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2010年12月22日 (水)

ばかもの

Photo_3 芥川賞作家・絲山秋子の同名小説を映画化。出逢い、別れ、堕落、再会とあるカップルの10年間を男性の側を中心に描いた恋愛ドラマだ。主演は『ドロップ』の成宮寛貴。共演に『クワイエットルームにようこそ』の内田有紀。他にも白石美帆、池内博之、古手川祐子、浅田美代子、といった中堅・ベテランどころが脇を固める。監督は『DEATH NOTE デスノート』の金子修介。
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お酒は悪くない、お前が悪い

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何だか主人公の気持ちにイマイチ共感できないドラマでした。話そのものは別に難しくも何ともなく、言いたい事も解るのですが、残念ながら映像を通じて見えることと一致していない気がします。大須秀成(成宮寛貴)は群馬県高崎市にある三流大の学生。別にサークルに打ち込むわけでもなく、まして勉強に打ち込むわけでもない、言ってみればその辺に良くいる大学生です。それはそうと、主人公・大須秀成を演じる成宮寛貴はまだともかく友人・加藤役が池内博之と言うのはどうなんでしょう。幾らなんでも大学生には無理がありすぎです。要はここから10年に渡る大須を描いた物語なんで、後で役に実年齢が追いつくということなんでしょうが…。ともあれ、そんな大須が、父親が飲み屋に忘れた財布を取りにいった先で偶然出会ったのが吉竹額子(内田有紀)でした。

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一応これは運命の出会いだったってことになります。なにしろ後に彼女が結婚するために2人が別れることになると、その喪失感から大須は酒に溺れるようになり、絵に書いたような転落人生を歩むことになるのだから。しかしそこまで喪失感が大きい存在だというのが大須の様子からは見えません。人生を狂わすほどの大恋愛だったとは。というより額子が初めての女性だったがために、ひたすら彼女とのセックスに溺れているようにしか見えませんでした。何かといえば「やろう!」ばかり。しいて言えばセックスも含めて自分を包んでくれる額子というのは、アマちゃん大学生・大須にとってはよほど居心地の良い存在だったのでしょう。いかにも現代風のモラトリアム人間・大須にとっては、年上の彼女とのセックスは自分が一人前の大人に感じられる瞬間だったのかもしれません。

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っとまあ、役柄上の大須に対しては正直な所トンだバカ野郎だとしか思えなかったのですがそれはタイトル通りってことですね。逆に額子は良かった。昔から割と大人びた風ではあった内田有紀がようやく雰囲気に年齢が追いついてきたといった所です。今回はバストトップこそ見せないものの、下着姿を披露、大人の女の色気がたっぷりでした。ぶっきら棒な物言いも、そもそも可愛らしいアイドル的イメージではなかった彼女からすればすんなりと馴染むもので、キャスティングとしては成功していると思います。額子と別れた大須は大学を卒業して地元の電気量販店に就職するも、先にも書いた通り段々と酒量が増えていきます。そんな時、加藤の結婚式で新婦の先輩として参列していた翔子(白石美帆)と知り合うのでした。

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年上の女性と言う所は額子と同じですが、可愛らしく控え目な彼女は明らかに額子とは正反対。大須が意図していたとは思いませんが、無意識の内に額子とは対照的な女性を求めていたのでしょう。それは酷い別れ方をした彼女に対する対抗心であり、また彼女を未だ好きなことの裏返しです。が…ますます酒量は増えて、もはや完全にアルコール依存症。会社も辞めて日がなぶらぶらと街をさまよい歩く姿をみると、個人的にはもう「こいつダメだ。」と思わざるを得なかったり。何しろ自分が酔うのも人が酔っ払っているのを見るのも嫌いな私の目から見たら、もはや大須は人間の屑。っと、考えた時『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』の中で医者が言っていた言葉を思い出しました。曰く「この病気(アルコール依存症)は唯一誰にも同情されない病なんです。」

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しないでしょう、そりゃ。翔子の顔に青タンた出来ているのを見たら、同情など出来る訳もなく…。結局このあと、飲酒運転で自爆事故を起こし、それをきっかけに病院に入って治療をすることに。治って出てきた彼は偶然にも額子の飼っていた犬・ホシノを通じて現在の彼女の状況を知ることになります。彼女は結婚した夫と店で仕事中に事故にあい左腕を失っていました。再会した2人は前回が嘘のように大人の付き合いを始めます。彼女がどうやっても出来ないこと、即ち右腕を洗うことと腋毛を剃ることを大須に頼む彼女。そう、ようやく大須は額子と対等になれたのでした。それは単純に片腕がないからという現実からではありません。以前は一方的に彼女に頼る・甘えるだけだった大須に、今度は彼女が頼り・甘えることを意味しています。

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お互いがお互いを必要とすることで、初めて大須はモラトリアムを卒業したと言えるのでした。額子に対する責任感が彼を変えたとも言えます。最後に大須に対して額子が言ったセリフ「大人になるまで面倒みてやるよ。」は、彼が大人になった今だからこそ言える彼女流の愛情表現ですね。いずれにしてもようやく結ばれた2人。基本的に内面の変化を描いてきた物語なのは解りますが、出来たら10年の時の流れをもうちょっと感じさせてくれると、2人の絆の強さがより感じられたのではないかと思います。

個人的おススメ度3.5
今日の一言:内田有紀の体当たりの演技におまけ
総合評価:66点

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『ばかもの』予告編

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