上でどう影響を与えたのか与えなかったのか、その部分をもう少し丁寧に見せて欲しかったです。

個人的おススメ度3.5
今日の一言:過酷すぎる半生だ…
総合評価:73点

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『デザートフラワー』予告編

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五つ星評価で【☆☆美人モデルを観てるのは楽しい】 美は力 美は正義 という事で美しいモデルをずっと見てられるのは楽しい。 逆に、それがいい人であっても、 不美人が映っ ... [続きを読む]

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受信: 2012年7月 6日 (金) 09時21分

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