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2010年12月 6日 (月)

酔いがさめたら、うちに帰ろう。

Photo 漫画家・西原理恵子の元夫で戦場カメラマンの鴨志田穣が、自身のアルコール依存症からの立ち直りを綴った同名小説を映画化。主演は『乱暴と待機』の浅野忠信。共演が『人のセックスを笑うな』の永作博美。監督は東陽一。懸命に依存症と戦う主人公と、それを支える家族の姿に胸打たれる。
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終わりよければ全て良し…だよね。

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珍しく原作既読です。それだけに映画化されると聞いて楽しみにしていましたが、少し想像と違っていた模様。原作は筆者の鴨志田穣氏の一人語りで、家族はその中の一部として登場するだけなのに対して、本作は元妻の西原理恵子さんと子供が主体的に登場します。つまりどちらかと言えば、鴨志田氏がアルコール依存症を克服し、家族の元へと戻るまでの自伝ストーリーから、鴨志田氏が主人公である家族のドラマへと変わっていました。嫌らしい見方をすれば、知名度的に西原理恵子さんを大きくフィーチャーしたほうが多くの観客に馴染み易いだろうという考え方があったことは否めないと思いますが、その分家族の間の深い愛情が際立って描かれていたように思います。ちなみに本作では鴨志田譲改め塚原安行、西原理恵さんは園田由紀という名前で登場します。

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浴びるように酒を飲み大量吐血。救急車で運ばれて入院し断酒を決意。しかしたった一切れの奈良漬でまた飲んでしまう。実は私の会社の先輩にも全く同じ人がいました。朝から酒の匂いをぷんぷんさせて出社し四六時中酔っている状態。しかしたまに酒が抜けているときは仕事も有能で、実に後輩思いのいい先輩なのです。一緒にいる間は飲ませないことは出来ますが、例え家族と言えども24時間一緒にいられない以上、結局は本人の意思によるんですね。彼ははアルコール依存症は完全には治らないと言っていました。何十年我慢しようとたった一滴の酒で元に戻ってしまうのだと。劇中で病院の先生は「アルコール依存症は唯一周囲から同情されない病です。」と言っていますがその通り。飲めば死ぬと解っていても止められない、恐らく自分ですら自分に同情はしていないのです。

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本作では結果的に塚原はアルコール依存症を克服します。観ていると解りますが、それは適切な治療もさることながら、由紀と家族の病への理解とそれによる塚原の家族への深い愛情の賜物でした。永作博美の由紀、即ち西原理恵子役はこれが絶品。一見するとサバサバしてそっけないセリフだけれど、その言葉の端々や表情から溢れ出る元夫への愛情が、恐らく本物の西原理恵子さんもそうなんではないかというイメージそのまま。それだけに、彼の余命が幾ばくもないことを知り、たった一度だけ食事の支度をしながら感情を爆発させて泣き崩れるシーンは一際印象に残りました。さて実は鴨志田氏に関して私は西原理恵子さんの漫画でしか知りません。『鳥頭紀行』などに良く登場しますが、かなり破天荒な人物だと言うイメージです。しかし原作でも本作でも案外普通。

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アルコール依存症の患者に普通というのもおかしな話かもしれませんが、彼が入院するアルコール病棟のほかの入院患者に比べたらまともに描かれています。劇中彼はベッド待ちの間、精神病院の精神病患者の病棟に入院し、後にアルコール病棟に移ります。私はここのパートが原作と比較して不満が残りました。簡単に言うと、家族ドラマを中心にしたせいで、原作ではかなり細かく描写されている病院内の出来事や、治療の段階が省かれてしまっているのです。アルコール依存症に陥る方は、同時に心の病に陥っている方が殆どだそう。それは先述した私の先輩もそうでした。それだけに、突拍子もない行動をとったり、やたらと怒りっぽくなったりする様子が病気の段階によるものであることをキッチリ説明するべきだと思うのです。そうでないとおかしな誤解を与えかねません。

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塚原がカレーが死ぬほど大好きで、しかしいつまでたってもおかゆばかりを食べさせられて苛立ちが募っていく様子は繰り返し詳しく描かれていてOK。しかし、病棟自治会の担務に関してはもっと詳しく描いて欲しかったところです。劇中では単に食事係とありますが、食事だけが唯一の楽しみである病棟におけるその担務の重要さや大変さ、単調な病院生活の中で他者も関わって動きのある場面は自治会関係だけなのですから。塚原役の浅野忠信ですが、刹那的かつ自暴自棄に酒を飲み、死ぬと解っていても止められない、しかし家族の、子供への深い愛情を心にたたえた鴨志田氏になり切っていました。原作の文面から私が感じた独特のイメージを見事に具現化してくれていたと思います。漫画での彼は最高に愉快かつバカで面白いのですが、さすがに誇張されていたでしょうから。(笑)

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退院間近になると「体験発表」という発表会があります。それは自分の今までの人生を客観的に他の入院患者の前で発表すると言うもの。それには当然アルコール依存症による過ちも含まれます。彼は戦場カメラマンとして、カンボジアやベトナムにも足を運んでいます。人間の尊厳を踏みにじる行為を自らの目で観てきた人です。彼の心に重くのしかかった想いは、依存症の原因の一端ではあったでしょう。しかし彼はそれが言い訳に過ぎないことも良く解っています。彼自身が、漫画家である妻の命である原稿を引きちぎったのですから。病気を克服したからこそ、本当の意味で自分のこれまでの行いを悔いる気持ち、痛いほどにそれが伝わってきました。海岸で子供たちとはしゃぐラストシーン、ポートレートのように映し出されるそのシーンに、西原理恵子さんの言葉「さいごに、ちゃんと帰ってきました。いい男でした。」が凝縮されていたように思います。

個人的おススメ度3.5
今日の一言:西原センセ、今回は患者役(笑)
総合評価:71点

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『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』予告編

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» 酔いがさめたら、うちに帰ろう。/浅野忠信、永作博美 [カノンな日々]
西原理恵子さんの原作が次々と映画化されるので混同しそうになりますが、こちらは西原さんの夫で戦場カメラマンの鴨志田穣さんが自身のアルコール依存症の経験を綴った自伝的小説 ... [続きを読む]

受信: 2010年12月 6日 (月) 23時04分

» 酔いがさめたら、うちに帰ろう。 [佐藤秀の徒然幻視録]
公式サイト。鴨志田穣原作、東陽一監督、浅野忠信、永作博美、市川実日子、利重剛、藤岡洋介、森くれあ、高田聖子、柊瑠美、甲本雅裕、渡辺真起子、堀部圭亮、西尾まり、大久保鷹 ... [続きを読む]

受信: 2010年12月 7日 (火) 20時19分

» 酔いがさめたら、うちに帰ろう。 [とりあえず、コメントです]
鴨志田穣著の自伝的な同名小説を映画化した作品です。 浅野忠信さんと永作博美さんの写った写真を見て、どんな作品になっているのだろうなあと期待していました。 アルコール依存症から立ち直ろうとする主人公と彼を取り巻く家族たちの姿に深く考えさせられました。 ... [続きを読む]

受信: 2010年12月 8日 (水) 22時11分

» 「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」よく頑張りました、うちに帰ろう [soramove]
「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」★★★☆ 浅野忠信、永作博美、市川実日子、利重剛、藤岡洋介、森くれあ出演 東陽一監督、118分 、2010年12月4日公開、 2010,日本,ビターズ・エンド (原作:原題:酔いがさめたら、うちに帰ろう。)                     →  ★映画のブログ★                      どんなブログが人気なのか知りたい← 「塚原安行(浅野忠信)はアルコール依存症と闘っていた、 人気漫画家の園田由紀(永作博美)と結婚し、 ふたりの... [続きを読む]

受信: 2010年12月 9日 (木) 07時24分

» 誇り高く生きよう〜『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 [真紅のthinkingdays]
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受信: 2010年12月10日 (金) 19時34分

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受信: 2010年12月17日 (金) 20時16分

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受信: 2010年12月18日 (土) 05時40分

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受信: 2011年5月22日 (日) 11時41分

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酔いがさめたら、うちに帰ろう。'10:日本◆監督:東陽一「風音」◆出演:浅野忠信、永作博美、市川実日子、利重剛、藤岡洋介◆STORY◆今度こそやめると誓いながら、今日も深酒を重ねる ... [続きを読む]

受信: 2011年6月 1日 (水) 11時55分

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酔いがさめたら、うちに帰ろう。 [DVD](2011/04/20)浅野忠信、永作博美 他商品詳細を見る<<ストーリー>>戦場カメラマンの安行と人気漫画家の由紀は結婚し子供にも恵まれたが、 安行のアルコール依存症が...... [続きを読む]

受信: 2011年6月 7日 (火) 00時37分

» 酔いがさめたら、うちに帰ろう [ぷち てん てん]
☆酔いがさめたら、うちに帰ろう☆(2010) 東陽一監督 浅野忠信 永作博美 藤岡洋介 森くれあ 高田聖子 〜〜〜〜〜〜〜 うん、良かった。 浅野さん、良い。 永作博美、良い。 子役の二人、いいねえ〜。 「おとしゃん」なんて呼ぶのが、もうかわいくてかわいくて ...... [続きを読む]

受信: 2011年6月 7日 (火) 21時56分

» 共依存というかケンカ両成敗というか・・・〜「酔いがさめたら、うちへ帰ろう」〜 [ペパーミントの魔術師]
まず。 この映画には原作があって、 どこまで描けたかはともかく実話であるということ。 アルコール依存症の夫と漫画家の妻、 一組の夫婦の物語をダンナのサイドから本人が描いたものが 「酔いがさめたら、うちへ帰ろう」で 奥さんの立場から涙も怒りもちっちゃな喜びも ...... [続きを読む]

受信: 2011年7月20日 (水) 16時11分

» 『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』 [cinema-days 映画な日々]
酔いがさめたら、うちに帰ろう。 元戦場カメラマンが、家族に支えられながら、 アルコール依存症を克服しようとする姿を描く。 【個人評価:★★☆ (2.5P)】 (自宅鑑賞) 原作:鴨志田穣 『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』... [続きを読む]

受信: 2011年12月11日 (日) 13時58分

» 映画評「酔いがさめたら、うちに帰ろう」 [プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]]
☆☆☆(6点/10点満点中) 2010年日本映画 監督・東陽一 ネタバレあり [続きを読む]

受信: 2011年12月31日 (土) 11時41分

» 酔いがさめたら家へかえろう(DVD) [パピ子と一緒にケ・セ・ラ・セラ]
「パーマネント野ばら」などの漫画家・西原理恵子の元夫で戦場カメラマンの鴨志田穣による自伝的小説を「風音」の東陽一監督が映画化。重度のアルコール依存症になった男と、彼を ... [続きを読む]

受信: 2012年1月28日 (土) 00時08分

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